
「ブレッディオ」がオープンしたのは2012年2月。おかげさまで丸4年を迎えようとしています。でも、もともと主婦だった私がパン屋を開き、続けられているのは、周囲の応援や協力があってこそだと思っています。
私は、料理にうるさい父の下、外食によく連れて行ってもらい、料理上手な母の味に親しんできました。子どもの頃から美味しいものに恵まれてきたせいか舌はこえ、料理の腕も磨かれていたようで、結婚後、自宅に友人を招いて料理を振る舞えばつくり方を聞かれるようになり、そのうち周囲から料理教室を開いてほしいと要望があがってくるほどに。そこで私は大手パン教室の門戸を叩きました。そこの生徒になってレベルを上げれば、自分の教室をもてるためです。そして私はそこに所属しながら、料理教室とパン教室をオープン。でも、決まった材料を使わなければならないなど何かとしばりがきつく、もっと美味しくできると思うのにできない歯がゆさを感じるようになってきました。
なかでもパンをつくるおもしろさに目覚めた私は、教室はクローズして本気で修業を開始。はじめは小学生と中学生の子育て中だったため、平日の早朝は家を空けられず、日中にパン屋のレジのアルバイトもしました。それでもシェフの作業を見て技術を覚えようと真剣でしたね。その他にも専門学校のアシスタントや週末は好きなパン屋で早朝から成型したり、リーガロイヤルホテルの製パン部門で働いたり、3~4軒ほどバイトを掛け持ち。いつか自分のパン屋を開こうとがむしゃらに働く私の姿に、ようやく主人も本気だと理解し、家族で応援してくれるようになりました。開業までのことをブログで綴っていたら、全国から励ましの声もいただけました。そんな4~5年の修業の末オープンにこぎつけると、遠方からわざわざ訪ねてくださる方も。本当にみなさんの応援が心に沁みましたね。
お子様からご年配の方まで安心して召し上がってほしいと、パンに包むクリームやパンに使用する惣菜などフィリングはすべて手づくりしています。素材にもこだわり、保存料や安定剤、生地改良剤、イーストフードなど、自分がよく理解していない人工的なものは使いません。健康を考え、マーガリンやトランス脂肪酸も不使用です。
一方、主婦をしているだけに、価格とのバランスも重視。ハムやベーコンまでこだわるとコストが上がってしまうため、選りすぐった市販のものを取り入れ、購入しやすい価格帯に抑えています。また、天候などを考慮して毎日つくる量を1個単位で調整。細かいと思われるかもしれませんが、捨てるなんて主婦感覚としては許せないところ。それに、かわいがって育てたパンを廃棄するのは心痛いものですから。冷凍生地は使っておらずつくり置きできないので日々の計算が面倒ですが、毎日焼き立てのパンをお届けするために頑張っています。お店の規模は大きくないので、種類は無理のない範囲に。月替わりのパンや惣菜の中身を変えるなど、季節に応じて変化する飽きがこない品揃えにしています。
家事はまだまだ女性主体の仕事なので、私も家事と仕事の両立で大変だと感じることがあります。ただ、この店の開店時間は10時とパン屋にしては遅め。お客様にはご不便をかけてしまうかもしれませんが、無理なく続けられるようにしています。
そのほかは女性ならではの苦労を感じません。むしろ女性らしさを強みにしたいですね。例えば、サンドイッチの具やパンに使用する惣菜などにも、ひと手間かけるのが私流。男性シェフの場合、野菜をカットしてパンにのせてソースをかけるだけといったシンプルなスタイルを好む傾向があるように感じます。もちろん、そんなパンもおいしいですが、私は野菜を煮て味をつけてからパンにのせるなど、調理したものを使っています。手間ですが食感や味が変わり、私らしい味わいになるからです。料理は好きですしね。
また、当店で働くスタッフは女性ばかり。そのため、多くを語らずとも自分と同じ感覚で仕上げてくれ、お店も清潔にしてくれるので助かります。以前、私が入院し、その間はお店を休むしかないと考えていたときは、スタッフが自主的に集まり、私がいなくてもできる範囲のパンを売ることでお店を続けてくれたことがありました。いつか自分のお店を持ちたいと頑張ってくれているスタッフなので、オーナーと同じ目線で働いてくれる、とてもいいスタッフたちに恵まれたと感じています。
