2016年8月オープン。「博多一風堂」を展開する力の源グループの飲食業態プランニング会社「力の源パートナーズ」と、博多を代表する焼とりブランド「焼とりの八兵衛」のセカンドブランド「BUTABARA TO THE WORLD」とのコラボで生まれた、博多気分満載のうどん酒場です。
全国区の人気を誇る博多ラーメン店「一風堂」。その一風堂と同じように、福岡発の美味しいものを全国に広めていきたい、という狙いのもと誕生したのが「博多うどん酒場イチカバチカ」です。店名の由来は「一風堂」の「イチ」と、博多を代表する焼とりブランド「焼とりの八兵衛」の「ハチ」から。“ブタバラにはじまり、うどんで〆る!”という博多のうどん酒場の雰囲気をそのまま味わうことができる店として、オープン以来、大盛況。その賑わいぶりを店長の網川涼さんが語ります。
「このお店ができてから『恵比寿に博多がやってきた』と言ってくださる方が本当に多くて嬉しい限りです。特に、博多うどんはまだまだ東京では提供しているお店が少ないので、本当に喜んでいただけているなと実感しています」
博多うどんはもちろんのこと、「おきゅうとポン酢」や「いわし明太子」「酢モツ」といった福岡グルメの数々がメニューを彩ります。自慢の豚バラ串は塩、味噌、タレの3種類。国産ノンワックスの冷凍レモンが氷替わりの名物「一八レモンサワー」とともに味わえば、気分は博多そのもの。博多の締めの新定番ともいえるソーメンには「一風堂」の麺を使用するこだわりようです。
「内装を博多屋台のイメージにしていることもあってか、夜は特に活気があって『福岡で飲んでいるみたい』と喜んでくださるお客様もいます。福岡の味を知らない方からも、『博多ってこんなに美味しくて楽しいんだ!』という感想をいただけるのは嬉しいですね」
さまざまな博多グルメが味わえる「イチカバチカ」において、特にこだわっているのが「博多うどん」です。
「博多うどんは、昆布・いりこ・鰹節という海産物3種類でお出汁をとるのが主流ですが、当店では『昆布・ホタテ貝柱・サバ節・焼きスルメ・うるめ節・玄海産いりこ・五島産焼きアゴ』の7種類。朝と夕の1日2回炊いているので、フレッシュな香りのお出汁をご提供できていると思います」
この素材へのこだわりに加えて、「一風堂」の流れを汲むからこそのラーメン店のノウハウも生きている、と網川さんは語ります。
「通常、うどんはお出汁をとった後に塩や醤油を加えて味を調整しますが、当店ではラーメンの要領で塩ベースの元ダレを丼に入れ、そこにお出汁を注いで味を整えます。お客様の好みに合わせて味を調整することもできますし、煮詰まって味が変わってしまうことも防ぐことができます」
また、博多うどんの肝ともいえる“もっちヤワ”の麺は、開発までに数年かかったというこだわりの品です。
「生地を練り上げてから丸一日熟成させた麺を二度茹ですることでふわふわした食感が生まれます。粉の選定や寝かせ方、二度茹でまでの時間配分など、どうすれば『これぞ博多うどん』という味わいと食感を再現できるか。その試行錯誤にはじっくり時間をかけました」
恵比寿店に加えて今年2月には吉祥寺店もオープン。“ブタバラにはじまり、うどんで〆る!”という博多のうどん酒場文化は、今後ますます人気を呼びそうです。
2015年5月オープン。「打ちたて」「切りたて」「揚げたて(天ぷら)」の“三たて”がモットーのうどん店が「切麦や甚六」です。開業前は広告カメラマンだったという経歴の店主が打つ喉ごし際立つうどんと、こだわりの日本酒が楽しめる人気店です。
広告カメラマンとしてキャリアを重ねていた若い頃から、50歳になったら違う仕事をしようと決めていたという坂本和平さん。その将来設計通り、50歳のときにうどんについて勉強を始め、新宿御苑の近くに「切麦や甚六」を開業したのは52歳のときでした。
「祖父が板前で、父も飲食店を営んでいたこともあって食には興味がありましたが、50歳から始めるからこそリサーチを徹底しました。神田にずっと住んでいたこともあって蕎麦の方が親しみはありましたが、蕎麦は新規参入しても新しいことができる余地はほとんどありません。でも、うどんはまだまだ東京であれば新規性があると思い、うどんの勉強をしながら物件を探しました」
新宿御苑に店を構えたのも、徹底したリサーチの結果でした。
