人気イタリアンを次々と展開するサローネグループの新店舗で、“イタリアの居酒屋=オステリアスタイル”を提唱するのが「ロットチェント」です。サローネグループの統括総料理長を務める樋口敬洋シェフが自ら腕をふるいます。
パスタフレスカ(生パスタ)専用小麦粉「ファリーナ ダ サローネ」。その出発点は、共同開発にあたった樋口敬洋シェフのシチリア島での修業時代にありました。
「イタリアでの修業で特に感じたのは、パスタの種類が実に多様であること。卵の有無、ロング・ショートといった形状の違い、ほかにも挙げればきりがありません。日本に帰ってきて自分でもそれらのパスタを再現していたんですが、ひとつだけどうしても再現できないものがあったんです。それが低加水パスタフレスカでした」
通常の生パスタは加水率が40~50%。一方、イタリア現地の低加水パスタフレスカの加水率は30%前後。加水の少ないパスタを自分で再現しようとしても、生地が硬すぎて手動のパスタマシンが壊れてしまった、という樋口シェフ。どうすれば再現できるのか……と悩んでいたとき、ヒントになったのが“ラーメン”でした。
「たまたま入ったラーメン店で食べた中華麺の歯切れが、私のイメージする低加水パスタフレスカに近かったんです。麺箱に『浅草開化楼』と書いてあるのを見てすぐに電話をして、製麺師・不死鳥カラスさんに相談させてもらったのが最初です。そこから、圧力のかけ方、卵の量などをカラスさんとともに試行錯誤していたところ、日清製粉さんにもご協力いただき、最終的に『のびる』『くっつく』『もちもち』という、いわゆる“生パスタの弱点”を克服した『低加水パスタフレスカ』が完成しました」
2016年9月にオープンしたサローネグループの新店舗「ロットチェント」。“イタリアの居酒屋=オステリアスタイル”を提唱するこの店で提供されているのが『ファリーナ ダ サローネ』を使ったパスタ料理の数々です。パスタランチは大盛り無料とあって、存分にパスタフレスカを堪能することができます。
「シェフとして常に考えているのは、せっかく来ていただいたお客様にどうすればもう一度足を運んでいただけるか。そこで求められるのが、ここでしか食べられない、という選択肢をお客様に提供することです。たとえば一週間のランチのうち、今日はラーメン、明日はイタリアン……と考えている方に、その“既存のイタリアン”とは別に『あのパスタが食べたい』と思ってもらえる麺。それが『ファリーナ ダ サローネ』だと思っています」
ロットチェントならではのパスタ料理として人気なのが、極太パスタ(ロマーナ)を使った「黄色いイワシのソース」。シチリア原産の野草であるフィノキエットの香り豊かなひと皿は、「シチリアの味をそのまま味わってもらいたい」というシェフの気持ちが込められています。
「南イタリアの離島の食堂をイメージし、内装も海を表現するブルーで統一しています。これまでサローネグループで展開してきた店舗とは違い、肩肘張らずに料理とお酒を楽しんでいただきたい、というのがコンセプト。そんな新しい挑戦をする上でも、『ファリーナ ダ サローネ』のパスタフレスカをもっと広めていきたいと思います」
江戸情緒が残る歴史ある街でありながら、洋食激戦区でもある東京・神楽坂。この地で、ワインをこよなく愛するオーナーシェフが腕をふるう店が「オステリア レガーメ 神楽坂」。ワインと料理のマリアージュが楽しめる店として人気です。
新イタリアン激戦区、とも言われる東京・神楽坂で蒲生弘明シェフが「オステリア レガーメ 神楽坂」を開業したのが2013年のこと。ワインと料理の組み合わせを楽しんでもらうことをモットーとしています。そんな店で「低加水パスタフレスカ」を導入しようと思ったのは、周囲の「割引合戦」がきっかけでした。
「ちょうど1年半前くらいから、ランチが500円で食べられる、といったグルメクーポンが神楽坂でもよく使われるようになりました。でも、私はその割引合戦の流れには乗りたくなかったんですね。それがリピーターにつながるとは思えず、むしろ疲弊してしまう懸念がありました。安くするのではなく、むしろ他ではやっていないことをやって値上げできないかと考えていたところ、浅草開化楼さんのSNSで『ファリーナ ダ サローネ』の存在を知ったんです」
イタリアンだけでも100店舗はある、という神楽坂でも「低加水パスタフレスカ」を提供するお店は初めて。その“新奇性”が大きな売りになったといいます。
