トレンドレポート トレンドレポート

ラーメン以外にも絶品メニューを提供するお店

日本の国民食といっても過言ではない「ラーメン」。訪日観光客の多くもその味を求め、日本で人気のラーメン店を訪れています。最近では「ラーメン」のみを提供するスタイルではなく、ラーメンに加えて絶品のご飯ものメニューを提供するお店も増えています。なぜ、ラーメン以外のメニューにも注力しているのか? また、そのスタイルに辿り着くまでの苦労や工夫をお聞きしました。

らーめん 茂治

若者に人気の東京・神宮前、スポーツのメッカである国立競技場近くに店を構える「らーめん 茂治」。長年、焼き鳥屋を経営してきた店主が作る濃厚な鶏白湯ラーメンや、炭火焼の鶏肉を使った親子丼など、“鶏”にこだわった豊富なメニューを提供しています。

らーめん 茂治

住所
東京都渋谷区神宮前3丁目35-2クローチェ神宮前 1F
電話
03-6812-9894
営業時間
11:30〜21:00
定休日
不定休
東京・神宮前に店を構える「らーめん 茂治」

日々進化を遂げる鶏白湯ラーメン

一番人気の「特選鶏白湯らーめん」(税込1,500円)
店主の篠田茂治さん

スタイリッシュな店が立ち並ぶ神宮前に佇む「らーめん 茂治」では、濃厚な鶏白湯ラーメンに加えて、親子丼やチキン南蛮なども提供しています。店主は篠田茂治さん。以前は麻布十番で焼き鳥屋を営んでいましたが、昨年新たにラーメン店としてスタートを切りました。

「以前の焼き鳥屋でも、余った鶏のスープで賄いとしてラーメンを作って食べるようになり、その後はコースでも鶏白湯のラーメンを提供していました。そのラーメンが好評だったこともあり、ラーメンをメインとした店の開業に至りました。」

新たな店を開くにあたっては、焼き鳥屋時代に提供していたラーメンのノウハウも活かしつつ、新たにラーメンを勉強し直したと言います。

「以前から秋田にある鶏肉加工工場で、大窯を使った鶏のスープを私が作っていました。もちろんそのレシピ自体はありましたが、いざラーメン店を開くとなると、そのレシピのまま、普通の寸胴で再現しようとしてもなかなか上手くいきませんでした。食べ歩いて勉強もしたし、スープ作りは何度も試行錯誤しました。オープン後も日々改良を続けているので、オープン当初とはかなり違うスープになっていると思います」

研究を重ねたスープに合うよう、麺にもこだわっています。

「麺も自家製で作っています。季節や温度によっても調整が必要な点が難しいですね。こちらも日々試行錯誤を重ねて、開店当初からは小麦粉の配合も変えています。今は歯応えを一番大事にしていて、全粒粉と3種類の小麦粉を配合。もちろん、この先も改良を重ねていくつもりです」

日々、進化を続ける茂治のラーメン。一番人気は「鶏白湯らーめん」です。歯応えのある中太麺が、濃厚な鶏白湯のスープによく絡みます。仕込みに6時間以上かけているというトッピングの鶏胸肉のチャーシューも衝撃的な柔らかさです。

全粒粉入りの自家製中太麺
深い味わいの「鶏淡麗醤油らーめん」(税込1,100円)

鶏を知りつくした店主が作る、逸品ぞろいのご飯もの

濃厚な「親子丼 上」(税込1,350円)

茂治ではラーメンに加えて、親子丼やチキン南蛮定食なども提供しています。

「もともと、鶏専門の店を経営していたので、ラーメンだけでなく親子丼などのご飯ものもあったらいいなと考えていました。たとえば、グループで来たお客様の場合、ご飯ものかラーメンか、食べたいものが分かれてもおかしくありません。そういったお客様にも喜んで欲しいと思ったのがきっかけです」

