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栄養価が高く風味豊かな全粒粉麺(関西編)

小麦の表皮、胚芽、胚乳すべてを丸ごと挽いて粉にした全粒粉は、胚乳だけを用いる通常の小麦粉に比べて栄養価が高く、食物繊維や鉄分なども多く含んでいます。他店との差別化を図るため、全粒粉麺を取り入れるラーメン店はここ数年増えており、独特の風味と食感を持つ全粒粉麺を使ったラーメンやつけ麺を提供する店は、全国的にも広がりを見せています。
昨年の東京での全粒粉麺特集に続き、今回は第2弾として大阪・京都で全粒粉麺を扱っているラーメン店を取材しました。
  • 山麺
  • 麺心 よし田
  • 高倉二条
  • フスマにかけろ 中崎壱丁 中崎商店會 1-6-18号ラーメン

銀座 太常うどん

2013年11月に大阪の地下鉄谷町線の天満橋駅近くにオープンした「山麺」は、ローストした全粒粉を配合した自家製麺「香味焙煎麺」をつけ麺用の麺に使用しています。全粒粉麺ならではの香ばしくもっちりとした食感が、濃厚なつけ汁とマッチする、絶妙な味わいが自慢です。オフィス街のサラリーマンはもとより、大阪の有名ラーメンブロガーからもオープン早々から注目されています。

山麺
住所:大阪府大阪市中央区釣鐘町1-1-1谷町秋田ビル1階
電話:06-6232-8843
営業時間:11:15~14:45/18:00~22:00
定休日:日曜・祝日

コシの強さと弾力の秘密は二段階の熟成

数年前までラーメン専門店がほとんど存在せず、ラーメン店不毛地帯と呼ばれていたビジネス街の天満橋界隈。しかし、ここ1~2年のあいだにラーメン専門店の新店ラッシュが続き、活況を呈しています。そんな中、ラーメン通の有名ブロガーから度々紹介され、地元のラーメン通からも熱い視線を浴びている「山麺」。

地下鉄谷町線天満橋駅から徒歩1分。白抜きの大きな屋号の文字が版画風に書かれたタペストリーが目印です。店内は、木目を基調とした明るい落ち着きのある空間になっており、昼どきはサラリーマンのランチ利用で賑わうオフィス街ならではの光景が見られます。

同店のこだわりといえば、香りと食感で主張してやまない、つけ麺用の自家製極太麺。店主の山形孝夫さんは、うどんにも使われるもっちりした食感が決め手の小麦粉に、香ばしくローストした全粒粉をブレンドして自家製麺を作っています。

「気温や湿度など季節に合わせて水の量や材料の配合を加減するなどして、その時期に合わせた安定した麺作りを目指しています。材料をミキシングした後、麺帯の状態で24時間、麺を切り出してから10℃に設定した専用の熟成庫でもう24時間、二段階の熟成をさせています。手間は掛かりますが、それを省かないことで、結果としてコシの強い、食感の良い麺ができあがります」(山形さん)

小麦の香ばしさをしっかり引き出した「香味焙煎麺」

定番人気の「九条葱うどん」
新作の「木の子バジルうどん」

飲食業界のコンサルタント歴もある店主が手掛けるラーメンは、「濃い鶏醤油らーめん」と「香味焙煎麺のつけ麺」の2種類。どちらも自家製麺ですが、全粒粉麺を使っているのは「香味焙煎麺のつけ麺」です。

「麺本来の美味しさを堪能できるのがつけ麺の魅力。極太麺のためゆで時間が長く、少々お待たせしてしまいますが、その分香味焙煎麺のもっちりとしたコシのある歯ごたえを楽しんでいただけると思います。」(山形さん)

注文してから待つこと8分。目の前に置かれた瞬間に、麺の中に練り込まれたロースト全粒粉が醸し出す香ばしい香りに食欲が刺激されます。分厚くカットされた炙りチャーシューと大きな海苔、すだち、そして大きめに刻まれた白ねぎがこんもりとトッピングされた麺と、鶏白湯ベースのとろみのある醤油味のつけ汁の組み合わせは店主・山形さんの渾身の力作。スープには化学調味料を一切使用せず、素材の旨みをしっかり引き出すことで深みのある味わいに仕上げていることも同店の特徴であり、魅力でもあります。

絶妙な食感の麺と濃厚ながらも自然素材のやさしい味わいのバランス感覚あふれる「香味焙煎麺のつけ麺」。ここ天満橋の新しい名物として、さらに多くの注目を集める存在になっていくでしょう。

