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パンケーキに続く話題のクランペットとダッチベイビー

根強い人気を誇るパンケーキ。いまや朝食やランチ、おやつの定番メニューとして定着しつつあります。提供する店も増え、様々なスタイルのパンケーキが誕生しています。
その波に乗るかのように注目されつつあるのが、イギリス風パンケーキの「クランペット」とドイツ風パンケーキの「ダッチベイビー」です。
どちらもパンケーキの一種としてパンケーキファンの好奇心をくすぐり、さらに年配や男性など新たな層を取り込み、話題を集めています。
クランペット

 イギリス風パンケーキとも言われているクランペットは、イングリッシュマフィンなどと並ぶイギリスの朝食の定番メニューです。生地に牛乳をふんだんに使い、発酵させてから焼き上げるクランペットは、食感が非常にもちもちとしています。

べリーズティールーム
本格紅茶とイギリス菓子専門店のベリーズティールーム
本格紅茶とイギリス菓子専門店の
ベリーズティールーム
 東京・杉並区の京王井の頭線浜田山駅から徒歩3分の場所に2013年1月オープンした「べリーズティールーム」は、紅茶とイギリス菓子が楽しめるティールームです。オープン当初は、シフォンケーキなどイギリス菓子以外の菓子も提供していましたが、イギリス菓子を専門に提供するようになって、クランペットをメニューに加えたところ、客層が広がったそうです。

■ ベリーズ ティールーム
住所:東京都杉並区浜田山2-24-1-1F
電話:03-5930-9395
営業時間:午後12時~午後7時

● フェイスブックで話題に

オーナーの和田真弓さん
オーナーの和田真弓さん
英国風インテリアでまとめられた店内
英国風インテリアでまとめられた店内
 オーナーの和田真弓さんは「もっと紅茶の魅力を知ってもらいたい」と、厳選した高品質の茶葉で入れる紅茶を、英国風インテリアの空間で楽しめる同店をオープンしました。紅茶と一緒に菓子も楽しみたいというお客様が多かったことを受けて、紅茶と相性の良い菓子を揃えていましたが、イギリス菓子に特化するようになると、お客様の反応が一段とよくなったそうです。そんななか、クランペットは最も話題を集めたメニューです。
 「フェイスブックでクランペットの写真をアップしたところ、クランペットを求めてご来店くださる若い女性が増えました。召し上がったお客様がクランペットの写真をアップしてくださり、その画像を見た方が来店してくださる、ということもあります」(和田さん)
 本場イギリスでクランペットは、朝食として食べる家庭料理だそうです。そのため、ティールームなどで提供されることが少なく、イギリスに旅行したことがあるお客様が多い同店でも、クランペットは初めてという人が多いようです。
 味を訊かれると和田さんは、「パンとパンケーキの中間のような感じです。水分量が多ので食感がもちもちしています」と説明しています。
 「『イギリス風のパンケーキです』と言った方が、お客様にはイメージがつかみやすいみたいですね」(和田さん)

● イギリスの伝統料理として提供

バターと蜂蜜またはメープルシロップを付けて食べるプレーンクランペット 800円。紅茶付き
バターと蜂蜜またはメープルシロップを付けて食べる
プレーンクランペット 800円 (紅茶付き)
 クランペットがどのような歴史を持っているのか、イギリスではどのように食されているのかなどについて興味を持っているお客様が多いため、メニュー表にそれらの解説を添えています。
 「ヴィクトリア朝時代は、クランペットを串刺しにして暖炉の火にかざし、たっぷりのバターと蜂蜜で食べていました」などと書かれた解説欄の横には、その伝統メニューが味わえる「プレーンクランペット」(800円、紅茶付き)が記載されています。
 レシピは、和田さんがイギリスの料理本を参考に完成させました。材料は小麦粉、牛乳、塩、砂糖、ドライイーストです。粉は薄力粉、水分は牛乳のみにすることによって、もちもちとした食感になります。作り方は、材料を合わせて1時間ほど発酵させて、タルトリングに流し込んで200℃で焼き上げます。
 メニューは「プレーンクランペット」ほか、バニラアイス、バナナ、チョコレートシロップがのった「スイーツクランペット」(950円)や、サーモンとクリームチーズのパテとサラダののった「セイボリークランペット」(950円)など全部で4種類です。それぞれ紅茶がセットになっていて、スイーツ系にはミルクティー、食事系にはストレートティーを勧めています。
 「クランペット自体の味がシンプルなので様々なトッピングが合いますが、なかでもサーモンなどイギリスでよく使われる食材を選んでいます。満足感があり腹持ちも良いので、今後はランチメニューとしても提供していきたいと思っています」(和田さん)
専用の型を使い、200℃のホットプレートで焼き上げる
専用の型を使い、200℃の
ホットプレートで焼き上げる
スイーツクランペット 950円。紅茶付き。食器類も英国製
スイーツクランペット 950円 (紅茶付き)
食器類も英国製

