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ボリューム・栄養・魅力も満載!スタミナラーメン

ご当地ラーメンとしても国内各所で熱い支持を集める「スタミナラーメン」。ニラやニンニクなど、疲労回復にも役立つ食材がふんだんに使われているため、「おいしいラーメンを食べて元気になりたい!」と考える若年層を中心に人気のラーメンです。今回はスタミナラーメンで注目を集める都内3店を取材し、メニュー開発における工夫や考え方をお聞きしました。

元祖スタミナ満点らーめん すず鬼

人気ラーメン店の多いJR中央線沿線の三鷹で話題の「元祖スタミナ満点らーめん すず鬼」は、夜間営業限定のスタミナラーメン専門店です。昼間は「鶏こく中華 すず喜」を営業しており、昼と夜で違う顔を持つ二毛作ラーメン店です。

元祖スタミナ満点らーめん すず鬼

住所
東京都三鷹市下連雀3-28-21 公団三鷹駅前第2アパート B1F
電話
070-2797-8807
営業時間
[月~木]18:00~21:00
[金・土]18:00~23:00
※「鶏こく中華 すず喜」は11:00~15:00の昼営業のみ
定休日
日曜日
三鷹駅から徒歩3分の「元祖スタミナ満点らーめん すず鬼」

千葉三大ラーメンなどを参考にした独特のスープ

スタ満ソバ(税込900円)
店長の鈴木信介さん

23歳で独立後、「麺酒やまの」など数々の人気店を手掛けてきた鈴木信介さん。そんなラーメン界の寵児が“スタミナ”に特化して創業したのが「元祖スタミナ満点らーめん すず鬼」です。

看板メニューである「スタ満ソバ」は、ニンニクの利いたスープに豚バラ肉・ニラ・玉ねぎといった具材もたっぷり。そこに歯応えも楽しめる平打ち麺が合わさったスタミナ満点のメニューです。この「スタ満ソバ」の開発経緯とその狙いについて、鈴木さんにお聞きしました。

「当初は醤油ラーメンや塩ラーメンなどを販売する『鶏こく中華 すず喜』としてランチタイムのみの営業でした。当時から店の経営に余裕が出てきたら、昼とは全く違った新しいラーメンをディナータイムに提供したいと考えていたんです。そこでアイデアとして思い浮かんだのが、ご飯にも合う、食べた人みんなの元気が出る『スタ満ソバ』でした」

極太の平打ち麺

「スタ満ソバ」を開発するにあたって苦労したのは、親しみやすさとインパクトの両立。振り切り過ぎればコアな支持を集めても客層は絞られ、おとなし過ぎてはリピーターを獲得できません。そこで参考にしたのは、千葉三大ラーメンに名を連ねる「竹岡式ラーメン」と「アリランラーメン」、そして、熱狂的なファンと幅広い人気の両立を実現している「二郎系ラーメン」でした。

「スープ製法は、竹岡式ラーメンとアリランラーメンの良さをそれぞれ活かした形です。竹岡式ラーメンではおなじみの宮醤油を使い、チャーシューを煮込んだ醤油ダレをゆで汁に入れ、肉の旨味のまろやかな味わいを引き出すスープ製法を取り入れました。そこに、アリランラーメンの特徴ともいえる肉、玉ねぎを炒めた甘味、ニンニクの風味、ラー油の辛味もプラス。香りの良さを引き出すために香味油も入れています」

スタ満方程式=ラーメン+野菜炒め+ライス+生卵

二郎系から参考にしたのは、麺の食感と無料トッピング。小麦粉オーションを使った自家製麺は、極太の平打ちで力強い歯応えがあります。また、注文時にはニンニク・ショウガ・背脂のトッピングを追加することも可能です。

「スタ満ソバ」のほか、「辛いスタ満ソバ」や「汁なし」「つけ満」と、さまざまなスタイルでスタミナ満点の味を楽しめるのが「元祖スタミナ満点らーめん すず鬼」の特徴のひとつ。そして、この店のファンにとってお馴染みの食べ方は、「スタ満ソバ」の肉野菜炒め的な具材をライスと共に楽しむスタイルです。この食べ方のヒントとしたのは、アリランラーメンから着想を得た具材でした。

「アリランラーメンはニラ、ネギ、玉ねぎ、ニンニク、豚肉など、スタミナ満点のトッピングが特徴です。当店ではこれらの具材を大きめに刻んでいます。食感が残っていた方がご飯のお供としても楽しみやすいですからね。おすすめは、『スタ満ソバ』とご飯、生卵を一緒に注文すること。麺を生卵に和えれば、まろやかな甘みが味わえます。リピーターには自分だけのおいしい食べ方を見つけてほしいですね」