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麺心 よし田

京都市左京区一乗寺・東大路通界隈に次ぐラーメン激戦区といわれる、京都市伏見区に2013年4月に誕生した「麺心 よし田」。多くのラーメン店が競合する中で、長野県産の石臼挽き全粒粉を小麦粉に練りこんだ独特の自家製麺を使った、日本蕎麦のようなつけ麺を提供しています。この麺が、地元の住民の心をとらえ、地元の名物ラーメン店として人気を集めています。

麺心 よし田
住所:京都府京都市伏見区西大手町313-1 1階
電話:075-888-5157
営業時間:11:30~23:00(ラストオーダー22:45)
定休日:不定休

日本蕎麦を思わせる石臼挽き全粒粉麺

京阪電車伏見桃山駅から大手筋商店街を西へ徒歩10分ほど歩いた竹田街道沿いにある「麺心 よし田」。住宅街でありながら、近くには、坂本龍馬が襲撃された寺田屋事件の舞台になった旅館・寺田屋や、月桂冠、黄桜といった酒造メーカーの酒蔵が並び、多くの観光客が訪れるところです。その中で、老若男女問わず美味しいラーメンを味わってもらえる店をと、かつて飲食業界で活躍していた店主の吉田也起さんが、2013年4月に満を持してオープンしました。

黒を基調とした落ち着いた内装に、扉をフルオープンにした開放的な出で立ち、そして割烹料理店の板前のように威勢の良いスタッフの掛け声が印象的な同店は、京都の銘柄鶏・京赤地鶏を使用した上品な味わいの鶏魚介スープとつけ麺用に作られる自家製の中細麺が特徴です。特に、長野県産の石臼で挽いた全粒粉を練り込んだ褐色の麺は、つるつるしたなめらかな食感とのどごしの良さがありながら、もっちりとした噛みごたえもあり、見た目も食感も日本蕎麦を彷彿させる独特のもの。

「店の雰囲気もメニューも和のテイストにこだわりました。つけ麺には太麺が定番という業界の常識をあえて打ち破って中細麺にすることで、蕎麦っぽさを演出しオリジナリティーを追求しました」(吉田さん)

1度に3つの変化が楽しめるさっぱりとしたつけ麺

同店の主力メニューは、自家製全粒粉麺を使ったバラエティー豊かなつけ麺。定番中の定番である「鶏魚介つけ麺」、辛旨スープがクセになる「辛味噌つけ麺」、昼・夜各限定20食の「濃厚海老つけ麺」、厚切りのチャーシューが5枚トッピングされた「豚バラつけ麺」の4種類に、季節の素材を使った限定つけ麺などが加わります。麺量180gの並盛り、250gの大盛りとも価格が変らないのも良心的です。

半割りにした煮玉子と刻み玉ねぎ、水菜、そしてすだちが添えられている定番の「鶏魚介つけ麺」がお店の看板メニューです。つけ汁の中には鶏チャーシューとメンマ。鶏ガラやサバ、カツオ、昆布などからとった醤油ベースのだしで、濃厚さの中に上品な旨みがしっかりと感じられます。

同店のつけ麺の面白さは、カウンター席に「つけ麺流儀」なる指南書が掲示されていること。まずは「普通に麺をスープにつけて食べる」、次に「麺に添えられた刻み玉ねぎをスープに加える」、そして「残りはすだちを麺に絞る」。食べている途中で食感や味を変化させて味わう楽しみがあらかじめ計算されており、「つけ麺流儀」によってその食べ方を上手く提案しているところがこのお店の大きな特徴にもなっています。最後は残ったつけ汁をポットのだしでスープ割りにし、最後の一滴まで堪能することができるようになっています。

「麺はゆでた後、蕎麦のように氷水でしめています。食べている間に麺が乾燥してパサパサにならないように、ほんの少し水分を残したしっとりした状態で提供し、最後まで美味しく食べてもらえるよう工夫しています」(吉田さん)

店主・吉田さんの全粒粉麺の特長を生かした創意工夫がつけ麺の世界を大きく広げ、新しいファンをこれからも増やしていくことでしょう。

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高倉二条

2006年のオープン以来、京都のラーメン界に新しい風を巻き起こし続けている「高倉二条」。修学旅行生や外国人観光客も並ぶという、言わずと知れた京都ではトップクラスの人気店です。全粒粉を使った日本蕎麦のような独自性の強い麺と、当時、関西ではまだまだ知名度の低かった豚骨魚介系スープのつけ麺をいち早く展開し、関西における先駆者となりました。

