店のロゴ、外観、椅子や什器、そして麺の色まで“緑”で統一された「麺屋 六感堂」。メディアに取り上げられることも多く、池袋駅から徒歩15分ほどかかる立地にも関わらず、毎日のように行列が絶えない人気店です。
「今の時代、美味しいだけじゃお客様には刺さらない。そこでどうすればインパクトを出せるか、女性に支持されるかを考え、辿り着いたのがカフェのようなラーメン店、というコンセプトでした」
さまざまな飲食店を経験した渡邊直樹さんが、「麺屋 六感堂」をオープンしたのが2014年4月のこと。その際、流行のカフェは緑色でカラーコーディネイトされていると考え、緑で統一した店舗設計を考案。ならば、その緑カラーにも合うよう、健康にこだわったメニューづくりをしようと開発したのが、藻の一種で59種類の栄養素が含まれる「ユーグレナ(みどりむし)」をブレンドした「自家製グリーン麺」でした。
「当時、ユーグレナは他店ではまだほとんど見かけない素材でしたし、あったとしてもスープに入れるお店だけ。麺に練り込んだ店はどこにもなかったので、1番になってみようと思って始めました」
当初は麺の色が緑色ということで拒否反応を示す人もいたと振り返る渡邊さん。毎回、麺の特徴について説明をしなければならないなど、苦労もあったといいます。しかし、時代が後から追いかけてきました。
「店がオープンしたあとに、ユーグレナのヨーグルトが出たり、飴が出たり、クッキーが発売されたりしたんです。そういったものがメディアでも特集されるようになり、『あれ、見たことがあるぞ』と受け入れてもらえるようになりました」
ビタミン、ミネラル、DHAなどを豊富に含むユーグレナ配合の自家製グリーン麺。さらに、無化調・無添加で動物系食材を使わず、昆布や煮干しでとった和風出汁。麺もスープも美味しいだけでなく体にいい、という評判から、狙い通り女性客の支持を集めた「麺屋 六感堂」。そのことが、更なるお店のこだわりへと結びついていきます。
「女性のお客様はどうしても食べるスピードがゆっくりです。そんな女性客にも最後まで麺を美味しく食べてもらいたいと思い、通常の麺には卵白を加えて茹で伸びを抑え、グリーン麺には中力粉を少し加えることでモチッとした食感が楽しめる工夫を施すなど、更なる改良につなげていきました」
人気No.1メニューは「しおゆずみつばグリーン麺」。澄んだスープに、麺の緑と三つ葉の緑が映える一品です。ほかにも、ミョウガやパクチーなど、一般的なラーメン店ではあまり見かけないトッピンッグメニューが人気だといいます。
「スープは和風の出汁をつくる感覚で調理していますので、三つ葉やミョウガといった日本らしい食材が合うかなとメニューに加えました。ラーメン店らしくない珍しさも手伝って好評いただいています。また、パクチーは女性受けがいいかなと始めたところ、味付け玉子の次に人気のトッピングになりました。よそでやっていないことをやりたくなるのは、つくり手が楽しまないと食べ手も美味しく感じない、と考えるからです。これからも既存の概念にとらわれず、新しい発想でメニューを生み出していきたいですね」
濃厚つけ麺が人気の「麺処 井の庄」を経て、「濃菜麺井の庄」では店長も務めた人物が東京・南阿佐ヶ谷にオープンしたのが「麺処 一笑」です。本格豚骨スープに加えて、野菜もたっぷり食べられるスタイルが話題を集めています。
「麺処 一笑」の注文方法は、まずは麺を選び、つぎに8種類の無料野菜トッピングからひとつをチョイスする、というスタイルです。店主・金子哲也さんは、豚骨タンメンで人気の「濃菜麺井の庄」で店長を務めていた人物。そこでの経験が一笑のメニューづくりにも生かされたといいます。
「『濃菜麺井の庄』は、豚骨スープの中に野菜を入れて一緒に煮込み、タンメンとして麺の上にのせて食べていただくスタイルでした。ただ、野菜と一緒に煮込むことで、野菜の水分が溶け出し、せっかく丹精込めてつくった豚骨スープそのものの味をお客様に味わっていただけているのかな?というジレンマがありました。でも、一方では野菜もしっかり摂りたいという需要もあります。そこで、本来のスープそのものの味を召し上がっていただくため、野菜を別盛りにするスタイルを考案しました」
じっくり味わって欲しいという豚骨スープは6年間の研究の末に辿り着いた味。魚介類は一切使用せず、豚の旨味と香りだけを最大限に引き出すことに注力しています。
