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パンケーキブームと並走?!フレンチトーストとエッグベネディクトが人気

海外発の人気店など専門店が続々とオープンし、ブームとなっているパンケーキ。
それと並走するようにして女子たちの熱い視線を集めているものがある。フレンチトーストと、エッグベネディクトだ。
昨年末東京・新宿にオープンした米ニューヨークの実力派レストラン「サラベス」の日本第1号店では、早朝開店前からこれらのメニューを求める人で連日行列が絶えない。
パンケーキと同様、かつてアメリカンスタイルの朝食の定番というイメージだった、フレンチトーストとエッグベネディクトを、わざわざ食べに行きたいと女子たちに思わせる理由は何か。これらの料理に共通する魅力を探るべく、専門店とホテルを取材した。
日常的に食べたい優しい味わい

JR新宿駅南口の駅ビルに昨年11月オープンした「サラベス ルミネ新宿店」。経営はイタリアンレストラン「カプリチョーザ」などを手掛けるWDI JAPAN(東京・港区)
開店前から整理券を求める人などで行列。
客層は女性が多い
 
白を基調とした明るい店内。キッチン小物などを配置した、女性好みのインテリア
JR新宿駅南口の駅ビルで通勤ラッシュも冷めやらぬ朝8時半、開店30分前からすでに行列ができている「サラベス ルミネ新宿店」。同駅ビルのほかのショップが11時の開店を待つなか、別世界のような賑わいだ。
列をなしているのは、開店すぐの入店を待ち侘びる人々のほか、整理券を受け取る目的の人々も。整理券には、入店可能時刻が記載されているので、その時間まで並び続ける必要がない。東京ディズニーランドの「ファストパス」と同じ方式だ。口コミで広がったのか、「ランチに利用するために朝並ぶ」という技を使う人も増えている。
「アイドルタイムがない」(WDI JAPANマーケティング部マネージャー大林鈴さん)というほど、64席の店内は常に満席で、その多くを女性客が占める。大抵の女性たちは2~4人で来店し、パンケーキ、フレンチトースト、エッグベネディクトを頼んでシェアして楽しむ。
「サラベス」は、本店含め10店舗あるニューヨークでも、現地のグルメガイド本「ザガット・サーベイ」のデザート部門1位に輝くなど話題の人気店だが、この「サラベス」の生みの親、サラベス・レヴィーン自身が、ニューヨークの女性にとって憧れの存在だという。ペストリーシェフとしてだけでなく、家庭の主婦としても、魅力的だという評価がある。
サラベス・レヴィーン(以下サラベス氏と表記)が開業したのは40歳を目前にしてからで、それまでは家事の一環でパンを焼き、料理を作っていた。その味が評判となり、周りの勧めで小さなベーカリーをオープン。後にレストランを始めることとなったのだ。フレンチトーストやエッグベネディクト、そしてこれらに使うパンも、サラベス氏が家庭の味として、長年作り続けてきた中で完成したレシピなのだ。
サラベス氏の料理は家庭料理が基本となっているため、日常的に食べることを前提とした優しい味わいとなっている。そのためにサラベス氏が重視しているのは、食感などの「軽さ」。看板メニューのフレンチトーストには「フラッフィー(=ふわふわ)フレンチトースト」と名付けられてもいる。食感だけでなく、油分がしつこくないことなどもそうで、調理法の細部に「軽さ」を出す工夫がある。
例えばフレンチトースト。使うパンはユダヤ教の祝祭日に食べられる「ハッラー」という卵風味のある軽い食感の編みパンだ。卵液は、1対1の割合で配合した牛乳と卵だけ。砂糖を入れないことで、パンや素材自体の風味を活かす。卵液にパンを浸すのは、天ぷらの衣をつけるときのように、くぐらす程度で、澄ましバターをひいた鉄板で焼き上げた後も、パンの中心部はパンそのものの味が活きている。付け合せには、若干の塩を入れて白っぽくなるまでホイップしたバター。口当たりをやわらかくする。
エッグベネディクトにも様々な工夫がある。土台となるイングリッシュマフィンは、フタをせず焼き上げるのでふんわりと仕上がる。ベーコンは脂肪分が多いのでグリルしたハムを使う。オランデーズソースに使うバターは、常温の固まりのまま卵黄と合わせる。常道の澄ましバターにしてからだと、ソースの仕上がりに油分のしつこさが出てしまうからだ。
どちらのメニューも、脂っこさがなくあっさりとしていて、甘さや塩気も控えめだ。しかし、食材自体の風味や食感の軽さが楽しめ、物足りなさを感じない。一口食べればどんどん口に運びたくなる優しい味わいだ。

「ふわふわ」という名の「フラッフィーフレンチトースト」(1200円)。軽い食感と優しい味わいが特徴
「クラシックエッグベネディクト」(1400円)。イングリッシュマフィンの上に、グリルハム、スチームエッグ、オランデーズソース、パプリカなどがのっている。ナイフを入れると卵黄がソースのように流れ出る

