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再燃し進化するベジポタラーメン

スープに野菜のポタージュを配合した「ベジポタラーメン」。油脂に頼らず野菜で濃厚さを出しているため、しつこさがなくあっさりとした味わいが特徴です。
姿を見せ始めた数年前から、その人気はじわじわと広がっていますが、ここ1、2年でさらに進化を遂げ、女性など、これまでラーメンを敬遠していた人をも、新たなファンとして取り込んでいます。
焼麺 劔

焼麺 劔
焼麺 劔
 鉄板で香ばしく焼き上げた麺のベジポタラーメンを提供する「焼麺 劔(つるぎ)」は、東京・新宿区のラーメン激戦区、高田馬場に約2年前、開業しました。賑やかな通りから少し外れた立地にあるにも関わらず、店の前にはその独創性豊かな一品を求めて入店を待ち侘びる人の列ができています。

■ 焼麺 劔
住所:東京都新宿区高田馬場2‐6‐10 関ビル1階
電話:03‐3200‐5911
営業時間:
午前11時~午後3時、
午後6時~午後9時半
(日曜休み)

● わざわざ来店したくなる独創性の高い味

焼麺 750円
焼麺 750円
麺と、トッピングの目玉焼きとチャーシューを焼き上げる
麺と、トッピングの目玉焼きとチャーシューを
焼き上げる
削りたての鰹節
削りたての鰹節
 「わざわざ来ていただけるような店を目指しています。そのため、激戦区の中であえて人気の少ない通りに構えました」と話すのは、店主の星劍馬さん。
独創性の高い同店のラーメン「焼麺」(750円)は、こうした星さんの強い意志のもと誕生しました。  「焼麺」に使う麺は、断面の四角い超極太麺。これを約1分間茹でた後、鉄板で4~5分間蒸し焼きにすることで、香ばしくカリッとした部分ともちもち感が同時に楽しめる麺に仕上がるのです。
 「修行先でまかないを担当していたとき、焼き麺のおいしさに出合いました。この焼き麺にベストなスープが、まだマニアなど一部でしか話題になっていなかったベジポタだったんです」(星さん)
 焼き麺とベジポタスープという、目新しさのあるもの同士が組合わさることで、「わざわざ来てもらえるような店」の独創性の高い味が完成したのです。
 同店のベジポタスープは、チャーシューのうま味が溶け込んだ醤油ダレ、豚骨スープ、ジャガイモやタマネギで作ったスープの3つを合わせて作られます。
 「スープは、飲むというより食べるような感覚で、口に運んでもらいたいですね。濃度の濃いベジポタなら麺によく絡みます。さらに、麺の焼けたバリバリとした部分には、スープが染み込むようにして絡みます」(星さん)
 「焼麺」には、ネギとシナチクのほかにチャーシューと目玉焼きをトッピング。チャーシューと目玉焼きは、麺を焼く際一緒に鉄板で焼き上げます。チャーシューはカリッと香ばしく、目玉焼きは鉄板の温度の低い部分で焼き上げて白身はふっくらと、黄身はとろりと半熟に仕上げます。さらに削りたての鰹節を別添えします。
 「黄身を溶かすとよりまろやかになりますし、鰹節を入れるとまた違う風味になります。途中で味を変えて、最後まで飽きずに味わってもらえればと思っています」(星さん)
卓上には紅ショウガも用意。入れるとさっぱりとして、味の変化を楽しむのに最適なアイテムです。

● 家族連れや外国人にも人気

 平日、休日を問わず、同店には多い日で150人が来店します。平日は学生やサラリーマンが中心で、休日は家族連れも目立ち、幅広い年齢層に支持されています。常連客には近所に住む85歳の女性もいます。
 「濃厚だけどあっさりした当店のベジポタスープは、女性をはじめ、子どもからお年寄りまで幅広い方に食べやすいと思います」(星さん)
 また、「焼麺」の麺はのびにくいので、おしゃべりを楽しみながら食べる外人客にも好評だといいます。同店には、「焼麺」のほか、同じ超極太麺を茹で、焼かずに使用する「ラーメン」(750円)もあります。「『焼麺』はほぐしながら食べます。でも、ラーメンですから、すすりたいという方もいます。その方のために『ラーメン』を用意しています」(星さん)
 リピーターの多くは、「焼麺」派と「ラーメン」派に好みが分かれ、「焼麺」の注文が8割を占めているそうです。焼き麺とベジポタスープを使ったメニューは、約2カ月ごとに変わる季節商品を1品用意しています。
 10月から始めたのはベジポタラーメンに自家製ミートソースがトッピングされた「ベジポタミートソース麺」(800円)。ミートソースのトマトの酸味が効いており、女性客から好評を得ています。
紅ショウガも相性がいい
紅ショウガも相性がいい
季節限定のベジポタミートソース麺 800円
季節限定のベジポタミートソース麺 800円