ハロッズ・ザ・プランテーション ルームス
 東京・中央区の銀座三越4階にあるカフェ「ハロッズ・ザ・プランテーション ルームス」では、本場イギリスの味をアレンジしたクランペットを提供しています。3年前のオープン当初から提供していますが、パンケーキブームの影響もあり、最近は閉店時刻を待たずして完売してしまうほどの人気があります。

■ ハロッズ・ザ・プランテーション ルームス
住所:東京都中央区銀座4-6-16銀座三越4階
電話:03-3561-5350
営業時間:午前10時半~午後8時 (L.O. 午後7時半)

● 食事として提供するためにオリジナルレシピを開発

菊島昇一郎シェフ
 イギリス・ロンドンにある百貨店「ハロッズ」で扱われている紅茶を提供する同店では、食事メニューもスコーンやサンドイッチなど、イギリスの伝統的なメニューを揃えています。クランペットもその一つですが、シェフの菊島昇一郎さんがアレンジを効かせたオリジナルレシピとなっています。
 「おやつというよりも、食事として満足できるボリュームと味にしたかったので、マッシュポテトを生地に練り込んでいます」(菊島さん)
 1皿あたりのクランペットは1枚なので、「この量で足りるかどうか不安でしたが、実際食べてみたら食べ応えがあってちょうどいい量でした」と話すお客様もいるそうです。
 また、材料の小麦粉は香りの良いフランスパン用粉を使っています。
 「材料がシンプルなので、粉の香りが引き立ちます。焼き上がりは何も付けなくてもおいしいと思えるほど、粉やポテトの風味が良く仕上がります」(菊島さん)
 メニューは、「スモークサーモンクランペット」(1,260円)と「ローストビーフクランペット」(1,470円)の2種類で、食事系に特化しています。
 トッピングはどちらのメニューもハーブを効かせており、小麦粉とポテト、そこへさらにハーブの香りが加わった風味豊かな味わいになっています。
スモークサーモンクランペット 1,260円
ローストビーフクランペット 1,470円
● 夕食の利用はリピーターが多い

 クランペットは昼時、スープとドリンクをセットにしたランチメニューとして提供しています。そのため、昼時の注文が多かったのですが、パンケーキがブームになっている近頃は、時間を問わず、10時半の開店直後からよく出るようになっています。
 朝一番に来店する若い女性客などは、メニュー表を見るまでもなく、「クランペットを食べてみたかったんです」と言って、クランペットを注文することもあるそうです。一方、夕食としての利用も増えてきています。こちらは、ブームの影響というよりは、リピーターの存在が大きいようです。その多くは、年配客や女性の1人客です。
 このように今では、年配客にも人気が出てきたクランペットですが、オープン当初は、クランペット自体の認知度が低く不安があったそうです。そこで、どんなものかイメージしやすいよう、「イギリス風のパンケーキで、日本食で言えば、おやきみたいなものです」などと、紹介していたそうです。
 「認知度が少しずつ上がってきたので、ローストビーフなどイギリスの伝統的な料理だけでないトッピングメニューも増やしていこうかと思っています」(菊島さん)

ダッチベイビー

 ダッチベイビーは、アメリカでもじわじわと人気を集めているドイツ風パンケーキです。卵をたっぷり使った生地を鋳鉄(ちゅうてつ)製のフライパンで焼き上げるので、卵風味豊かなふわふわとした食感が特徴です。フライパンにのせたまま、熱々の状態で提供する店が多いようです。

