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注目を集める食パンを使用したスイーツ

新しい商品の開発でお悩みではないですか。一般的な考え方に縛られたままでは難しいですが、例えば「異なるジャンルの食品を開発する」といった切り口で考えれば発想は広がるはずです。今回は主食の食パンをスイーツに生まれ変わらせる商品開発の事例をご紹介します。
富士屋ホテルの「食パン」を使用した「富士屋スイーツ」

富士屋ホテル外観
富士屋ホテルは神奈川県箱根町の1878年創業の老舗ホテルで、和洋折衷の建物は重要文化財に指定されています。東京から一時間程の箱根町は、温泉や芦ノ湖、美術館などが人気のリゾートとして、国内外から年間1900万人の観光客が訪れます。富士屋ホテルのラウンジ「オーキッド」や直営ベーカリー&スイーツ「ピコット」は、宿泊客だけでなく日帰り観光客の利用も多い有名店です。
富士屋ホテルではラウンジ「オーキッド」のほかチェーンの計4店舗で、「ピコット」の食パンを使用した夏の期間限定スイーツを展開しています。
ホテル正面玄関
ラウンジ「オーキッド」
クラシックで、池を配した庭園をガラス越しに眺めながらくつろげます。客席は35席。
ホテル庭園
ラウンジ「オーキッド」 のアップルパイ
しっとりと煮詰めた紅玉りんごパイに包んで焼き上げており、リピーターが多い一品です。
直営ベーカリー&スイーツ「ピコット」
気温や湿度にあわせて日毎に製法を調整するなど、伝統の製法で丁寧にパンを焼き上げています。
「ピコット」の食パン
箱根の名水「姫の水」と同じ源泉の水を使用しています。


プロジェクトチーム「F-STYLE PROJECT」
齊藤様(宿泊課)
食パンを使用したスイーツメニューは、富士屋ホテルチェーンの女性スタッフ5名のプロジェクトチーム「F-STYLE PROJECT」が中心となり開発が行われました。
今回はメンバーの齊藤様に話を伺いました。
F-STYLE PROJECTは2010年に立上げられ、2011年夏よりチェーン各店舗での共同企画として食パンを使用したスイーツを期間限定で展開しており、2013年夏の企画が第3弾になります。第3弾の企画としては、2013年6月21日から8月31日の期間、チェーンホテル内のラウンジ3店、小田原駅ビルダイニング1店の計4店にて食パンを使用した夫々のオリジナルスイーツを販売しています。
メンバーは企画・広報、システム、受付など様々な部署の所属で、夫々の部署の目線でお客様に喜んでいただけるサービスを提案しています。Fは富士屋、そして女性の形容詞femaleを表わし、女性目線でオリジナル商品の開発や快適な空間づくりなどの活動を行っています。

グループ4店舗のスイーツメニュー
富士屋ホテルチェーンの各店舗では、夏らしい爽やかな味わいで鮮やかな彩りのメニューを「食パンを使用したスイーツ」として提供しています。

富士屋ホテル
ラウンジ「オーキッド」
パン オ ショコラ桃のコンポート添え
2種類のチョコレートをブレンドした特製チョコレートドリンクを食パンに浸し、その上に生クリームと苺、ラズベリーを加えたシロップで煮た桃のコンポートをのせ、富士屋オリジナルバニラアイス、苺、ラスクをトッピングしました。
湯本富士屋ホテル
ラウンジ「ウイステリア」
Summer Beach-夏の恋-
ビーチパラソルをそっと覗くとフランボワーズソースの下には優しい味のミルクのムース。ムースを包むサクッとしたパンの食感とムースに混ぜこまれたしっとりとしたパンの食感が楽しめます。
箱根ホテル
ラウンジ「イル・ラーゴ」
富士屋ホテル食パンと湘南ゴールドのミルクレープ
神奈川生まれの柑橘「湘南ゴールド」のジャムを薄くスライスした食パンにしみこませ、蜂蜜入りの生クリームとクレープを幾重にも重ねたミルクレープに仕上げました。湘南ゴールドのさわやかな味わいと生クリームのやさしい甘みが口の中に広がります。
フュージョンダイニングF
(小田原駅前ビルの直営ダイニング)
Berry very フレンチトースト
中はふんわり、表面はサクッとしたフレンチトーストに、バニラアイス、苺のシャーベット、たっぷりのベリーをのせました。夏にぴったりのフレンチトーストです。


 こだわり抜いた高品質の食パンを食事系ではなく、人気リゾートのスイーツに使用している点が注目されています。富士屋ホテルの「伝統の食パン」と「スイーツ」を融合し、3回に亘る企画を通じて新たな富士屋ブランドを創造したと言えます。
 食パンを使用した店舗毎の独創的なレシピは、調理のバラエティが豊富な食パンを活用している点、女性目線でシリーズ化された取組みである事からも、今後企画が継続される中で一層広がりを見せるのではないでしょうか。

新ジャンルのスイーツとして確立された「ハニートースト」

 ハニートーストは、切れ目の入った1斤の食パンにホイップクリームやアイスクリーム、フルーツをたっぷりトッピングしたスイーツとして注目を集めています。食パン1斤のボリュームでの満足感と、ハチミツやフルーツなど甘味の満足感、2つの満足感で人気が集まるスイーツメニューです。毎日の食事として食べる食パンと異なり、1斤の食パンを仲間とスイーツとしてシェアする食べ方は、新しい食のシーンを創造したと言えます。ハニートーストの魅力を探ってみたいと思います。