高倉二条
住所:京都府京都市中京区観音町64-1
電話:075-255-9575
営業時間:【平日】11:00~15:00(ラストオーダー14:50)/
18:00~22:00(ラストオーダー21:50)
【土・日・祝】11:00分~15:00分(ラストオーダー14:50)/ 18:00~21:00(ラストオーダー20:50)
定休日:無休(年末年始休み)

ラーメンの概念を覆す唯一無二の全粒粉麺

同店は、京都市営地下鉄丸太町駅と烏丸御池駅の中間、店名の由来でもある高倉通りと二条通が交差する場所に位置しています。人通りの多いとは言えない住宅街の一角にあり、提灯がなければラーメン店とはわからないような、ひっそりとした奥ゆかしい佇まい。これが週末ともなると、店の前に次から次へと訪れた人が列をなし、道行く人の驚きの視線を集めるのです。

同店のメニューは、大きくわけてラーメンとつけ麺の2種類。それぞれの麺の種類も2種類で、全粒粉麺かゆず麺のいずれかを選べるようになっていますが、この店のイチオシはなんといっても京都初の全粒粉を使った自家製中細ストレート麺。全粒粉配合率が約3割という、ビタミン・ミネラルが豊富な特製の全粒粉麺は、スープとよく絡み、ほのかな胚芽の風味が感じられる仕上がりです。

「今でこそ、全粒粉麺は珍しいものではなくなりましたが、開業当時は、茶褐色の日本蕎麦のような見た目と独特の風味とコシは、多くの京都人に衝撃を与えたようです。口コミで評判を聞き、遠方から来店する人も多かったと聞いています」と話すのは、大学時代のアルバイトを経て入社し、2年前から同店の店長を務める中嶋 亮さん。時代を先取りした新しいスタイルが多くの人に支持されたようです。

京都の名店として、不動の地位を確立

同店は開業当時より、「医食同源」をコンセプトに掲げ、化学調味料に頼らず日本古来のだし文化を生かしたラーメン作りをしています。豚骨をベースに煮干しや鰹といった魚介をブレンドし、15時間煮込んだスープはバランスがよく、自然の旨みの中にほのかな酸味も感じられます。中華麺には必要不可欠といわれるかんすいを使わず、全粒粉を配合することで独特のコシを生み出しました。

「店舗は、2人のスタッフで運営できるようシステム化されています。人件費を抑えた分、良質の素材を沢山使えるようになりました。無化調ラーメンは化学調味料の旨みに頼らない分、自然素材のだしがたくさん必要となりますから、いい素材をどれだけたくさん使えるか、それをどうラーメン作りに活かしていくかが大切なんです」(中嶋さん)

看板メニューである「味玉つけ麺」は白ねぎ、メンマ、しいたけ、煮玉子が添えられ、つけ汁にはブランド豚「三元豚」で作った角切りチャーシューが入っています。つけ汁の保温対策としてつけ汁の器に、フランス製の鋳物ホーロー製品・STAUB(ストウブ)の小さな鉄鍋を使用していることも特徴。卓上調味料には、胡椒、山椒、一味に加え、一風変わったガラムマサラも。各自の趣向にあわせて味を変化させて楽しむことができるようになっています。

「高倉二条」といえば、もつをトッピングしたラーメンが人気の「和醸良麺すがり」など、異なったコンセプトで展開する系列店が他にも2店舗あります。多店舗展開や通販事業の拡大に伴って、6年前から麺はすべて一括して、「工房まちや」と名付けられた京町家を改装した製麺専用工房で作るようになりました。店舗や関連施設に京都の町家を使うことでブランド力を高めるとともに、地域を支えるラーメン店として新たなまちの魅力づくりにも貢献しようとしています。

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フスマにかけろ 中崎壱丁 中崎商店會 1-6-18号ラーメン

長い屋号のため、地元では「フスカケ」という愛称で親しまれている「フスマにかけろ 中崎壱丁 中崎商店會 1-6-18号ラーメン」。大阪屈指のラーメン激戦区といわれる天満・中崎町界隈にあって、小麦フスマを配合したオリジナリティのある麺と魚のアラ干しと貝柱などを使った魚介系のスープで、独自路線を行く人気のラーメン店です。麺は微粒のフスマ入りの細麺と中太麺と、粗めのフスマ入りの細麺と中太麺の、合わせて4種類を提供しています。