ROSIE'S CAFE ラゾーナ川崎店
ROSIE'S CAFE ラゾーナ川崎店
ROSIE'S CAFE ラゾーナ川崎店
 カフェを中心に数多くのブランドを展開するカフェ・カンパニーが、昨年10月に新たにオープンした「ROSIE'S CAFE(ロージーズカフェ) ラゾーナ川崎店」は、ダッチベイビーとオリジナルシェイクが楽しめるカフェです。今年10月には、埼玉県の駅ビル「ルミネ大宮」に2号店がオープンし、ダッチベイビーの認知度をますます広げています。

■ ROSIE'S CAFE ラゾーナ川崎店
住所:神奈川県川崎市幸区堀川町72-1
LAZONA川崎プラザ4階
電話:044-874-8494
営業時間:午前10時~午後11時

● 豊富なメニューと話題性で幅広い層に人気

佐藤礼佳店長(写真左)とキッチンスタッフ
佐藤礼佳店長(写真左)とキッチンスタッフ
 「国内でダッチベイビーを食べられるお店は珍しく、テレビや雑誌で取り上げられるなど話題性もあって、朝から晩まで時間を問わず来店してくださいます」(佐藤礼佳店長)
 オープンして1年が経った現在、子ども連れの若い女性や、3世代の家族など幅広い客層に支持されていますが、雑誌で「大人のパンケーキ案内」と題した特集に掲載された直後は、中年の男性客も目立ったそうです。
 メニューは、クリームチーズ、レモン、メープルシロップを好みでかける「ROSIE'S オリジナル」(730円)などのスイーツ系が6種類と、4種のキノコ、ベーコン、自家製ドレッシング、リーフサラダがトッピングされた「マッシュルーム&ベーコンサラダ」(830円)などの食事系が5種類あり、スイーツ系と食事系をシェアして食べるのが人気だそうです。また、夜8時頃から11時に閉店するまでの時間帯は、2人で1皿をシェアし、ドリンクと一緒に夕食後のティータイム感覚で楽しむお客様が多いそうです。

ダッチベイビーは11種類
ダッチベイビーは11種類
<ダッチベイビーメニュー一覧>
ROSIE'S オリジナル
730円
ホイップバナナチョコレート
800円
キャラメルアップルシナモン
780円
マッシュルーム&ベーコンサラダ
830円
プロシュート&グラナパダーノ
830円
チリビーンズチーズ
780円
※このほかに5種類。それぞれ、平日のみスモールサイズの提供もある。トッピングはバニラアイスクリーム(100円)
ROSIE'S オリジナル 730円
ROSIE'S オリジナル 730円
マッシュルーム&ベーコンサラダ 830円
マッシュルーム&ベーコンサラダ 830円
● ストーリー性を持たせたオリジナルレシピを開発

 チェック柄のテキスタイルや、木をふんだんに使ったインテリアの店内は、架空の人物、ロージーさんという女性が住む家をイメージしています。彼女が家に近所の人たちを招きふるまっていたのが、ダッチベイビーとシェイクだったというストーリーを立て、このストーリーを同店のテーマとしました。ダッチベイビーのレシピは、このストーリーをもとに同社のシェフが開発したオリジナルです。
 材料は、オリジナルのミックス粉、牛乳、卵、グラニュー糖です。卵の割合が多く、焼き上がりはスフレのようにふわふわで、黄色みがかっています。
 焼成はオーブンで5~6分ですが、焼成に使うダッチオーブンをよく熱しておく必要があるため、「混雑時は40分ほどお時間がかかります」と案内しています。
 初めてダッチベイビーを食べるというお客様には、「パンケーキよりも薄くてもちっとしていて、周りはカリッと香ばしい食感です」と説明しています。実際食べたお客様からは、「想像していたのと違って、オムレツみたいにふわふわしていておいしい」と言われることもあるそうです。
架空の女性「ロージーさん」の家を
イメージした店内
縁はカリッと焼き上がる