長年、鶏を専門に扱ってきた篠田さんだからこそ、ご飯ものも逸品ぞろい。「親子丼」は鶏肉の皮目を炭火で焼くことで香りが非常に強く、ふわっと半熟加減を残した卵と絶妙なハーモニーを奏でています。また、「チキン南蛮定食」はサクッと揚がった肉厚の鶏肉に甘酸っぱい南蛮だれと自家製タルタルソースがたっぷりかかっていて、白米との相性も抜群です。

「季節や天候、時間帯によって、ご飯ものが人気かと思えばラーメンの注文が続いたりと、当店は注文割合が全く読めません。ラーメンとご飯もの、両方が食べたいと一緒に頼むお客様も結構いらっしゃいます。今後はハーフセットの導入も検討しています」

ラーメンとご飯もの、どちらも人気
タルタルたっぷり「チキン南蛮定食」(税込1,200円)
和を基調とした綺麗な店内

和を基調とした看板や内装は入りやすさを重視。また、ラーメン店では珍しくソフトクリームも取り扱うなど、料理以外の部分でもさまざまな工夫があります。

「入りやすい外観に加えて、神宮前という場所柄もあってか、たまにカフェと間違えて入って来られるお客様もいます。ランチ後にソフトクリームだけ買って会社へ帰りながら食べる方も結構いますね。日々の試行錯誤の中でいいなと思ったメニューを加えながら、この街で愛されるお店になりたいと思います」

ワタリガラス

ラーメンだけでなく、店内で握る寿司を提供する「ワタリガラス」。店内で削った鰹節が効いたラーメンや、豊洲市場から仕入れた新鮮なネタを使った寿司の組み合わせが好評で、昨夏にオープンしたばかりですが地元住民を中心に着実に支持を集めています。

ワタリガラス

住所
東京都世田谷区南烏山4-25-9
電話
050-1126-1562
営業時間
11:30〜15:00/18:00〜21:00(日・月・火)
11:30〜15:00/18:00〜22:00(金・土)
定休日
火曜午後と水曜日(終日)
京王線千歳烏山駅から徒歩7分にある「ワタリガラス」

ラーメン×寿司 世界に誇る日本グルメを一度に楽しめる店

天ぷらがのった「特選節そば(塩)」(税込1,300円)
店主の佐藤龍汰さんと奥様の礼真さん

千歳烏山駅近くの住宅地に店を構える「ワタリガラス」は、ラーメンだけでなく、店主やその奥様が握る新鮮な寿司も堪能できるお店です。

「私はここ(千歳烏山)が地元で、今のワタリガラスの前にあった店をよく利用していました。その店が閉店すると聞いて“何かできないかな?”と思ったのがきっかけです。父の知り合いにラーメンのスペシャリストがいて、妻の実家がお寿司屋さんだったので、この2つを掛け合わせてみたら面白いんじゃないかと、妻と一緒に住み込みで寿司の握り方を学んだり、ラーメン作りを学んだりして、この店を立ち上げました」

開店の経緯を話してくれたのは店主の佐藤龍汰さん。千歳烏山の店であること、ラーメンを学んだ師匠が「鳥」の名前がついた店を出していたこと、お客様にゆっくり食事を楽しんで欲しいという願いを込め、飛び方が大きくゆっくりとした「渡鴉」から店名を採用したと言います。

ラーメンと寿司の両方を提供するという日本でも珍しいスタイルでお客様を喜ばせるために、メニュー開発にも工夫を凝らしています。

「ラーメンと寿司の食べ合わせにはかなり気を使いました。最初は煮干し系のスープを考えていましたが寿司との相性が合わず、サッパリ系の鰹節ベースのスープにしました。北海道産小麦粉100%を使用した中太麺は食感もよく、淡麗系のスープとも相性抜群です。寿司のネタは豊洲市場から仕入れていて、時間があるときは自分でも豊洲に足を運んでいます」