現在は三鷹本店のほか、赤坂や熊谷にもフランチャイズ店を構え、11月には狭山ヶ丘にも支店をオープンする「元祖スタミナ満点らーめん すず鬼」。今後は全国各地で多くのお客様に自慢の味を届けたいと鈴木さんは言います。

「『スタ満ソバの味をもっと多くの人に広めたい』という人が当店に修業に来て、それぞれが全国各地でこの味を広めていってくれたらうれしいですね。ただ、食を通して人を感動させるのは簡単なことではありません。これからも焦らず地道にコツコツと『スタ満』の味を多くの人に届けていくつもりです」

広くゆったりとした空間の店内
トッピングや組み合わせを楽しめるメニュー

麺覇王

東京・本郷三丁目駅に店を構える「麺覇王」(メンバーワン)は、医食同源をコンセプトにした広東料理・薬膳料理専門店です。テレビ番組やグルメサイトの取材も多く、健康志向で美味しい味を求めて全国各地から多くのお客様が連日来店しています。

麺覇王

住所
東京都文京区湯島2-31-17
電話
03-5844-6916
営業時間
11:30~14:30/17:00~22:00
定休日
日曜日
東京メトロ本郷三丁目駅から徒歩6分の「麺覇王」

10種類以上の薬膳をブレンドした「唯一無二薬膳スタミナ麺」

「唯一無二薬膳スタミナ麺」(税込1,450円)
店長を務める松岡添増さん

本郷三丁目駅近くにある広東料理・薬膳料理専門店の「麺覇王」は、薬膳入りのメニューが充実している人気店です。なかでも「唯一無二薬膳スタミナ麺」は料理人として66年のキャリアを持つ松岡添増さんが自身の経験を濃縮させて開発した自慢のメニュー。ピリッとした旨辛スープには10種類以上の薬膳がブレンドされていて、栄養満点のスープが特徴です。

「食べる人すべてが元気になってほしい、頑張ってほしい」という願いから、薬膳を使ったラーメンには「スープは完飲すること」という独自のルールが設けられています。医食同源というコンセプトを大切にする松岡さんに、「唯一無二薬膳スタミナ麺」が愛され続ける理由について語ってもらいました。

薬膳との相性が良いこだわりの卵麺

「『麺覇王』では60種類以上の薬膳を常備しています。これらの薬膳は風邪、疲労、だるさ、便秘、冷え性などの改善のほか、新陳代謝の促進、美容など、真実の薬膳の効果があるんです。そのなかから相性のいい薬膳を組み合わせて調理しているのが『唯一無二薬膳スタミナ麺』です。スープを飲んで汗びっしょりになるお客様も多いですが、それは体の中の毒が洗い流されたということなんです」

ショウガ、ニンニク、唐辛子の入ったスープはほんのりとした辛さ。砂糖や化学調味料は一切使わず、辛味のほかに甘草の甘み、ビタミン豊富な陳皮(みかんの皮)がブレンドされた味わいは、口に残らない爽やかさがあります。

「辛さは注文時に3段階から選べますが激辛にはしません。唐辛子の役割はスープに柔らかい香りを出して薬膳のおいしさを引き出すこと。栄養満点のスープを最後までおいしく召し上がってほしいですね」

栄養素を最大限に生かす、野菜の切り方・選び方

「唯一無二薬膳スタミナ麺」は、豊富な薬膳はもちろんのこと、エビ、イカ、豚肉、レバー、玉ねぎ、白菜、ピーマン、クコの実、シイタケ、ニンジンなど、具材のボリュームも満点です。厳選されたこれらの食材は、栄養素を最大限に生かす形で調理されています。

「ピーマンはハウス栽培ではなく太陽の下で育ったものを使っています。人間は日光浴だけでなく、太陽の下で育った野菜を食べることでも活力を得ることができるんです。また、イチョウ切りにしたニンジンは端に少しだけ切れ目を入れています。これはニンジン本来の栄養素をできるだけ逃がさないようにするため。それぞれの食材が元来持っている豊富な栄養をスープとともにおいしく味わうことができますよ」

こだわりの卵麺は優しい歯応えで、噛むたびに口のなかで広がる自然な甘さは、薬膳との相性も抜群です。

「唯一無二薬膳スタミナ麵」のほか「オリジナル薬膳カレー」や「滋養食赤担々麵」など、おいしさと栄養を両立させた「麺覇王」の薬膳料理の数々。その味を求めて、連日全国各地から多くのお客様が訪れます。

「私が日本に来てから48年経ちます。長い間店を続けていて今も変わらず嬉しいのは、食べた皆様が感謝を伝えに来てくれること。私にとっては店に訪れるお客様はみんなファミリー。これからも多くのお客様を元気づけて、その背中を押していきたいですね」