「火入れ時間や熟成時間を間違えると絶妙な香りや旨味が死んでしまいます。骨の砕き方、部位ごとに煮込む寸胴を使い分けるといった工夫を重ねていますので、臭みがないスープだ、といった声をいただけると本当に嬉しいですね」
こだわりの豚骨スープとともに、「麺処 一笑」のオリジナリティのひとつになっているのがキャベツ、もやし、ニラ、にんじんの4種類をたっぷり盛った“選べる野菜トッピング”です。
シンプルな「プレーン」。野菜の上にニンニク醤油と背脂をのせた「スタベジ」。特製ラー油と焦がしニンニクを効かせた「カラベジ」。山椒の刺激と生ニラのアクセントが楽しい「シビベジ」。野菜の上に数種類のハーブを効かせたトマトペーストがのる「トマベジ」。レモングラスの酸味を効かせた「すっぱベジ」。魚介の旨味を凝縮させたペーストがのった「ウオベジ」。濃い目につくったスタベジにブラックペッパーを効かせた「ブラベジ」の8種類。いずれも、1日に必要とされる野菜(350g)の約半分を摂取することができます。
「8種類あるということで『じゃあ次はこれ食べよう』とか、友達同士やカップルのお客様が『一口食べさせて』といった具合に、楽しんでいただくキッカケになっているのかなと感じます」
また、野菜を後からスープに加えるスタイルだからこそ、まずはじめは濃厚スープの味をダイレクトに楽しめ、その後、スープと野菜をよくかき混ぜることでまた違った味わいのスープを堪能することができます。野菜をさらに食べたい場合は+100円で「追っかけ野菜」が注文可能。最初は「プレーン」を味わい、追っかけ野菜で「トマペジ」を頼んで更なる味の変化を楽しむなど、アレンジは自由自在です。
「多くのお客様に喜んでいただきたい、というのが根本にあります。店のオススメはこれ、と押し付けるのではなく、いろいろな味を楽しんでいただく。そのためにも、様々なニーズを受け止めることができる本当に美味しいスープをこれからもつくり続けていきたいと思います」
薬膳コーディネーターの店主がプロデュースしたオリジナルの中華麺「ファイトカラーメン」。その独創性でメディアにも取り上げられることが多いのが、アンチエイジングレストランを標榜する「薬膳ラーメンドラゴン」です。
「実は私、今よりも30キロ太っていたことがありました。これはマズイ! 食生活の改善でなんとかしてみようと薬膳を学んで取り入れたところ、1年で30キロ痩せて今のスタイルになったんです」
もともと、中華料理店を営んでいたという店主の島田正之さん。飲食店経営のノウハウは生かしつつ、自身が体感した薬膳の効果をより多くの人に知ってもらうためには間口の広いラーメンだ、と2015年2月に「薬膳ラーメンドラゴン」を開業しました。
「まず、興味を持ってもらうのが一番大事だと思い、見た目にもインパクトのある4色の麺『ファイトカラーメン』を開発しました。赤は唐辛子、黄色はウコン、緑はホウレン草、紫色は紫芋。これらをそれぞれ麺に練り込み、4種類の麺をブレンドして1玉にしてご提供しています。4つの色素にはそれぞれ、赤:カプサイシン、黄:クルクミン、緑:クロロフィル、紫:アントシアニンの栄養が詰まっていて『ファイトカラー』と呼ばれています。このファイトカラーを身体に取り入れるとアンチエイジング効果が高まると言われているのも、4色の麺にした理由のひとつです」
健康への配慮は麺だけでなく、スープにも満載。豚骨、鶏ガラ、ラードなどの動物系は一切使わず、干した野菜から出汁をとったスープはカロリーが低く、また生薬も加えていることでポカポカと体が温まり、代謝を良くする効果もあります。
個性的な4色の麺とこだわりのスープで提供する「ファイトカラーメン」の味は3種類。有機醤油味の「プラチナドラゴン」。オリジナル豆乳味の「ホワイトドラゴン」。そして、ガーリック×イカスミ味の「ブラックドラゴン」です。
「1日に5色の色を摂るとアンチエイジング効果が高まると科学的に言われています。当店の場合、麺で4色ありますので、具材やスープの色味で5色以上の色を一度に摂取することができます」
具材でも、ただ野菜を多くすればいい、という考えではなく、現代人に不足しがちな8つの食材を一杯のラーメンで食べられるように計算されています。
