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ラーメン店の冷やし中華

夏の風物詩ともいえる「冷やし中華」。暑い時期になると売り上げが伸び悩みがちなラーメン業界ですが、夏季限定の冷やし中華はラーメンとは違った魅力を伝える存在です。そこで今回は、こだわりの冷やし中華を提供する都内で人気の4店をピックアップ。猛暑日が長く続いた2018年の夏、どのような工夫でお客様に美味しさと感動を提供したのでしょうか。それぞれのこだわりについて聞きました。
  • ソラノイロ
  • 一龍
  • 鶏そば十番156 麻布十番本店
  • 東京味噌ラーメン鶉

ソラノイロ

2011年6月に麹町でオープンした「ソラノイロ」。現在は麹町の本店のほか、東京駅、京橋、浅草橋、名古屋と店舗数を増やし、女性や外国人にも人気のラーメン店です。看板メニューの「ベジソバ」を中心にラーメンの美味しさと魅力を伝えています。

ソラノイロ
住所:東京都千代田区平河町1-3-10 ブルービル本館1B
電話番号:03-3263-5460
営業時間:【月曜~金曜】11:00~22:00(L.O.)
【土曜・祝日】11:00~15:00(L.O.)
定休日:日曜

カラフルな盛りつけでインスタ映え。女性に人気の冷やし中華

東京・麹町にあるラーメン店「ソラノイロ」の看板メニューは「ベジソバ」と「ビーガンベジソバ」。野菜のみで調理したラーメンで、菜食主義の客層にも人気の商品です。また、“桃ラーメン”や“トマトとスイカのつけ麺”など、果物をベースにした「季節の限定ラーメン」は、他店にはない独創的なメニューばかり。
そのなかでも夏に人気を博しているのが「冷やし中華」です。ひとくちに「冷やし中華」と言っても様々。ソラノイロならではのこだわりはどこにあるのでしょうか。

「当店の『冷やし中華』は、酢醤油ベースのスープ、タピオカを練り込んだ麺に、ゴマダレを和えたトマト、黄色パプリカ、ゴーヤ、レンコン、鶏チャーシュー、グレープフルーツをのせています。食感も豊かでカラフルな盛り付けなので女性客にも好評ですね」

取材に応えてくれたのは、店長の辻慶謙さんです。彩り豊かでビジュアルもよく、インスタ映えすることから、SNSに投稿するお客様が多いと言います。麺はモチモチとしていてコシが強く、冷麺に近い食感。中華スープの酸味との相性も抜群でさわやかな味わいがあります。

店内はラーメン店というよりもカフェのような雰囲気で、女性客はもちろん、外国人客も入りやすい内装です。

グレープフルーツの苦みがアクセント。フルーツ×ラーメンの可能性



ソラノイロの「冷やし中華」の特徴は、何と言ってもグレープフルーツが入っていること。グレープフルーツの苦みがアクセントとなることで、ゴマダレの甘みと酢醤油の酸味が際立ちます。

「以前は、イチゴを入れていたこともありましたが、いろいろと試した結果、現在はグレープフルーツを入れています。重視しているのは旬のものを使うこと。フルーツとラーメンはあまりない組み合わせですが、かつてない美味しさを提供できる可能性がたくさん残されています。苦労したのは、果物の甘さと他の食材をどのように調和させるかということ。『冷やし中華』の場合はゴマダレで和えることで、味に統一感を持たせています」

肉、野菜、果物は産地直送を徹底し、新鮮かつ、旬な食材を提供している「ソラノイロ」。創業以来変わらないのは、日本の国民食ともいえるラーメンの美味しさと魅力を伝えるとともに、“食材の生産者と消費者の橋渡しがしたい”という想いでした。

「ラーメンと言えば、醤油や味噌、豚骨など、大まかなカテゴリーが決まっていますが、既成の概念にとらわれることなく、新感覚のメニューをこれからも開発していきたいですね。そうすることで、少しでも農業や地域を元気づけるお手伝いができたらと思います」

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一龍

東京・下北沢にある「一龍」は、創業35年の老舗ラーメン店。看板メニューである「中華そば」は、福井県の敦賀ラーメンがベースです。親子2代にわたって守り続けている味わいは、濃厚でいて優しく昔ながらのもの。古くからのリピーターに愛され続ける名店です。

一龍
住所:東京都世田谷区北沢2-30-11 北沢ビル1F
電話番号:03-3466-1671
営業時間:11:00〜22:00(※麺売り切れ次第営業終了)
定休日:無休

冷たさとサッパリとした味わい。つけ麺で楽しむ冷やし中華

北沢駅近くにある「一龍」は、福井県の敦賀ラーメンを提供する都内では珍しい店です。敦賀ラーメンとは、豚骨・鶏ガラがベースのスープに、多加水の縮れ麺、メンマ、チャーシュー、紅しょうががのったもの。その流れを汲んで、先代店主の坂井良三さんが独自に開発した「冷やし中華」は、夏季限定の人気商品です。