1988年の創業当初から変わらぬその味で、たくさんの人に感動を与えている「麺覇王」。今日も多くのお客様においしさと健康を提供しています。

テーブル席もカウンター席も充実した店内
店内にも張り紙で訴求

スタミナらーめんガリレオ

東京・早稲田大学の近くに店を構えていた「つけ麺えん家」が、2022年7月に「スタミナらーめんガリレオ」としてリニューアルオープン。スタミナラーメン専門店となる同店は、開店直後から早くもSNSなどで話題を集めています。

スタミナらーめんガリレオ

住所
東京都新宿区西早稲田1-9-8
電話
03-6233-9143
営業時間
11:30~21:00(土日は20時閉店)
定休日
不定休
都電荒川線早稲田駅から徒歩2分の「スタミナらーめんガリレオ」

ガリレオが目指した“こってり”の方向性

スタミナらーめん(税込890円)
店長の白石豊土さん

早稲田大学早稲田キャンパス近くにある「つけ麺えん家」が、2022年7月18日に「スタミナラーメンガリレオ」としてリニューアルオープン。ボリューム満点でこってりとしたスタミナラーメンは、学生を中心に早くもリピーターを獲得しています。

それまで、つけ麺や台湾まぜそばが看板メニューだった店を、なぜスタミナラーメン専門店にリニューアルしたのか。店長を務める白石豊土さんにお聞きしました。

「早稲田大学近くでラーメン店を続けるためには、授業があるシーズンにいかに多くのお客様に来店いただくか、学校が休みのシーズンはどうやって赤字を防ぐかを考えなければなりません。そのためには、もっと若者のニーズにフォーカスした“がっつり系ラーメン”をつくろうと思いました。そうした考えのもと生まれたのが、濃厚な味わいが特徴の『スタミナらーめん』でした」

濃厚なスープに負けない存在感ある麺

学生街である早稲田で人気を集めるのは、油そばや家系ラーメンなどの“こってり系ラーメン”です。これらの店に負けないため、白石さんがまず考えたのは、“こってりの方向性”でした。

「当店が目指すのは、ご飯と相性がよく、それでいてス―プだけでは飲みきるのが難しいくらいのこってり感。日々味を調整しながら、カエシの塩分濃度には特に気を配っています。カエシの軸となる味付けは、ちば醤油から仕入れた醤油です。いくつか醤油を試してみて一番しっくりくる塩味でした」

歯応えも楽しめる“二郎系”の麺は、「つけ麺 えん家」の頃から付き合いのある村上朝日製麵から仕入れたもの。濃厚なスープに負けない食べ応えがあります。

ご飯との相性も抜群のバラ肉&腕肉チャーシュー

辛いスタミナらーめん(税込930円)

着丼してまず目を引くのは、一面に降り注がれた胡椒の量。スープの強さをさらに引き立てるだけでなく、麺、たまねぎ、ニラ、チャーシューの旨味も引き出します。

「チャーシューは豚のバラ肉と腕肉を使っています。腕肉を食べたことがないという人も多いかもしれませんが、その味わいはロースと変わらずさっぱりとしていて脂身もほど良く、ロースと比べてもローコストです。スープの味もしっかりとしみ込んでいて、ご飯との相性も抜群ですよ」

「スタミナらーめん」と共に人気を博す「辛いスタミナらーめん」は、美味しさと辛さが両立した旨辛スープが特徴です。

「『辛いスタミナらーめん』は韓国産の唐辛子でスープの赤みを出しています。国産の唐辛子と比べて少しだけ甘みがあるのが特徴で、辛さは少し控えめです。また、『つけ麺 えん家』のころから使用していた、中国四川産の15種類のスパイスがブレンドされた香辛料も加えています。カレーのような香ばしさがあって、スープの味わいに奥深さが出るんです」

学生を中心とした若い客層に「スタミナらーめんガリレオ」の味を受け入れてもらうためには、日々の味の追求はもちろんのこと、お客様に目新しさを持ってもらうことも大切であると白石さんは語ります。

「今後は現在のメニューの味をブラッシュアップしつつ、スタミナつけ麺や汁なしスタミナ麺、定食メニューなど、レギュラーメニューを増やすつもりです。将来的には早稲田の学生から『がっつり系=ガリレオだよね』と言ってもらえるような店に育てていきたいですね」

奥行きのある店内。卓上には調味料も充実
トッピングやおすすめの食べ方を記載した「ガリレオルール」の看板

今回取材した3店舗では、ご当地ラーメンに対する造詣、薬膳の知識、その土地のニーズに合わせた味付けなど、スタミナラーメンを開発する際の着想はそれぞれでした。一方で共通していたのは、「食を通じてお客様を元気づけたい!」という熱い想い。こうした姿勢をもって接客することこそがリピーターを獲得するための近道と言えるのではないでしょうか。スタミナラーメンの勢いは夏以降も衰えることなく続きそうです。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2022年08月)のものです