「新宿に近く、会社や事務所が多いのに意外と住宅地でもある、ということ。その一方で、ランチを出す店が少なく、ランチ難民も多い環境だった点が一番の理由です」
その狙い通り、昼はうどんや揚げたての天ぷらを求めるサラリーマンで賑わいをみせ、夜は天ぷらをはじめとしたこだわり一品料理と厳選した日本酒を楽しみ、シメにうどんを食べたい常連客で繁盛しています。
「うどん屋というと、ツルツルっと食べてすぐに出なければいけない、という忙しない印象があります。でも、当店ではゆったり飲んで、うどんもしっかり味わっていただく。ホッと一息ついてもらえるような空間であるのがモットーです。日本酒も味そのものを味わっていただきたいので、あえてお酒のメニューはつくっていません。メニューがあると、どうしても知っているお酒を注文されます。でも、そのときの気分や料理にあわせて日本酒を楽しんでいただきたいので、お客様の好みを聞いてこちらからオススメのものを提供しています」
「打ちたて」「切りたて」にこだわる「切麦や甚六」のうどん。どの季節でも変わらない品質でうどんを提供できるよう、厳選した小麦粉、まぜ合わせる塩水に至るまで練り上げる前から温度管理を徹底しています。
「いわゆる、職人の勘、といったものに頼る仕事はしたくありませんでした。粉も塩水も温度管理することがブレのないうどんにつながります。この考え方は、山形の銘酒『十四代』をつくる高木酒造さんに倣いました。高木酒造さんでは、従来の杜氏の引退をきっかけに精米にかける時間を秒単位で計るなどすべてデータ管理に切り替え、『十四代』という人気作が生まれたといいます。それと同じことをうどんでもやろうと思ったんです」
こだわりの麺を支える出汁は、北海道の上質な昆布や瀬戸内海産のいりこ、数種類の魚の節をブレンドして時間をかけて丁寧に抽出。さらに、昔ながらの製法でつくる小豆島産の無添加醤油と文久二年創業の愛知県のみりんを合わせます。また、つけ出汁とぶっかけ出汁の甘味にはワインの他に東京都大田区雪谷で養蜂された蜂蜜「ゆき蜜」を使用しています。
「何か東京のものも加えたいと思い、今使っている蜂蜜に辿り着きましたが、将来的には自分で養蜂もしてみたいと思っています。自家製蜂蜜が自慢のうどん屋、っていうのも面白いじゃないですか」
リサーチや研究に余念のない店主なら、自家製蜂蜜以外にもさらなる驚きと工夫で店を発展させるのではないでしょうか。
2016年11月にオープンしたばかりの話題の新スポット「中目黒高架下」に店を構える「二○加屋長介」。博多で人気のうどん居酒屋が、様々な飲食店運営を手がけるトランジットジェネラルオフィスとパートナーシップ契約を結び、博多の味を東京に広めます。
魅力的な食で溢れる福岡・博多で、ここ数年続々と増えているのが、飲んだあとにうどんでシメる「うどん居酒屋」というスタイル。その先駆け、といわれている「二○加屋長介(にわかやちょうすけ)」の東京旗艦店が昨年末、中目黒の新スポット「中目黒高架下」にオープンしました。
「博多のシメといえば『ラーメン』のイメージが強くあると思いますが、その目先を変えるものとして、うどんを居酒屋メニューの最後に出そうとして人気を博したのが2010年にオープンした『二○加屋長介』。わずか数年で博多でもすっかり定着したスタイルを、東京でも楽しんで欲しいと出店することが決まりました」
開店の経緯を教えてくれたのは、目黒店店長の高野弘樹さんです。
「『二○加屋長介』の本店は博多の薬院という場所にあるんですが、その薬院の雰囲気と、中目黒の高架下の雰囲気が似ているんです。『二○加屋長介』オーナーの玉置康雄さんも中目黒の街のアットホームな雰囲気に博多に近しいものを感じて出店を決めたそうです。内装や品書きも本店と同じデザインにして博多の雰囲気を打ち出しているからか、予想以上に福岡出身のお客様が喜んでくださっている印象です」
80種類はあるという料理の数々は、博多や九州を感じさせるものばかり。長崎産・雲仙ポークを贅沢に使った厚さ2cm超の「厚切雲仙ハムカツ」のほか、福岡名物「胡麻さば」を東京流にアレンジした「胡麻かんぱち」といった、この店でしか味わえない逸品も評判です。
飲んだ後のシメとして人気のうどんメニューは、基本となる「あつかけうどん」や「ひやかけうどん」のほかにも、10種類以上。若干細めの麺が二○加屋長介流です。