「当店で少しでも涼しさを味わっていただきたい。そんな思いで創業当初に考え出したのが『冷やし中華』でした。敦賀ラーメンでもおなじみのメンマ、チャーシュー、紅しょうがに加えて、キュウリ、もやし、ねぎをのせたつけ麺の商品です。麺の下には大きめのサイズの氷を敷いているので、麺がぬるくなったり、くっついたりすることはありません」

一般的なものとは違い、つけ麺スタイルで楽しむ一龍の「冷やし中華」。つけ汁は醤油だれをベースとしていますが、直搾りのレモン果汁が入っていて、優しい酸味が特徴です。

「麺は、『中華そば』と同じ多加水の縮れ麺。ただ、『冷やし中華』は柔らかくして冷やさなくてはいけないので、茹で時間は長めにとっています。ツルツルとした食感で、美味しく食べられますよ」

新しさよりも、今の味を守り続けていきたい


中華そばやチャーシュー麺など、すべての麺料理が+200円で大盛りにできる一龍ですが、「冷やし中華“大盛り”」を注文するお客様も多い、と坂井さんは言います。

「他店の大盛りサイズは麺1.5玉が一般的だと思いますが、当店の大盛りはどのメニューも+200円で麺2玉。大盛りを頼むお客様には、しっかりとお腹いっぱいになってほしい。『冷やし中華』はさっぱりしているからか、女性やお子様からも大盛りの注文をよくいただいていますよ」

注文を受けてから料理を提供するまでの時間が短いのも「一龍」のこだわりのひとつ。それを可能としているのは、開店前の仕込みを丁寧に、且つ時間をかけておこなっているためです。

「いつも念頭に置いているのは、お客様を感動させるにはどうすればいいのかということです。熱いラーメンは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに。どのメニューも最高の状態で提供しなくてはいけません。この店も35年目ですが、ごひいきにしてくれるお客様はたくさんいらっしゃいます。新しいものを取り入れていくというよりも、今の味を守り続けていきたい。そして、多くの人に当店の味を楽しんでいただきたいですね」

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鶏そば十番156 麻布十番本店

東京・麻布十番に店を構える「鶏そば十番156」。ラーメン店でありながらもカフェやバルのような雰囲気で、昼は近隣に住む外国人客や女性客、夜はビジネスマンが多く訪れます。「飲んで、つまんで、麺で締める」をコンセプトにビールや日本酒、ワイン、つまみも多種揃えています。

鶏そば十番156 麻布十番本店
住所:東京都港区麻布十番2-1-10
電話番号:03-3453-1560
営業時間:11:00~28:00
定休日:無休

細麺と太麺を選べて、サラダ感覚で楽しめる冷やし中華

東京・麻布十番に本店を構える「鶏そば十番156」の人気メニューは「純鶏そば」。九州産の鶏ガラ、モミジ、ネックと厳選した野菜を6時間煮込んで鶏の旨味とコラーゲンだけを抽出した“純国産鶏白湯スープ”が特徴のラーメンです。このほかにも、「担々麺」「チーズまぜそば」「純濃つけそば」など、すべてのお客様を満足させるために幅広いラインアップを揃えています。なかでも夏季限定の「冷やし中華」は女性客からも好評のメニュー。その魅力を店長の呉承浩さんに語ってもらいました。

暑くて食欲が落ちる夏にもラーメンを楽しんでいただきたい、という思いから販売を始めたのが『冷やし中華』でした。冷たくツルッと味わえるのはもちろんのこと、サラダ感覚で楽しめるメニューです」

一般的な冷やし中華といえば、細切りにしたハムや錦糸卵、キュウリがのっていますが、「鶏そば十番156」の冷やし中華は、麺を覆うように鶏チャーシュー、半熟たまご、生玉ねぎ、ネギ、水菜、カイワレダイコン、レモンが添えられ、トップにはプチトマトがのっています。

「注文の際には、太さ約1.3センチの細麺と約2.1センチの太麺のどちらかを選べます。のどごしがよく、つるりとした食感で女性に人気の細麺。極太でモチモチとしていて、ソースとの絡みが抜群の太麺。どちらもストレート麺で滑らかにすすれます」

ビジュアルでも満足させる、透明感と涼しさを感じさせる皿

ソースは、たまねぎ、にんじん、にんにく、生卵、擦りゴマ、醤油、酢などをブレンドした、サラダのドレッシングに近い感覚です。

「冷やし中華を販売して3年目ですが、毎年、少しずつ配分を変えて、コクを残しつつもスッキリとした食べやすさを追求しています。また、レモンを搾れば全体に酸味が広がり、爽やかな味わいを楽しむこともできますよ」

冷やし中華の皿は透明感があって涼しさを感じさせるデザイン。注文があるまで冷凍庫に入れて冷やしています。

「当店は、料理のビジュアルにもこだわりがあります。たとえば、純鶏そばなどの温かいメニューの丼は、開孔部が手前に向けて斜めにカットされていて、反対側の縁に当店のロゴが入っています。これは、正面が見えやすくインスタ映えするデザインを意識したもので、着丼してからスマホで撮影するお客様も多いですね。リピーターの芸能人がSNSで当店を紹介してくれることもあるんですよ」