トラベルカフェ
トラベルカフェ 阪急三番街店の店内
トラベルカフェ 阪急三番街店の店内
 トラベルカフェは、「旅を五感で感じる」をコンセプトに、世界各国の料理をカフェ風にアレンジするなどして提供するカフェチェーンです。国内に展開する20店舗のうち、ダッチベイビーの提供をしているのは、阪急三番街店(兵庫県)とステーションホテル小倉店(福岡県)の両店です。今年の2月に提供を開始して以来、特に10代から50代女性の間で話題となり、昼過ぎから夕方にかけての時間帯の人気メニューとなっています。

■ トラベルカフェ 阪急三番街店
住所:
大阪府大阪市北区芝田1-1-3
阪急三番街南館内1階
電話:06-7711-6611
営業時間:
午前7時半(土・日は午前8時)
 ~午後11時半(金・土は午前4時)
 
■ トラベルカフェ ステーションホテル小倉店
住所:
福岡県北九州市小倉北区浅野1-1-1
ステーションホテル小倉1階
電話:093-513-1651
営業時間:
午前8時~午後12時(日・祝は午後11時)

● 女性をとりこにする見た目のインパクトとわくわく感

 アメリカ発のパンケーキブームが続くなか、ダッチベイビーが、そのアメリカで密かにブームとなっていたことに、トラベルカフェは着目しました。
 日本国内の飲食店ではほとんど見かけることがなかったので、新鮮で目新しいメニューとして提供できると考えたのです。
 さらに、目新しさだけでなく、フライパンにのったままの状態で食べるという楽しさやわくわく感なども提供できます。見た目にもインパクトがあることから、写真を撮ってフェイスブックに掲載するお客様も多いそうです。
 また、通称としてダッチベイビーは、「ドイツ風パンケーキ」とも言われています。その語感は、ヨーロッパ好きの女性客に響き、旅好きのお客様が集まるトラベルカフェでは、ドイツ風パンケーキという名称だけでも、多くの女性客の好奇心を掻き立てているようです。

● フレンチトーストやパフェなどを参考にしたトッピング

 提供しているダッチベイビーのメニューは、甘い系と食事系合わせて5種類です。

<ダッチベイビーメニュー一覧>
キャラメル&アップル&シナモン
580円
バナナ&バニラ&チョコレート
580円
マスカルポーネ&ハニー&ベリー
680円
抹茶アイス&小豆&きな粉
680円
スクランブルエッグ&スパム
680円
生ハム&ルッコラサラダ
680円
 5種類のメニューは、トラベルカフェの定番人気メニューであるフレンチトーストのトッピングやパフェのデコレーションのほか、ハワイなどアメリカのお洒落な朝食を参考にして考案されました。
 フライパンにのって提供されるダッチベイビーは熱々の状態なので、アイスクリームなど、熱で溶けてしまうトッピングは、別皿で提供されます。食べる直前に熱々のダッチベイビーの上にのせれば、口の中で温度差が楽しめます。
 阪急三番街店と小倉店の両店では、好評につき、今後旬のフルーツを使った季節限定メニューの展開も予定しているそうです。
10月にはフィンランドをテーマにした期間限定カフェを開催し、フィンランドの秋をイメージしたパンケーキメニュー「リスが見つけた森もパンケーキ」を提供
10月にはフィンランドをテーマにした期間限定カフェを開催し、フィンランドの秋をイメージしたパンケーキメニュー「リスが見つけた森もパンケーキ」を提供
マスカルポーネ&ハニー&ベリー 680円
マスカルポーネ&ハニー&ベリー 680円
抹茶アイス&小豆&きな粉 680円
抹茶アイス&小豆&きな粉 680円
スクランブルエッグ&スパム 680円

 パンケーキの一種として知られるようになったクランペットとダッチベイビーですが、いろいろなパンケーキを試したいというパンケーキファンのみならず、新たな層へ需要を喚起しているようです。
 どちらの料理についても、提供する各店に共通しているのは、食事系メニューが充実していること。そのため、特に甘いものが苦手な男性や年配にとっても受け入れやすいようです。このようにテイストの幅の広さも手伝って、友人同士だけでなく、家族でも楽しめる料理となっているのではないでしょうか。

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