「細めの麺だからこそ、ラーメン感覚でツルツルっと食べていただけるのかなと思っています。人気なのは博多らしい『ごぼう天あつかけうどん』と、博多の郷土料理である水炊きをイメージした『鶏白湯あつかけうどん』でしょうか。鶏白湯は鶏ガラを6時間炊いた濃厚なスープがうどんとよく絡みます」
やわらかな食感の中にもしっかりとしたコシのある麺は、本店同様、福岡・糸島産小麦を100%使用。その他、各テーブルに置いてあるのは博多の老舗メーカー、ジョーキュウ醤油。調理につかう調味料も福岡のものを使用するなど、九州の素材をつかって本場の味を再現したい、という想いが込められています。
この中目黒店に続き、2月には大手町店もオープン。夜の営業のみの中目黒店と違い、大手町店ではランチも営業。博多うどんのお供として地元ではお馴染みの「かしわご飯」も味わえるのが特徴です。
「『福岡=ラーメン』ももちろんいいんですが、まだまだ福岡、博多には美味しい食文化があるぞ、というのをどんどん提案していきたいですね。博多の味を広めることで東京をもっともっと熱くしていきたいと思います」
「ミシュランガイド ビブグルマン」にも選ばれる、行列の絶えない人気うどん店「釜竹」。その系列店として2015年12月にオープンしたのが「慶」です。昼はうどん専門店として、夜はシメのうどんが人気の日本酒Barとして人気を博しています。
東京・根津に店を構えるうどんの名店「釜竹」。そこから徒歩数分の場所にある、築100年以上の古民家を改装した店が「慶」です。店長の遠藤真弥さんが、その開店経緯を教えてくれました。
「もともとは、『日本酒Bar慶』として、ここから少し離れた場所で営業していました。そのときは夜だけの営業で、うどんもあるにはありましたが種類も少なく、あくまでも主役は日本酒。でも、今のこの物件が見つかり、『釜竹』にも近くなって連携が取りやすくなったこともあって、昼も店を開けてうどんを提供することになりました。『釜竹』は予約客が多く、地元の方がなかなか入れない悩みもありましたので、地域の皆さんに気軽にうどんを楽しんでいただければ、という狙いもありました」
日本酒Barとして始まった店なだけに、日本酒の品揃えは常時30種類以上。しかも、毎日のように切り替わる一期一会の楽しみも魅力のひとつです。日本酒に負けないようにお通しも毎日違うものを提供しています。
「今日仕入れたお酒でも、お客様が飲んでしまえば、次の仕入れはまたずっと先、ということはよくあります。この近辺は日本酒を扱うお店が多いので、他店と被らないように、有名ではなくても常連客の方に好まれるような仕入れを心がけています。また、『釜竹』ではメジャーな銘柄を揃えるようにしているため、その差別化、という理由もあります」
うどんメニューは昼が「ぶっかけうどん(冷)」「かけうどん(温)」「力うどん」「カレーうどん」の4種類。夜は「力うどん」が「かきたまうどん」に切り替わります。ここでも、「釜揚げうどん」と「ざるうどん」の2種類がメインの『釜竹』との差別化がされています。
「麺も出汁も、ベースとなる部分は『釜竹』と同じです。ただ、うどん生地は一緒ですが太さが違います。『釜竹』では“釜揚げうどん”がメインですので少し太め。当店では“かけうどん”や“ぶっかけうどん”がメインですので、あまり太いと食べづらいため、少し細めにしています。お酒のあとのシメとして食べることを考えると、細いほうが早くご提供できる、という理由もあります」
昼の「ぶっかけうどん」は500円(※税込)という価格設定もあって、近くにある東京藝術大学の学生を中心に人気が集中。また、夜に開いている店が少ないという場所柄、深夜3時まで営業していることも支持を集め、仕事帰りのサラリーマンはもちろん、2軒目、3軒目のはしご酒として利用するお客様も多いといいます。そんな層に人気を博しているのが“シメのカレーうどん”です。
「カレーにはかなり力を入れてつくっています。『日本酒のあとにカレー?』と思われるかもしれませんが、これが意外に好評なんです。昼も夜も、常連のお客様が多いので、いつ来ていただいても新たな発見があるような店でありたいと思っています」
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年3月)のものです