フスマにかけろ 中崎壱丁 中崎商店會 1-6-18号ラーメン
住所:大阪府大阪市北区中崎1-6-18
電話:06-6371-3456
営業時間:11:30~14:30(土曜・日曜・祝日は15:00まで)/
18:45~23:00(金曜・土曜・祝日前日は24:00まで)
定休日:月曜

小麦粉を研究しつくして完成させた麺

大阪を代表するビッグネームのラーメン店がしのぎを削る天神橋筋六丁目にほど近い天五中崎通商店街に約3年前にオープンし、多くのラーメン通を足繁く通わせている同店。鮮やかな黄色の看板と店先に吊るされた青い干物用の干しカゴが道行く人の視線を集め、どこか懐かしさが漂うレトロな外観が存在感を放ちます。

「“おもしろい”ラーメンを提供することで、多くの人にラーメンを味わうことの楽しさを知ってもらいたい」という店主の実藤健太さんは、「フスマと共に生きる麺道師」を名乗り、麺に深いこだわりを持つラーメン職人です。多くの人気ラーメン店がオーダーメイドの麺を依頼していることでも知られる京都の老舗製麺会社「棣鄂(ていがく)」に、独自性のある麺の開発を依頼。小麦粉の種類やフスマの配合などを吟味し、麺の太さや形状にもこだわって、40~50回にも及ぶ試作を繰り返しました。その結果、他のラーメン店では味わえない食べ応えのあるインパクトのある麺を誕生させました。

「店の名前の一部にも掲げている“フスマ”とは小麦の外皮部分であり、食物繊維、鉄分、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅などの栄養成分が豊富に含んでいます。小麦粉を丸ごと挽いた全粒粉ではなく、このフスマのみを配合することで、ひと味違った特徴が生まれ、“どこにもないここだけの味”を楽しんでいただけるようになりました」(実藤さん)

どこにもないラーメンで独自路線を突っ走る

関西のグルメ番組でもしばしば取り上げられている同店のラーメン。なかでも、一番の看板商品といえば、店主がイタリアンで働いていた経験が生かされたという「中崎壱丁塩ら~めん」です。イタリアンのパスタのような洋風のテイストが魅力で、これを目当てに訪れる女性客も多いとか。

このラーメンの特徴は、スープに貝と鮮魚のアラ干しからとっただしが入っていること。塩水に浸した鯛などの鮮魚のアラを、扇風機にあてて乾燥させ旨みを凝縮させた後、火で炙ってさらに味わいを引き出してから、だしに加えるというこだわりようです。「こうすると鯛の甘みが余すことなく引き出され、あっさりとした中にも深いコクのある鶏清湯スープになります」(実藤さん)

粗めに挽いたフスマが入った加水率の高い中太麺は、パスタのリングイネを思わせるプリッとした弾むような独特の食感が特徴。風味付けのためにと、どんぶりの底に置いたミントの葉が、麺やスープを口に運ぶたびアクセントになって、鼻先に爽快な香りがほのかに立ちます。また、テーブルに備えてある「えび油」も好評。スープに加えると、味がさらに変化に富んだものにしてくれます。そして、ハーブ塩をすり込んで真空低温調理で作るしっとりジューシーでとろけるような口当たりの豚と鶏の2種類のレアチャーシューと殻付きのアサリ、メンマ、貝割れ大根などの具だくさんのトッピングが名脇役として彩りを添えつつ、味にも深みを引き出しています。

チャレンジ精神旺盛なラーメン職人が作り上げた、さまざまな“おもしろい”要素が混然一体となって食べる人の五感を刺激する“進化系ラーメン”。この一杯が、多くのラーメンファンの心をつかんで離さないのも納得です。

「どこにもないオンリーワンの味を」「ラーメンを食べることの楽しさも一緒に提供したい」。そんな店主らの想いが、存在感のある全粒粉麺やフスマ入り麺を誕生させました。さらに、麺のインパクトに負けないようスープや食べ方に創意工夫を凝らすことで、結果として独創的なラーメンを生み出すことにつながっていったようです。ここでしか食べられない味という話題性とプレミア感が口コミ効果を高め、遠方からの集客も可能にしているのではないでしょうか。高いポテンシャルを秘めた全粒粉麺を使用したラーメンやつけ麺をメニューに加えることで、さらなる集客力アップを図ってみてはいかがでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2014年12月)のものです

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