「麺の切り替えにあわせて従来のメニューよりも値上げしたんですが、神楽坂でここだけ、というのが反響となって、客足を増やすことができました。当店では食感を楽しんでもらおうと特に硬めに茹でているのも影響してか、お客様のほとんどが『こんな麺食べたことない』と言ってくださいます。激戦区だからこそ、他店との差別化になったと感じています」
ワイン好きが高じてソムリエの資格まで取得した蒲生さん。ワインを楽しむ上でも、『ファリーナ ダ サローネ』でつくるパスタは利点が多いと語ります。
「美味しいイタリアワインと、そのワインにあう料理を提供したいと思っています。そこで難しいのが、パスタをどのタイミングで提供するか。お酒と会話が盛り上がって料理に手をつけるまで時間がかかってしまうのは、こちらではコントロールしきれません。だからこそありがたいのが“麺がのびにくい”という特徴です。普通は出した瞬間からどんどん急速にのびていきますが、「低加水パスタフレスカ」はのびないから、味もキープできるんです」
また、この店ではパスタと一緒に『ファリーナ ダ サローネ』を使った自家製パンも堪能することができます。
「粉自体に旨味というか甘味があるんです。この独特の甘味はパンにしたらより楽しめるのでは、とつくるようになりました。フワッとした食感を出すために日清製粉のカメリヤもブレンドしています。そのさじ加減が難しいのですが、『ファリーナ ダ サローネ』の特徴が味わえるパンになっていると思います」
店名にある「レガーメ」とは「つながり」という意味。これからも、ワインと料理をつなぎ、お客様との関係性をつなぐ上で、『ファリーナ ダ サローネ』のパスタが大きな武器になるのでは、と蒲生さんは語ります。
「最近は、同業者からも『この麺なに?』と質問されることが増えています。他のお店でも使われると差別化という意味では弱まってしまうかもしれませんが、料理人同士のつながりも大事にしていきたい。これからも情報交換を密にして、よりよい店にしていきたいと思います」
2016年6月オープン。自家製オードブルや厳選したジビエ肉、溶岩石グリルが楽しめるのが「Bacca Grill & WineBar」。リーズナブルなワインとともに、カジュアルなレンガづくりの空間で仲間とワイワイ楽しめるお店です。
「Bacca Grill & WineBar」代表の坂口文彦さんは、人気番組『料理の鉄人』で“三代目・和の鉄人”として活躍した森本正治氏の一番弟子と言われる人物。これまでにも「酒場ビストロWAIGAYA by saka」などさまざまな店を手がけてきた中で、ひとつ悩みがあったといいます。
「私どものグループでは生麺を使っていたんですが、お酒を楽しんでいただく業態としては『麺の寿命が短い』、つまり、麺がのびやすく最初の味をキープできない、というのが悩みの種でした。ならば乾麺に切り替えた方がいいかなと検討していた時、新聞で『ファリーナ ダ サローネ』の存在を知り、総料理長の大武を中心に一度試してみよう、という話になりました」(坂口さん)
店舗導入にあたってメニューづくりなどを手がけたのが総料理長の大武和樹シェフです。
「実際にひと口食べてみて、もう価値観が変わるほどの衝撃でした。実は当初、『そうは言っても生麺でしょ』と、否定的なイメージを抱いていたんです。でも、その先入観が一変するくらい、まず香りが違いました。自分で打ったような小麦粉の香りがしたんです。そして、もうひとつが『噛みごたえ』。食べたあとの満足感が違うなと感じました」(大武さん)
『ファリーナ ダ サローネ』を手がけている浅草開化楼の不死鳥カラスさんとコミュニケーションを取ることができたのも、導入にあたっては大きな決め手になったと語ります。
「料理人として、素材を実際につくっている方と話ができたのは大きいですね。メニューづくりをする上でもとても参考になりました」(大武さん)
『ファリーナ ダ サローネ』のポテンシャルをすぐに感じとった大武シェフ。店で使ってみたいというワクワクした気持ちの一方で、不安に感じることもあったといいます。
「私どものグループは新宿界隈に多く、場所柄、居酒屋のような使われ方をすることがほとんどです。つまり、パスタ専門店ではなく、お酒の締めとしてパスタを提供している当店でこの麺を使いこなせるのか。店舗によっては調理歴の浅いスタッフが担当することもあるだけに、麺の力を引き出せるのか、という不安も正直ありました」
『ファリーナ ダ サローネ』は料理人を選ぶ麺、と語る大武さん。そこで、パスタメニューはある程度絞り込み、またソースの味を少し濃い目にしたり、麺の茹で時間を細かく検証したりと、いつでも同じ味を提供するための工夫に細心の注意を払ったといいます。
