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みんなが好きな辛味の共演 カレー担々麺

もはやすっかり定番の人気を誇る「担々麺」。“辛さ”や“具材”で個性を競い合う中、ここ数年、新たな注目を集めているのが「カレー担々麺」です。日本の国民食ともいえる“カレー”と“担々麺”。辛い料理の代表格である2つの料理は、一杯の丼の中でどのように共存できるのでしょうか?そこで今回は「カレー担々麺」を提供する3つの店に取材をし、材料、調理法、コンセプトなど、各店のこだわりをお聞きしました。
  • 元祖カレータンタン麺 征虎 総本店
  • 元祖博多担々麺 梟
  • 揚州商人 渋谷センター街店

元祖カレータンタン麺 征虎 総本店

神奈川県横浜市の黄金町駅から徒歩3分の場所にある「元祖カレータンタン麺 征虎 総本店」。開店当初から徐々に口コミが広がり、現在では食事時だけでなく、深夜や明け方にも賑わいをみせている人気店です。

元祖カレータンタン麺 征虎 総本店
住所:神奈川県横浜市南区前里町2-47
電話番号:045-252-8350
営業時間:11:00〜翌朝6:00
定休日:なし

賄いから生まれた新たな味わい「カレータンタン麺」


担々麺の新たなジャンルとして、川崎や横浜を中心に支持を広めている“ニュータンタンメン系”のラーメン。一般的な担々麺とは異なり、鶏ガラベースのスープに溶き卵・ニンニク・ひき肉・粗挽きの唐辛子で調理されているのが特徴です。この“ニュータンタンメン”の流れを汲みつつ、さらに「カレー味」に仕上げたメニューで勝負しているのが「元祖カレータンタン麺 征虎 総本店」です。

「以前は居酒屋を経営していたのですが、そこでの人気メニューがニュータンタン風のタンタン麺と独自のスパイスを調合したカレーでした。賄いを食べるときに、この2つを混ぜて食べてみたところ、「美味すぎる!」と驚くほどの味だったんです。ならば、逆の発想で担々麺にカレーをかけてみるのもアリなのではないかと考え、生まれたのが当店オリジナルの『カレータンタン麺』なんです」

そう語るのは代表の河田征大さん。スープを最後の一滴まで楽しめる食べ方を徹底的に追求し、多くのお客様の心を掴んでいます。

「『カレータンタン麺』の味を完成させる上で難しかったのは“カレー”の塩梅でした。カレーが強く出過ぎると“カレーラーメン”だし、かといって、カレーが薄すぎてもいけない。スープに対しての比率はもちろんですが、タンタン麺のスープに合うように、カレーは欧風の味付けではなく、鶏ガラベースの中華風に調理しています」

創意工夫のもと生まれたスープは、カレーが染み込みやすくモチモチとした食感の麺とも相性抜群。スープが跳ねないよう、ちょっと短めの麺にしているのもこだわりのひとつ。100円で追加できるチーズにもしっかりと絡みます。また、ライスとトッピングのチーズがついてくる「カレータンタン麺セット」も、リピーターから大好評のメニューです。

「麺を食べ終えてから、スープにご飯を入れて食べる方もいれば、ご飯にスープをかけてカレーライスのようにして召しあがる方もいらっしゃいます。カロリーやニンニクの匂いなど細かいことは気にせず、お客様にはお腹いっぱいになるまで当店のカレータンタン麺を楽しんでいただきたいですね」

トマトとカレーの相性の良さがウリの「トマトカレータンタン麺」

辛さは小辛、中辛、大辛、気絶、超絶、神、変態の7段階で調節が可能。辛い物がちょっと苦手な層から激辛を求める層まで、幅広いニーズに対応しています。

「大辛以上は、唐辛子を別皿で提供しています。辛くて食べられないということになったらもったいないので、味を試しながら少しずつ丼に入れてもらうようにお願いしています。特に人気なのは大辛・気絶クラスですね」

濃厚で刺激の強いカレータンタン麺は、いかにも男性受けしそうなメニュー。一方、女性客に人気なのがトマトカレータンタン麺です。

「開店して半年ほど経った頃、何かインパクトのある新メニューが欲しいと思い、生み出したのが『トマトカレータンタン麺』でした。果汁100%のトマトジュースとトマトの果肉を『カレータンタン麺』のスープに混ぜたのですが、これがぴったりハマりました。トマトとカレーの相性がいいんですね。看板メニューはカレータンタン麺ですが、完成度でならトマトカレータンタン麺が一番かもしれません」

この他にも「タンタン麺」「カレーつけめん」「台湾風まぜそば」と、新メニュー開発に余念がない河田さん。「カレータンタン麺」のパイオニアとして、今後はカレータンタン麺というブランドの普及を目指しています。