鶏ポタ ラーメン THANK

鶏ポタ ラーメン THANK
鶏ポタ ラーメン THANK
 東京・港区の都営浅草線大門駅から徒歩3分の「鶏ポタ ラーメン THANK(サンク)」は、野菜のポタージュと鶏白湯を合わせたスープが、サラリーマンだけでなく女子学生をも虜にしている人気店です。

■ 鶏ポタ ラーメン THANK
住所:東京都港区芝大門2‐1‐13柴大友ビル1F
電話:03‐5400‐1350
営業時間:
午前11時半~午後3時、
午後6時~午後10時
(土曜は昼のみ、日曜・祝日は休み)

● 野菜の味を全面に出した優しい味わいのスープ

スペシャルラーメンとろり 950円。トッピングは塩卵、海苔、ネギ、手羽先
スペシャルラーメンとろり 950円
トッピングは塩卵、海苔、ネギ、手羽先
 野菜のうま味をきかせた同店のスープは、「化学調味料を使わず食材の味を最大限に活かしたい」という店主の田邉雄二さんの思いのもと誕生しました。
 「修行先が、食材からとった出汁のみで作るスープでした。塩や醤油などの調味料を使用しないので、食べ慣れないと物足りなさを感じるかもしれませんが、食材のうま味や甘味、そして麺の小麦の味や香りまでを、じわじわと感じることができるんです。そのときの感動が、今のラーメンづくりに繋がっています」(田邉さん)
 同店の「ラーメン」(680円)のスープは、鶏白湯と野菜のポタージュを2対1の割合で配合。野菜のポタージュは、水ではなく鶏ガラスープで野菜を煮込んでうま味を出し、ミキサーにかけて作っています。
 野菜のポタージュに使う野菜の種類は、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、トウモロコシなど現在9種類。2012年1月の開業当初は5種類でしたが、改良を重ねるうちに増えました。
 「野菜の味を全面に出している」(田邉さん)優しい味わいは、女性客にも好評で、店内のすべての席が女性客でうまることもあるほどです。
 一方、男性客に人気なのは、麺を食べ終えた後、スープの中にご飯を入れて作るリゾットです。そこにカレー粉を足すのも人気です。野菜と鶏のうま味がたっぷり入ったスープは、カレー粉を足すだけで、まるでカレーを食べているような味わいになります。
 スープだけでなく、最近麺も改良しました。ストレートの細麺という点は変えず、水分量を増やし、食感や歯触りを変えました。
 「つるんとしたぷりぷり食感の麺の方が、当店のとろみのあるスープと相性がいいですね」(田邉さん)
 スープのとろみは、あっさりめの「さらり」、適度なとろみのある「とろり」、濃厚な「ぽてり」の3段階があります。
 「一番出るのが中間の『とろり』で、初来店の方もよく頼まれます。常連の方々は濃さだけでなく、卓上のゴマやカレー粉を足すタイミングなども、ご自分の好みを追求されて楽しまれています」(田邉さん)
今年の夏前から発売を始めた、鶏ポタンタン麺 800円。ゴマとカツオ風味の自家製ラー油が効いている
今年の夏前から発売を始めた、
鶏ポタンタン麺 800円
ゴマとカツオ風味の自家製ラー油が効いている
卓状にリゾット用のカレー粉が用意されている
卓状にリゾット用のカレー粉が用意されている
● オフィス街の中の癒し空間

 オフィス街に立地する同店。入り口の階段や扉部分は木製で、心が和むような温かみのある店構えとなっています。店内も、壁は土壁、椅子やテーブルは木製、レンゲも木製です。
 「ビルが立ち並ぶ無機質な空間のオフィス街の中で、癒しの時間を提供できればと思い、温かみのある自然素材を多用しています」(田邉さん)
 居心地の良い空間であることも、女性客からの人気が高い理由の一つとなっているようです。