「現在は、軽いソースには中太麺を、ジビエの肉を使う重いソースには極太麺を使う、といった使い分けをしています。また、オイル系の乳化が必要なパスタやトマトソースなどのフレッシュなパスタの際には、一度冷凍した麺を使うようにしています。一度凍結させることで味なじみが増すとともに、より強い歯ごたえを楽しむことができるようになるからです」
お店で使いこなすためには課題が多いです、と語る大武さん。それでも『ファリーナ ダ サローネ』の可能性に期待を寄せています。
「今後、間違いなく流行る麺だと確信しています。だからこそ、今のうちからしっかり使いこなして、私たちのようなグループ業態でも提供できるんだ、という先駆けになっていきたいですね」
人気スポットである六本木ヒルズや東京ミッドタウンから徒歩3分という立地にもかかわらず、繁華街の喧騒から離れることができる隠れ家イタリアン「ARIA」。リーズナブルな価格で本格イタリアンが味わえる人気店です。
「レストランを営む上では、常に美味しいパスタ、美味しい麺を探し続けています。そんな中、ちょうど1年前に『ファリーナ ダ サローネ』の存在を知り、開発に関わられた浅草開化楼のカラスさん、ロットチェントの樋口敬洋シェフにもお話をうかがいました。そして、実際食べてみたらこれまでのパスタと全く違ったので、すぐに切り替えよう!と。もう即決でした」
『ファリーナ ダ サローネ』との出会いをこう振り返ってくれたのは、「ARIA」料理長の山田佳則さん。特に驚いたのが「香り」だったといいます。
「低加水麺ならではの歯ごたえも魅力的でしたが、まず感じたのは小麦の香りです。小麦自体の味も食べながらしっかり感じ取ることができ、最後に鼻から小麦の香りが抜けていく印象を持ちました」
『ファリーナ ダ サローネ』の特徴は、女性客が多いというARIAにとって利点が多いと語ります。
「男性に比べて、女性のほうが食感に対して敏感ですので、当店ではパスタ以外の料理でも食感が楽しめる切り方にするなど、メニューづくりでは常に女性客を意識しています。その意味でも『ファリーナ ダ サローネ』の弾力ある噛み心地は魅力的だと思っています。また、従来の業務用生パスタと比べて、『ファリーナ ダ サローネ』でつくった低加水パスタフレスカは加水率が低いので、状態変化が起きにくい。結果として、女性がゆっくり食事を楽しんでも最後の一口まで美味しく召し上がっていただけるのが嬉しいですね」
『ファリーナ ダ サローネ』の低加水パスタフレスカを導入したことで、パスタソースにも改良を重ねたと山田シェフは語ります。
「麺の味をしっかり味わっていただけるように、たとえば人気のアラビアータではニンニクの使用を止め、ンドゥイヤ(豚肉を唐辛子漬けにして熟成させたもの)とトマトソースだけというシンプルなつくり方に切り替えました。余計なもの入れなくても少しの食材だけで完成度の高い一皿になるんです」
麺そのものが美味しいからこそシンプルな調理方法が生きてくる、と語る山田シェフ。同様の試みは他のメニューにも反映されています。
「スルメイカのラグーソースのような濃厚でしっかりとしたソースには、その濃いソースにも負けない極太麺を。あっさりとした塩味ベースのものに関しては中太麺を使っています。ただ、カルボナーラなど一部のメニューに関しては、昼と夜で中太麺・極太麺を切り替えて提供しています。要は、どちらでも美味しいんです。『ファリーナ ダ サローネ』の特徴をより知ってもらえるのは極太麺の方だと思っているので、よく出る商品ではあえて2種類ご提供することで、麺の味わいをより楽しんでもらおうと考えました」
地域密着を心がけ、お客様が喜んでもらえる工夫を重ねることが使命、と語る山田シェフ。その中でも、パスタが美味しいお店であることを重視していきたいといいます。
「これから、『ファリーナ ダ サローネ』を使う店はますます増えていくでしょうし、他にもさまざまな生パスタが生まれると思います。だからこそ、常に新しいことを取り入れつつ、基本に忠実で美味しいパスタを出し続ける店でありたいですね」
『ファリーナ ダ サローネ』は、日清製粉がサローネグループのエグゼクティブシェフ樋口敬洋氏と共同開発した、パスタフレスカ(=生パスタ)専用小麦粉です。製麺所の高圧な製麺機を用い、低加水で製麺することで、より本場の生パスタに近い「心地よい歯切れと弾力」、「伸びにくさ」を実現します。
「ファリーナ ダ サローネ」について 詳しくはこちら
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年2月)のものです