国内のほか、スペインのマドリードにも出店している「鶏そば十番156」。今後はさらなる海外進出を視野に入れつつ、地元住民に愛され続けるお店を続けていきたいと呉さんは言います。

「麻布十番本店は、国籍、性別、年齢の幅が広い客層ですが、どんなお客様であっても、誠心誠意の接客をするのみです。今後も私たちのつくるラーメン・空間・接客を通して、お客様を“イチコロ(156)”にしていきたいですね」

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東京味噌ラーメン鶉

JR総武線武蔵境駅から徒歩5分の場所にある「東京味噌ラーメン鶉」は、2015年1月にオープンするや、「東京ラーメン・オブ・ザ・イヤー」の味噌ラーメン部門新人賞で2位になった実力店。夏季限定の「味噌冷やし中華」は連日、売り切れになることが多い人気商品です。

東京味噌ラーメン鶉
住所:武蔵野市境2-3-20
電話番号:0422-27-8383
営業時間:【月曜・火曜・水曜・金曜】11:30~14:30/18:00~22:00 【土曜・祝日】11:30~15:00/18:00~21:00【日曜】11:30~15:00
定休日:木曜

味噌の優しい甘みを活かしつつ、夏に食べたくなるメニュー

「東京味噌らーめん鶉」は、自家製手揉み麺の味噌ラーメン専門店。東京都中野区にある老舗味噌問屋「あぶまた」が提供する味噌銘柄「むさし野」に、優しい甘さとスープに溶けても残るわずかな食感が特徴の信州産「浮糀味噌」をブレンドしています。

看板メニューはもちろん「みそラーメン」ですが、夏季限定の「味噌冷やし中華」も大好評。その人気の秘訣を、店主の近藤龍臣さんが教えてくれました。

「味噌ラーメンは夏になるとどうしても売り上げが下がります。じゃあ何をするかと考えたのが冷やしラーメン。1年目は辛味噌の冷やしラーメンを販売していたのですが、辛いものは人によって好き嫌いがあります。そこで、味噌の優しい甘みを活かしつつ、夏に食べたくなるメニューとして開発したのが『味噌冷やし中華』でした」

あんかけのようにとろりとした「味噌冷やし中華」のスープは、固まりすぎず、サラサラにもならないように、独特の方法でとろみの調整をしています。

「スープづくりで気をつけているのは、冷蔵庫のどの位置で保存するかということ。手前に入れればサラサラ、奥に入れれば固まりすぎてしまうんです。固まりきっていない場合は、そのまま冷蔵庫に入れて、固まりすぎた場合は昆布水を入れて柔らかくしています。昆布水を足すことで旨味も出るので一石二鳥ですね」

辛さと香ばしさが加わる自家製辣油で“味変”

麺は手揉みの極太縮れ麺。とろみのあるスープとの相性は抜群です。弾力もあり、うどんに近い食感が特徴です。

「麺の上には、もやし、錦糸卵、ワカメ、細切りにしたチャーシュー、きゅうりの千切りを盛りつけて、トップにはプチトマトを添えています。『味噌冷やし中華』の仕込みで一番大変なのが、これら具材の調理。朝は時間がないので、一つ一つの食材を夜の間に切っておかないと間に合いません。営業時間終了後、いつも遅くまで仕込みをして、翌朝も仕込みの時間に充てています」

また、別皿で添えられた自家製辣油を絡めることで、冷やし中華の“味変”が可能。ネギ、ニンニク、たまねぎなどで香りをつけた油に唐辛子を入れて調理しているため、辛さと香ばしさが加わります。

「味噌冷やし中華」を販売して2年目の鶉。昨年と味はほとんど同じでも、味噌ダレもスープの配合も新しいものにしていると近藤さんは言います。

「当店の“東京味噌ラーメン”は「むさし野」の味噌を使うのが前提条件。ただ、これからも味噌の配合を変えたり、新メニューを開発したり、いいものはどんどん取り入れていきたい。来店してくれるお客様全てを大切にして、少しずつ上を目指していきたいですね」

店名でもある“鶉”は、温かさを求めてやってくる渡り鳥。これからも10年20年と、お客様に味噌特有の甘く優しい温かさを届けていくのではないでしょうか。

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ひとくちに「冷やし中華」といっても、今回取材した4店舗では「彩り」「つけ麺」「サラダ感覚」「味噌」と特徴はそれぞれ。一方で共通していたのは、看板メニューに劣らぬこだわりと美味しさを提供していること。期間限定の商品とはいえ、ひとつメニューが増えれば、当然、仕込みやオペレーションの時間と手間は増えますが、その手間ひまを厭わない情熱こそが、お客様を満足させるのに不可欠な要素なのではないでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年9月)のものです

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