「キーワードは、『孫(まご)はやさしい子(こ)』。まめ・ごま・わかめ・やさい・さかな・しいたけ・いも・酵素の頭文字です。どのラーメンを食べてもこれらをバランス良く摂取できるよう考えてつくっています。実際、当店で食べ慣れてしまうと他店のラーメンは油っぽくて食べられない、といった声をいただくことは多いですね」
ほかにも、生薬とオリーブオイルを使用した「薬膳入り餃子」や野菜だけでつくる「ヴィーガン餃子」、「薬膳キッシュ」、裏メニューの「生姜黒糖ココアラーメン」など、中華料理店時代の経験も生かしたさまざまな“体にいい料理”が多くの支持を集めています。
「ラーメンは不健康、と思われがちですがそんな考えはもう古い! 固定観念を打ち崩せるよう、これからも薬膳の知識を生かしたメニュー開発に励み、お客様に喜んでいただければと思います」
「カラダに良くて美味しい」をテーマに掲げ、2014年夏のオープンからわずか半年で「ミシュランガイド東京 2015」の“ビブグルマン”に掲載された「ブン ブン ブラウ カフェ」。エステルームが併設されているのも特徴です。
「BumBunBLauCafe with BeeHive」オーナーの斉藤直樹さんは、もともとは千葉県・九十九里海岸を拠点に活動していたサーフボード職人。ある時、サーフィン仲間が集まることができ、冷えた体が温まる料理を、と九十九里海岸で始めたのがラーメン店「BeeHive」でした。
「やるとなったらとことん追求するタイプ。研究はたぶん、他のラーメン屋さんの比じゃないくらいやったと思います。特に九十九里時代はわざわざ遠くまで食べに来てくださる方がほとんど。味の再現性を高めるため、データをしっかり取りながら、納得のいく味を追求しました」
一躍、行列ができる人気店となった「BeeHive」ですが、惜しまれつつ一度閉店。その後、斉藤さんの愛弟子でエステティシャンの鈴木瑞穂さんが自分のエステ店を開業するにあたって、「美容と健康に、食からもアプローチしたい」と2014年、「BumBunBLauCafe with BeeHive」を東京・旗の台にオープン。エステルームとラーメン店が併設、という他にはない店構えが特徴です。
看板メニューは「白トリュフ塩ラーメン」。青森の高級地鶏・大鰐シャモロックの丸鶏をふんだんに使い、アクセントにイタリア・アルバ産の白トリュフでつくった自家製香味油が香る一品。ラーメンでトリュフを使った元祖といわれています。
また、「アグー叉焼の醤油ラーメン」や「つけ麺」で使用する醤油は、国内産の生醤油を取り寄せて自家ブレンド。脂分はオレイン酸を豊富に含んだアグー豚のラードを使用しているので体にたまりにくい、といった点も人気を呼ぶ理由のひとつです。
自慢のスープとともにこの店の売りのひとつになっているのが、“スーパーフード”として注目される「スピルリナ」を練り込んだ自家製麺です。
スピルリナは藻の一種で、食物繊維、たんぱく質、β-カロテン、ミネラルなどを多く含む今話題の食品のひとつ。ほんのりグリーンがかった麺は、「コレステロール値が高い人、高血圧、便秘、免疫力の強化、肝機能の強化などにも効果が見込める麺」とうたっています。
「スピルリナは栄養素が優れている点も魅力ですが、タンパク質がとにかく高い植物なので、グルテンの代わりに入れて麺にコシを出すという意味合いで九十九里時代から使っていました。それが今、『健康』をキーワードにしたことで、より店のコンセプトとマッチしてきた感じです」
素材にこだわるのは「水」でも徹底。スープに使用するのは不純物を取り除いた逆浸透膜水。野菜を洗う際にはオゾン水、麺を茹でるのは軟水、飲み水は水素水と、用途によって使い分けています。
「当店ではかき氷などのスイーツも提供していますが、それらのメニューでは砂糖の代わりにアガペシロップという、血糖値が上がりにくいオーガニック甘味料を使用しています。ラーメンもスイーツも罪悪感を感じながら食べる料理ともいえますが、当店に来てくださる方の多くは『罪悪感なく食べられるのが嬉しい』と言ってくださいます。体にいいもの=美味しくない、といったイメージを持たれている方も多いと思いますので、そんな先入観を覆す、美味しさにこだわったメニューをこれからも提供していきたいですね」
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年2月)のものです