ハニートースト(ハニトー)の誕生
ハニートーストは、株式会社ニュートンが展開するカラオケボックスで提供するスイーツとして開発され、同社では秋葉原の複合型施設にハニートーストの専門店「ハニートーストカフェ(ハニトーカフェ&ベーカリー)」を出店しています。同店の星野料理長に、ハニートーストについて伺いました。
ハニートーストというアイテム自体は、1斤の食パンにバター、ハチミツを塗ったシンプルなメニューとして元々存在していました。そこで同社では、池袋西口「パセラ1号店」を1992年12月に出店する際に「初代ハニトー」を発売し、ホイップクリームやアイスクリーム、フルーツなど様々なトッピングを加えたバラエティメニューで人気を博しました。「ハニトー」はパセラの登録商標で、星野料理長曰く「ハニートーストは新しいジャンルのスイーツを確立した」のだそうです。同社では「ハニトー博物館」というハニトーの歴史やメニューの樹形図を紹介するWEBサイト(Honey Toast Museum)も展開しています。


ハニートースト
星野料理長

専門店「ハニートーストカフェ」
カフェ入口
ハニートーストはカラオケボックスのメニューとして開発されましたが、あまりの人気でハニトー目的で来店されるお客様の為に、2012年11月秋葉原の「パセラリゾーツAKIBAマルチエンターテイメント」にハニトー専門店「ハニートーストカフェ(ハニトーカフェ&ベーカリー)」をオープンしました。同施設は館内全体が南国バリのイメージで統一されており、癒しとくつろぎをテーマとしたダーツバー、カラオケ、カフェ、ブライダルホールなどの「都会のオアシス」的な複合業態です。ハニトーカフェ&ベーカリーは1階にベーカリーコーナーを併設したスタイルで出店しています。
カウンターでハニトーやベーカリー製品、ドリンクをオーダーしてから30席あるカフェの客席でハニトーが出来上がるのを待ちます。カフェは外の光が差し込むガラス張りの壁が開放的で、店内のテーブルなどは白で統一され明るい雰囲気です。

カウンター
カフェ店内
ベーカリー


ハニートーストカフェの利用客
店頭ディスプレイ
「パセラリゾーツAKIBAマルチエンターテイメント」ではアイドルやアニメ、キャラクターのイベントが頻繁に開催され、また秋葉原駅近辺に喫茶店が比較的少ない事もあり、スイーツ主体のカフェでありながら客層は幅広いと言えます。午前中はハニトーを中心としたカフェ利用の常連の若い女性、午後はビジネスマンや年配の方、夕方や週末はアイドルイベントで来店する若い男性が多いようです。また電気街や上野に近い事もあり、外国人や地方から上京したお客様も多く来店しています。
カフェでのメインアイテムはハニトーですが、併設しているベーカリーコーナーで焼き込み調理パンなどのアイテムも販売しています。
また、イベントや結婚式二次会などでのコラボ企画を立案実行し、カフェ以外の目的で来店されたお客様にもハニトーカフェ&ベーカリーを楽しんでいただく「施設全体のブランドを高める複合的な営業戦略」を実行しているとの事です。

キャラクターのパン
人気のカプレーゼ、クワトロチーズフランスなど

プレミア感のあるハニートースト
ハニートースト
ハニトーカフェ&ベーカリー以外のグループ各店では、1斤食パンに切り目を入れたハニトーにトッピングを行っていますが、ハニトーカフェ&ベーカリーでは内層をサイコロ状にカットして、他店では提供していないヨーグルト風味のホイップクリームを使用するなどプレミア感を出しています。食パンをナイフとフォークで切り分け、クリームやアイスと一緒に口へ運びます。カリッと焼き上げた熱いパンと冷たいアイス、濃厚なクリームの相性が抜群です。
提供される直前に焼き上げて食パンの表面を少し乾燥させているので、ハチミツやバニラアイスが染み込み易くなり食感が良くなります。ハニトーに使用する食パンは、表面がパリッと内層はしっとり感のあるハチミツとの相性も良いイギリスパンを使用しています。

ハニトーメニューの展開
各店共通の看板メニューは「完熟チョコバナナハニトー」で、1店舗当たり月250斤程のオーダーが入るとの事です。ハニトーカフェ&ベーカリーでは、季節毎の企画メニュー「プレミアムハニトー」を店頭のブラックボードで告知し、ハニトーメニューの更新を行っています。
7月下旬は、
   ・「パンプル&オランジュ」
   ・「ぎっしりマンゴー」
   ・「ベリーフォンデュ」
   ・「ハニープリン ア・ラ・モード」 の4品です。

完熟チョコバナナハニトー
ブラックボード

また、北海道の生キャラメルソースを使用したメニューも発売されます。
ハニトー発売20周年を記念したイベント「ハニトーグランプリ」では、お客様からハニトーレシピを公募し「さっぱり! レモン&ティーハニトーwithチーズクリーム」がグランプリを獲得しました。はちみつと相性がいいレモンをメインに、レモンのジュレや輪切り、チーズクリーム、ミントをトッピングされたメニューです。 お客様と一緒にこれまでにないメニューを考えるイベントなどを通じて、様々なお客様に来店いただける安全安心の商品を提供し続ける店を目指したいとの思いを星野料理長はお持ちでした。
「初代ハニトー」が1992年に発売されてから20年を経た今でも、お客様からハニトーが支持されているのは、メニュー開発を継続する事でバラエティが広がり続けているからではないでしょうか。このように各種企画やイベントを通じて、お客様と一緒に商品を育てていく事は、スイーツに限らず各種商品開発にも必要な取り組みです。

皆様も新しい商品やブランドづくりに取り組んでみませんか。開発のヒントは身近なところにあるのかも知れません。自社の看板商品を活用するなどして、豊かな発想で開発に取り組めば、全く新しい人気商品が生まれる可能性があるはずです。創・食Clubでは、これからも皆様の商品開発をお手伝いさせていただきます。

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