ソラノイロ

ソラノイロ
ソラノイロ
 東京・千代田区の東京メトロ麹町駅からすぐの「ソラノイロ」は、スープ、麺、トッピングのすべてに野菜を盛り込んだ「ベジソバ」を提供する人気店です。今年の冬には待望の2店舗目がオープンします。

■ ソラノイロ
住所:東京都千代田区平河町1‐3‐10
   ブルービル本館1B
電話:03‐3263‐5460
営業時間:
午前11時~午後3時半、
午後6時~午後10時
(土曜・祝日は昼のみ営業、日曜休み)

● 新しいカテゴリーとして開発したベジソバ

ベジソバ 800円
特製中華ソバ 950円
 「女性など、普段ラーメンを食べない人に向けて開発したのが『ベジソバ』です」と、店主の宮崎千尋さん。
 2011年6月、同店がオープンし、「ベジソバ」(800円)が発売となった頃、野菜はラーメン業界で注目される前でした。宮崎さんは、新しいカテゴリーとして、野菜ジュース、イタリアン、ラーメンの3要素を入れた「ベジソバ」を開発しました。色とりどりの野菜が使用され、見た目にも色鮮やかな「ベジソバ」は、女性の心を掴みました。こうして新たな層も取り込み、話題のメニューとなっています。
 スープは、豚、鶏、魚のうま味が詰まった「中華ソバ」(750円)のスープと、ニンジンのピュレを合わせています。ニンジンの甘味が活きた、甘口に仕上がっています、そのため、子どもも食べられる優しい味わいで、休日はベビーカーや子ども連れの家族も多く来店します。
 スープより少し赤みを帯びたオレンジ色の麺には、パプリカを練り込んでいます。
 「スープが甘口なので、少しだけピリッと辛みのあるパプリカを入れてバランスをとっています」(宮崎さん)
 トッピングの野菜は、キャベツやジャガイモのほか、その時々の旬野菜を、青、赤、黄の色味のバランスを考えて使用します。調理法は野菜の種類ごとに変え、そのもの自体の味を引き出します。例えば、ジャガイモは茹でますが、キャベツは茹でると水っぽさが出てしまうので、蒸して甘味を出します。

● 食材を第一に改良を重ねていく

家族連れに重宝するソファのある店内
 「『ベジソバ』は開発した当時、業界にアンチテーゼを投げかけるものだったと思います。当時はつけ麺やガッツリ系が流行でしたから。流行ではなく、自分の作りたい味を追求したんです」(宮崎さん)
 宮崎さんは「ベジソバ」を、ブームとして一過性のもので終わらすのではなく、長く支持されるものとして、日々改良を重ねています。
 スープと麺のどちらも、これまでにそれぞれ3~4回変えました。スープに使う鶏のガラやイワシなど、いいと思った食材を見付けたら試作する、ということを繰り返し、進化させ続けています。
 「食材を第一に考えていますので、いい食材と出合ったら、その食材の味を活かすことを考えて試作します」(宮崎さん)
 季節商品は、春夏秋冬の年に4回発売します。冬は、たっぷりの根菜ともつを入れた「ベジもつ味噌麺」、春は「アボカドと豆腐の春ベジつけソバ」、夏はスープと麺両方にトマトを使用した「トマトベジソバ」などを、これまで発売してきました。どれも旬の食材を使った、ベジ要素がたっぷり詰まっている限定メニューです。
 これらの季節商品と、旬野菜のトッピングがある定番メニューの「ベジソバ」が、お客様の目を舌を楽しませ、リピーターを増やし続けています。

進化している「ベジポタラーメン」には、不足しがちな野菜を摂取できるというヘルシーさのほか、使用する野菜の調理法や、野菜の色味を活かした彩りの良い盛り付けなど、野菜の魅力をより一層引き出す工夫がなされています。野菜を全面に打ち出すことで、従来のラーメンのイメージを一変するような見た目と味を作り出し、ラーメンの新しいジャンルと言える存在感を放っています。だからこそ「ベジポタラーメン」は、女性を中心に新たな層をラーメンファンに取り込めたのではないでしょうか。

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