ワタリガラスで人気なのが「節そば(塩)」です。パツパツとした食感の中太麺に鰹節の香りが広がるあっさりとしたスープがよく合います。「特選」にはラーメンでは珍しい魚の天ぷらがトッピング。衣がスープに浸ることで、サクサクからしっとりへと食感が変化していく過程も楽しめます。

北海道産小麦粉100%を使用した中太麺
期間限定の「ワタリガラス式タンタンメン」(税込1,700円)

鰹節にこだわった節そばと新鮮&厳選の握り

特選節そば(税込1,300円)+2貫セット(税込450円)

看板メニューの「節そば」を注文すると、お客様の前でラーメンに鰹節をかけるサービスも特徴的な取り組みです。

「鰹節は店内で削っています。鰹節はうまく扱わないと“えぐみ”が出てしまいますが、提供直前にかけることで“えぐみ”を抑えられます。また、特注の機械で0.01ミリという極限の薄さで削っているため、スープに入った瞬間に鰹の風味が広がり、飲み切るまで“えぐみ”は出ません」

もう1つの目玉は、やはり握り。節そばとの「セット」では2貫、単品の「本日の握り5貫」も提供しています。さらに、毎回違った日本酒を仕入れていて、握りと日本酒の組み合わせでも食事を堪能できます。

「最初に日本酒と一緒に寿司をつまんで、締めにラーメンを食べる方もいます。セットの2貫ではマグロや鯛、カンパチなど多くの人が食べられるようなネタを提供していますが、『握り5貫』用にネタはいつも5種類以上用意していますし、宴会の予約が入った時などは種類を増やす事も可能です」

本日の握り5貫(税込1,200円)
削りたて鰹節と味わい「節めし真っ赤卵(小)」(税込200円)

こうした気遣いはネタ選びだけではありません。ワタリガラスでは子連れのお客様もゆっくりと食事を楽しめるように配慮しています。

「子連れのお父さんお母さんにもゆっくりご飯を食べて欲しいという思いから、2階にはキッズスペースを作りました。お陰様で、土日はお子さん連れのお客様が大勢いらっしゃいますね」

昨年の夏にオープンしたばかりのワタリガラスですが佐藤さんの夢は膨らんでいます。

「まずは地域に根付いていきたい。ただ、ラーメンお寿司という組み合わせは日本人だけでなく海外の方にも食べてもらいたいので、いずれは都心に出店したり、いつになるかはわからないですが海外進出もできたりしたらいいなと考えています」

子連れ客に嬉しい2階のキッズスペース
黒を基調とした店内

らーめん 鴨to葱

JR御徒町駅からすぐに店を構える「らーめん 鴨to葱」。こだわりの鴨を使った「鴨らーめん」や、とろとろ食感の「飲める親子丼」で、海外からの観光客も含め、幅広い支持を集めて行列が絶えません。今では都内に3店舗、大阪に1店舗、海外展開も見据える人気店です。

らーめん 鴨to葱

住所
東京都台東区上野6丁目4-15
電話
03-6803-2334
営業時間
24時間営業
定休日
不定休
JR御徒町駅から徒歩1分に構える「らーめん 鴨to葱 御徒町本店」

鴨そばから着想を得た唯一無二の鴨らーめん

細麺で味わう「鴨らーめん 特上」(税込1,580円)※特上のトッピングは左からメンマ、鴨コンフィ、煮卵、鴨肉ワンタン)
店長の天土真康さん

「らーめん鴨to葱」は御徒町に本店を構え、鴨“そば”ではなく鴨“らーめん”を提供しています。看板商品の「鴨らーめん」だけでなく、サイドメニューの「飲める親子丼」も非常に人気です。

「蕎麦屋ではおなじみの『鴨そば』をヒントに、当時は珍しかった鴨のラーメンを作ってみたらどうなるのか? というところから始めました。鴨と葱は相性が良く、それをラーメンでもそのまま使ってみたら相性が良かったことから、店名でもそのまま打ち出しました」