店名の「Breadio」とは、“Bread”と“Studio”を組み合わせた造語です。ただパンを提供し、販売するお店という一方通行ではなく、お客様とのコミュニケーションから刺激を受けて新しいパンが生まれてくる工房のようにしたいと願いを込めました。今後もお客様とのつながりを大切に育てていければと考えています。
また、好みは多少異なるものの、人が美味しいと思うゾーンみたいなものはあるように感じます。私は美味しいものを食べるのが大好きで、食べたものを再現するのが得意。そのゾーンを追求するべく、これからもどんどん美味しいものを食べて、自分の味に磨きをかけていけたらと思います。
現在、興味があるのは天然酵母です。レーズン酵母や酒粕酵母など手作り酵母に挑戦しています。自分で起こした種はまだ安定していないので、お店に出すまで時間がかかりそうですが、いつか技術を身につけて安定した味を出せるようになりたいですね。種から起こした手作りの天然酵母で、私らしい味わいのパンを増やしていくのが今後の目標です。
おいしいものは人を幸せにしてくれると思います。私がつくったもので、そんな幸せを多くの方に感じていただければシェフ冥利というもの。これからも新しいことにチャレンジしながら、“おいしい”を追求していきたいと思います。
発酵バターのクロワッサン 190円(税込)
クロワッサンはやっぱりバターが大事。贅沢に発酵バターを折り込んでいるので、風味豊かな味わいを楽しめる正統派クロワッサンに仕上がっています。家に帰ってから食べる時は、温めておいたオーブントースターに1分ほど、ちょこっと焼きするのがおすすめ。香りがより立ってきて、中はしっとりしたままサクサク感が際立ちます。そしてもっとサクサク好きの方なら、さらに1分温めてみてください。サクサク度合が高まり、焼き立てに近い食感になります。私は朝食によく食べています。手のひらサイズなので、いくつも買っていかれる方も多い、当店でも人気の高いパンです。
ライ麦のカンパーニュ 440円(税込)
ライ麦パンといえば一般的にサワー種を使ってつくりますが、このカンパーニュにはあえて使わず酸味をなくしています。そのため食感もソフトでクセがなく、子どもでも食べやすいカンパーニュです。でも、前日からじっくり熟成させているのでライ麦の風味はたっぷり! 噛みしめるほどに豊かな粉の風味を堪能できるので、トーストするだけで何もつけなくてもおいしくいただけます。サンドイッチ用のパンに用いるのもおすすめです。チーズとの相性がよく、私はゴルゴンゾーラチーズを塗って、ハチミツをかけて食べる組み合わせが一番大好き。一般的なカンパーニュに比べてクセがない分、料理を選ばず食事にあわせやすい便利なパンでもあります。
角切りベーコンと2種のチーズのライ麦パン
1本1040円(税込) ハーフサイズ 520円(税込)
伝統的な製法である乾塩漬法でつくられた熟成乾塩ベーコンを角切りし、ゴロゴロとライ麦パンに混ぜ込みました。肉の旨みが凝縮されたベーコンなので、深みのある上質な味わいを楽しめ、ちょっと贅沢な気分にさせてくれます。ナチュラルチーズとチェダーチーズの2種類のチーズを混ぜ込んでいるので、食べ進めるほどに奥行きのある風味が広がります。ブラックペッパーをきかせているため、ワインにはもちろん、ビールとも相性のいいパンです。トーストしなおして、チーズがトロッとしてきたところをいただくのがおすすめ。どっしりと食べごたえのあるパンなので、お腹が空いたという気分のときに食べたくなります。
店名/手作りパン Breadio
郵便番号/〒592-8346
所在地/大阪府堺市西区浜寺公園町2-204
最寄駅/南海本線「浜寺公園駅」・阪堺電車「浜寺駅前駅」
アクセス/南海本線「浜寺公園駅」西出口より徒歩約1分。阪堺電車「浜寺駅前駅」よりすぐ。
電話番号/072-263-2201
営業時間/10:00~18:00
定休日/日曜・月曜
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2016年1月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。