「横浜のラーメン、といったら“家系ラーメン”を思い浮かべる人がほとんど。でも、いずれは『カレータンタン麺もあるよね』と言われるように、ローカルフードとして定着させたいと思っています。カップラーメンなどの商品化も今後の目標です。濃厚な味わいの『カレータンタン麺』ですから、これほどカップラーメンと相性のいいラーメンはなかなかないと思います。当店自慢の味を一人でも多くの方に楽しんでほしいですね」

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元祖博多担々麺 梟

福岡を中心に展開する「元祖博多担々麺 梟」。ベトナム・ホーチミンに海外進出を果たしたのち、2017年12月に満を持して東京・五反田に関東1号店をオープンしました。従業員全員が苦労せず、みんなで大きく育っていこうという思いが「梟」という店名に込められています。

元祖博多担々麺 梟 五反田店
住所:東京都品川区西五反田2-10-8
電話番号:03-6417-0296
営業時間:11:00~23:00
定休日:日曜

豚骨や辛い物が苦手な人でも楽しめる「極旨カレー担々麺」

「『元祖博多担々麺 梟』は、福岡の薬院本店から始まった“豚骨担々麺”の専門店です。“豚骨スープ”と“担々麺”が掛け合わさったラーメンは、東京はもちろん、福岡でも当店以外ではまず出会えない味。福岡出身のお客様に『梟の味を東京でも味わえるとは!』と喜んでもらえることもあるんですよ」

昨年末、東京・五反田にオープンしたばかりの「元祖博多担々麺 梟」。たった数ヶ月の営業期間にもかかわらず、ランチタイムにはサラリーマンやOL客で賑わいをみせる人気店になっています。看板メニューは「博多とんこつ担々麺」ですが、「極旨カレー担々麺」も人気商品。五反田店店長の森慶人さんに、その人気の理由についてお聞きしました。

「以前、福岡・天神で営業していた当店の系列店『焼肉 梟』で牛タンカレーを販売していたことがありました。そのときに使っていたスパイスを『極旨カレー担々麺』にも使用しています。カレーのスパイス、担々麺の調味料、豚骨スープ、3つのバランスを成立させるまでには何度も失敗を重ねたと聞いています。ただ、料理は足し算ではなく、掛け算。苦労した分、それぞれの良さが存分に引き出されたラーメンになっていると思います」

「元祖博多担々麺 梟」のスープはすべて“豚骨”ベース。ただ、豚骨といっても骨や炊き方に工夫があるため、独特の匂いは控えめ。また、唐辛子は、優しい辛さが特徴の韓国産唐辛子を使用。豚骨の匂いが苦手な女性客や、辛味が苦手な客層でも美味しく味わえるのが魅力のひとつです。

「麺は少し縮れた中太の中華麺。とろみのあるスープにしっかり絡みます。弾力があってモチッとしていながらも、芯が残っていて歯応えは硬め。伸びにくくてコシが強いですね。硬めが好きな福岡の人でも満足のできる硬い麺です」

福岡と同じ味を出すためにこだわった水、調味料、麺

福岡発の新感覚担々麺が早くも人気の梟。ただ、東京でも福岡と同じ味を再現するには、さまざまな課題がありました。

「最も苦労したのは水の違いです。福岡と比べて東京の水は倍以上の硬度で、その硬水で豚骨を炊くと思うように出汁が取れませんでした。五反田店を開店した当初は福岡の水を毎日のように取り寄せてなんとかしのぎましたが、現在は軟水変換器を導入することで問題をクリアしています」

その味の違いは、一口食べただけですぐにわかるほどだったと語る森さん。同様に、福岡の味を再現するため、ラー油、醸造酢は福岡と同じく、西日本でのみ販売しているものを取り寄せて使用。麺に関しては東京の製麺所から仕入れているものの、福岡で提供するものと同じ味を再現しています。

「福岡の店舗は博多小麦100%の麺です。五反田店の麺は限りなくそれに近い品質の小麦で製麺しています。定期的に福岡本店に麺を送って食感やスープとの絡みなどをチェックしているので、福岡の麺をしっかり再現できていると自信を持っています」

博多とんこつ担々麺や極旨カレー担々麺のほかにも、「トマト担々麺」や「汁なし担々麺」など、数多くのメニュー展開をしている「元祖博多担々麺 梟」。五反田出店を機に、さらなる多店舗展開も視野に入れています。

「水や調味料の問題など、東京出店で戸惑うことも多々ありましたが、それらの課題をクリアするノウハウも学べました。この経験を生かして、関東でも店舗数を増やすとともに、海外店舗ももっと増やして、『博多豚骨担々麺』というブランドを世界に広げていきたいですね」

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揚州商人 渋谷センター街店

関東を中心に30店舗以上の店を構え、中国料理・中国ラーメンを取り扱う「揚州商人」。麺料理だけでも品数は30種類を超え、季節限定麺にも力を入れています。デザートが芸能人御用達の味としてメディアに取りあげられるなど、メニューの端から端まで、それぞれに固定ファンがついています。