ホテルの魅力をふんだんに詰め込んだ「至福の朝食」として提供

厚みのある「究極のフレンチトースト」(1900円)は食パン半斤分を使用。きめ細やかでふわふわの食感
香り豊かな黒トリュフがふんだんに使われ、贅沢な気分が味わえる「エッグベネディクト」(2500円)。ハーフサイズ(1300円)での提供もある
 
横浜市西区の「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」内のレストラン「オーシャンテラス」では、「至福の朝食」と銘打ち、「究極のフレンチトースト」(1900円)と「エッグベネディクト」(2500円)を提供している。
「当ホテル開業21周年の記念プロモーションの一環として、ホテルならではのホテルらしい朝食を味わっていただきたいという思いから企画しました」(同ホテル広報担当川井優子さん)。提供を始めたのは昨年で、ブームになる前だ。宿泊客以外の人の利用や問い合わせがあり、話題となっている。
食材は、牛乳とハムは県内産、野菜は旬の地場もの、卵はコクのあるヨード卵など。「特に朝食は、体にいいものをゆったり優雅に召し上がっていただきたい」というシェフの思いが込められた厳選食材だ。
製法も、ホテルならではの手間暇がかけられている。
フレンチトーストは5時間かけて専用につくられた食パンを半斤分使う。これを牛乳、卵、和三盆糖を合わせた液に半日浸し、オーダー後、フライパンで焦げ目をつけ、さらにオーブンで中まで火を通す。中心までしっかりと火を通すのがポイントだ。できあがりは、厚みがあってふわふわで、ほのかに甘い。「これまでのフレンチトーストの概念が覆されました」とその食感と深い味わいに驚く客も多い。
エッグベネディクトも「至福の朝食」という名がふさわしく、オランデーズソースと仕上げのトッピングの両方に、黒トリュフが使われている。卵と黒トリュフの組合せは、フレンチの古典料理をヒントにしたという正統派の味わいだ。一口頬張ると、トリュフやハムなど食材の風味が口いっぱいに広がる。

専門店の味は旬のフルーツと自家製ジェラートの絶妙な組み合わせ

平日の午後の店内は近所の主婦たちで満席。フレンチトーストにハンバーグやキッシュを合わせた食事メニューも人気
季節限定メニューは、旬のフルーツを使った5種類ほどのメニューが揃う。色鮮やかで立体感のある繊細な盛り付けが好評
 
フレンチトーストを専門に提供する店もある。東京・目黒区の住宅街に3年前にオープンした「Haru and haru」は、ランチから午後のティータイムまで、近所の主婦を中心に賑わい、週末は専門店の味を求めて遠方から男女が訪れる。
同店のフレンチトーストに使用するパンは、近所のベーカリーに特注しているバゲット。これを長さ4センチの輪切りにし、卵、牛乳、少々のグラニュー糖を合わせた液にくぐらし、フライパンで焼いていく。バターを適宜投入して温度を一定に保ちながら焼くのがコツだという。
焼き上がったフレンチトーストには、自家製アイスミルクが添えられる。自家製アイスミルクは脂肪分5%のさっぱりとした味のジェラートなので、フレンチトーストに吸わせるようにして食べると、熱々のフレンチトーストとの温度差も楽しめ、口いっぱいにミルクの爽やかさと風味が広がる。
また、季節のフルーツやソースを使った繊細な盛り付けも好評。フレンチのシェフの経験があるオーナーシェフの大谷春斗さんの成せる技だ。
同店のフレンチトーストのレシピは、大谷さんがフレンチのシェフをしていた時に、レストランで余ったバゲットなどを用いて、毎日のように作り続けて完成させたものだ。客層は主婦が多いこともあり、よく作り方を訊かれるという。店内のメニューブックでは、作り方のポイントが惜しげもなく公開されていた。

季節限定メニューの「清見オレンジと杏仁ソースのフレンチトースト」(1350円)。自家製アイスミルクが添えられている
オーダー後、さっと卵液に浸したバゲットは、バターを適宜投入しながらフライパンで焼く。片面ずつじっくりと焼き、中はふわっと、外はカリッとした食感に仕上げる
バターや卵液のしつこさがなく、あっさりとした味わいで、バゲット自体の食感や味が活かされている

フレンチトーストとエッグベネディクトはパンケーキと同じく、おやつにも食事にもなる。また、どの家の冷蔵庫にも大抵入っている卵と牛乳が基本材料とあって、作り方さえ覚えれば、家庭料理の定番とも成り得るという点も共通している。そしてその家庭料理が各家で異なるように、専門店やホテルの味も、それぞれの魅力が詰まった個性あるものに仕上がっている。女性たちは、店ごとの味の違いを感じ取ることを楽しみに、そして、家庭でも実践できる作り方のコツを求めて、話題の店に足を運んでいるのかもしれない。

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