お店立ち上げの経緯を振り返るのは店長の天土真康さんです。鴨は岩手県・埼玉県・京都府などの産地から、一番いい時期に厳選して獲れた合鴨を使用。鴨だしに使うのは「鴨・水・葱」のみです。

「無添加でスープを作りたくて試行錯誤してみたところ、意外とスッキリとした鴨だしが出来上がりました。ラーメンと鴨の相性も非常に良いと感じました」

鴨といえば、鶏肉に比べて味が濃厚で、「不飽和脂肪酸」が豊富に含まる鴨脂も特徴のひとつ。この鴨独特の脂に合わせて、麺にもこだわりがあります。

「中太麺や太麺だと鴨の脂が絡みすぎてしまってしつこく感じるので、『鴨らーめん』では全粒粉を混ぜたオリジナルの細麺を使っています。全粒粉が入ることで風味や食感もよくなる上に、脂の香りの余韻が綺麗に残ります」

丁寧に仕込んだ鴨の胸肉を使った鴨コンフィ(通常のラーメン店でいうチャーシューにあたるトッピング)や、鴨らーめんを注文すると無料で3種類の葱から2つを選べる「今月の葱」も人気の要因です。「今月の葱」は、現在は「国産丸太白葱」以外の2つを毎月変えていて、常連客の方でも毎回違った組み合わせで楽しめるように工夫をしています。

全粒粉入りのオリジナルの「細麺」
注文時に選べる「今月の葱」 ※現在は1番(国産丸太白葱)だけ固定で他は月毎に変更

フードロス対策にもつながる絶品の“飲める親子丼”

鴨肉で味わう「飲める親子丼」(税込420円)

鴨to葱には、3人に1人が注文する大人気のサイドメニュー「飲める親子丼」があります。メニュー開発では、食材の無駄を減らしたいという想いがきっかけだったと天土さんは語ります。

「ラーメンやチャーシューを作る上で鴨のガラや胸肉を使うのですが、余ってしまうモモの部分や半端な部分の肉を再利用したかった。そこで試しに親子丼を作ってみたら非常に美味しかったので提供するようになりました。ラーメンとの相性もよく、火入れがわずか10秒の“飲める”という打ち出し方のインパクトもあってか、ご好評いただいています」

中太麺で味わう「鴨汁つけそば 特上」(税込1,600円)

他にはない発想でメニューを生み出す鴨to葱には、国内だけでなく海外からもたくさんのお客様を集めています。天土さんはお店の客層についてこう分析します。

「2年前に台湾からの取材を受けて以降、海外からのお客様も非常に増えています。最近は女性のお客様も増えていて、男女比は7:3ぐらいです」

海外のお客様が増えたこともあり、昨年の店舗の移転の際には、接客や内装にもさらに工夫を凝らしたと言います。

「畳のテーブルや風鈴など、内装は日本の和の雰囲気を基調にしています。ホールスタッフも多少は英語や中国語などで対応できるようするなど、お客様に喜んで食べていただくことを大切にしています」

国内外から多くの支持を集める鴨to葱ですが、より多くのお客様にその味を届けるためにさらなる店舗展開も見据えています。

「ありがたいことに、国内での出店計画だけでなく、海外での出店の話をいただいています。日本の食文化でもある『鴨』の味わいをもっと多くの人に味わっていただきたいですね」

畳のカウンターテーブル
風鈴など、和を意識した内装

今回取材した3店では、客層を広げるため、さらにはフードロス対策やこれまで培ってきた経験・ノウハウを活かすため、お寿司や親子丼、チキン南蛮など、ラーメン以外にも様々なメニューを提供していました。しかし、3店は共通して、どのメニューも一切妥協はしていません。ラーメン店といえば回転率も重要な要素ですが、ラーメン以外も提供することで、お客様がゆったりと過ごせる時間や日本の食文化を一度に複数楽しめるエンターテイメント性など、新たな価値を提供することも可能です。日本の固定ファンをつかむためにも、外国人観光客の客層を広げる意味でも、今後ますます重要になる視点かもしれません。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2025年02月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。