揚州商人 渋谷センター街
住所:東京都渋谷区宇田川町33-12 J+Rビル1F
電話番号:03-3461-8899
営業時間:[平日]10:00~翌8:00(L.O.翌7:30)
/[土・日・祝]24時間営業
定休日:なし

メニュー数30以上。大変だからこそ、他店に真似されにくい

「中国料理の美味しさを日本での多くの人に味わってもらいたい」という創業者の想いが原点の揚州商人。そのため、どのラーメンであっても、本場の中華料理がベースになっています。

全店舗共通で不動の一番人気は、コクのある酸味と辛味が特徴の「スーラータンメン」。そして二番人気がゴマの濃厚な味わいが自慢の「タンタン麺」。そして、このタンタン麺の流れを汲んで生まれたのが「カレータンタン麺」です。もともとは2015年8月に期間限定メニューとして提供したところ人気を呼び、すぐに定番メニューの仲間入りを果たしました。その人気の秘密はどこにあるのか? 「揚州商人 渋谷センター街」で店長を務める森山達司さんに話を聞きました。

「タンタン麺もカレータンタン麺も、スープのベースにしているゴマペーストは一緒です。違いは辛味成分と刺激成分。タンタン麺ではラー油で辛さを表現していますが、カレータンタン麺ではカレーのスパイスと、ラー油の代わりに使用する中国山椒のピリッとした刺激が味の決め手です。国民食でもあるカレーの味が多くのお客様のお口に合ったことと、売り上げ2位を誇るタンタン麺のリピーターのお客様からも支持を得たことが人気の理由ではないでしょうか」

このタンタン麺やカレータンタン麺以外にも、「牛肉のあっさり激辛ラーメン」「激辛タンタン麺」「激辛スーラータンメン」など、さまざまな辛口ラーメンを提供している揚州商人。それぞれのメニューでラー油や唐辛子を細かく使い分けるなど、味の工夫には余念がありません。

「スーラータンメンで使用するラー油とタンタン麺で使っているラー油は違いますし、同じタンタン麺でも冷やしバージョンではまたラー油が違います。冷たい料理の場合、味が鈍る分、より刺さるような辛さが求められるからです。安易に共通食材に逃げない。手間はかかりますが、一品一品で味の違いがあるから、それぞれのメニューに固定ファンがいらっしゃいます。そして、大変だからこそ、他店に真似されにくいという利点があります」

目指しているのは“楽しむための食事”

麺料理を注文する際、柳麺・刀切麺・揚州麺という3つの麺を選べるのが「揚州商人」の特徴です。

「『カレータンタン麺』を頼まれる際の一番人気は揚州麺。モチモチとした食感とコシを両立させた当店オリジナルの中太麺です。刀切麺も相性がいいですね。歯応え抜群の極太麺なので、とろみのあるスープにしっかり絡みます」

柳麺は低加水麺でモチモチとした食感が魅力の中国ではポピュラーな細麺。「青菜そば」や「黒酢ラーメン」など、あっさりとしたスープとの相性が抜群です。

「当店では麺が選べるだけでなく、そもそものメニュー数が多い分、様々なお客様のニーズに応えることができます。一般的なラーメン店の男女比は8:2ほどだと思いますが、『揚州商人』では半々くらい。デザートにも力を入れているからか、“女子会ができるラーメン店”と評判をいただいている店舗もあります」

デザート以外にも「お子様ラーメンセット」といった家族向けメニューがあるのも「揚州商人」の魅力。小さな子ども連れの女性客でも気軽に入店できます。

「食事、という行為には“生きるための食事”と“楽しむための食事”のふたつがあると思いますが、当店で目指しているのは楽しむための食事です。『週末になったら揚州商人に行きたいな』とワクワクしてくれるようなお店づくりを心がけています」

また、メニュー以外でも、店舗それぞれで内装のデザインをアレンジ。渋谷センター街店では上海の街並みを表現しています。また、外国人客も多いという場所柄、中国語、韓国語、英語表記もある食品サンプルを店頭に設置。売上げアップにもつながっているといいます。

「『渋谷センター街店』としては老若男女、国籍は問わず、どんな人でも楽しめるお店づくりを徹底していきたいと考えています。揚州商人全体では、将来的には100店舗の出店を目指しています。そのなかで、揚州商人ならではの美味しさやメニューのバリエーションを、もっとたくさんの人に知っていただけたらと思います。

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一口に「カレー担々麺」といっても、今回取材した3店舗では、ニュータンタン麺、博多豚骨ラーメン、中華料理とベースにしている料理はそれぞれでした。一方で共通していたのは担々麺とカレーを一杯の丼の中で表現するという難しさにチャレンジしていたこと。そして、その難しさを越えた先に、お客様に新しい感動と美味しさを提供している、ということです。つくり手の努力と情熱をもって完成する「カレー担々麺」。今後ますます人気が高まっていくのではないでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年2月)のものです

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