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洋風スタイルラーメン
ラーメンらしさとオリジナリティの両立

彩り豊かで見た目も華やかな、女性をターゲットにしたイタリアンやフレンチテイストのラーメンが増えています。これは視点を変えるとラーメンにおけるキュイジーヌと言えるのかもしれません。
このような斬新なスタイルは今までとは違うお客様を惹きつけ、そしてラーメン需要を拡大させます。今回はこのような斬新な洋風スタイルのラーメン店を取材しました。これらの動きをご覧いただき、新しいメニューと新しいお客様の開拓にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※キュイジーヌとは1970年代に起きたフランス料理の革命と言われる、ヌーベル・キュイジーヌに端を発し、地域の素材にこだわり、その組み合わせやアレンジを工夫する料理という意味。
  • 麺屋 ふぅふぅ亭
  • 麺や一途
  • ドゥエ イタリアン
  • 麺巧 潮

麺屋 ふぅふぅ亭

2009年6月にOPENするやいなや、雑誌のニューオープン店ランキング「あっさりラーメン部門」BEST10に選ばれたのが「麺屋ふぅふぅ亭」です。「フランス料理の美味しさをラーメンに」をテーマに、独学で研究した極上スープが特徴です。

麺屋 ふぅふぅ亭
住所:東京都新宿区矢来町118 石本マンション1F
電話:03-3267-5576
営業時間:[平日]11:30~15:30、17:30~24:00/
[土曜]11:30~15:30、17:00~22:30/
[日曜・祝日]11:30~21:30
※スープ、麺がなくなり次第終了。
定休日:不定休
東京・神楽坂にある「麺屋 ふぅふぅ亭」

『個性』を価格に反映でき、事業の安定性があるのがラーメン店の魅力

「ラーメン店を選んだ一番の理由は、事業の安定性です」。

店主の益城大作さん

こう語るのは、東京・神楽坂にある「ふぅふぅ亭」店主、益城大作さん。高校卒業後、アメリカで4年半フレンチ料理人として経験を積み、日本に帰国後は飲食店のコンサル・プロデュース会社に就職したという異色の経歴の持ち主です。

「飲食店は個人経営の場合失敗することの方が多い。新規参入の70~80%が撤退するというのは、経験から知っていました。さらにこの店を開こうとした2009年はリーマンショックのまっただ中。価格破壊が進み、個人店主が大手に価格では勝てない時代でした。その中で、大手の参入がなくて『個性』を価格に反映でき、事業の安定性があるのがラーメン店の魅力だと考えたんです。そこに、僕の場合は『洋風テイスト』という個性を加えようと思いました」(益城さん)

店内

しかし、開店当初は「ラーメン店の洗礼をあびた」と益城さんは振り返ります。

「自分の中では、『洋風テイスト』という個性を打ち出したラーメンができたと思いました。でも、当時はまだまだ「ラーメンらしさ」が足りなかったんです。洋のスープ、つまりはコンソメスープの特徴は『優しさ』。それをそのままラーメンに持ってきても、味が優しすぎるんです。ある程度のジャンクさがないとラーメンにならない。その調整が大変でしたね」(益城さん)

進化し続けるからこそ、『変わらない味』

「ふぅふぅ亭」の看板メニューは、フレンチのコンソメスープを連想させる極上スープで味わう、洋風塩ラーメンです。その味には、素材の旨みを引き出すための「引き算」の発想が込められています。

食べ応えのある「グリルチャーシュー麺・塩」(1020円)

「他店の『塩ラーメン』の場合、10種類以上の塩をブレンドしているところもあると思います。でも、私の求めるのはシンプルなもの。あまり特徴のある塩を使ってしまうと、逆に素材の味を殺してしまうんです。今使っているのは、伯方の焼き塩とモンゴル岩塩の2種類のみ。どちらも、素材の味を邪魔しないけども、特徴のある塩だと思います」(益城さん)

麺に関しても常に改良を加え、今は全粒粉で作った麺が使用されています。
「洋風テイストだから、パスタで使われるセモリナ粉があうかと思ったらダメでした。かといって、全卵の中華麺もあわない。うちのスープにあう麺を探すのには本当に苦労しました。今の麺も最近変えたばかりなんですが、まだまだ改良は重ねていきます」(益城さん)

益城さんがこだわるのは、味は常に進化しなければならない、という姿勢です。
「久しぶりに来店されたお客様にも『やっぱり美味しいよね』と言ってもらえる店になりたいと思っています。思い出って美化されるので、思い出の味と比べて「やっぱり美味しい」と思ってもらうためには、同じものを提供してもダメ。進化し続けるからこそ、『変わらない味』なんだと思います。その追求はこれからもしていきたいですね」(益城さん)

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麺や一途

東急目黒線、武蔵小山駅にほど近い場所に店を構える「麺や一途」。お店に入ると、3人のシェフの大きな写真が出迎えてくれます。目黒雅叙園で洋食調理長を務めた店主、仲田一途さんとそのお弟子さんの3人で生み出す味は、地域のみなさまに親しまれています。

麺や一途
住所:東京都品川区小山2-17-30 1F
電話:03-6426-8428
営業時間:[平日]11:30~15:00、18:00~22:00/
[土曜・日曜・祝日]11:30~22:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日)
東京・武蔵小山にある「麺や一途」

フレンチやイタリアンじゃ、誰も驚かない

「麺や一途」が東京・武蔵小山にオープンしたのは昨年10月のこと。開店から半年足らずにもかかわらず、早くもカップルや家族連れなど、地域のみなさまの支持を集めています。

店主の仲田一途さん

「フレンチのコースも食べられるように奥に座敷の個室を作ったんですけど、よく赤ちゃんの鳴き声が聞こえますよ(笑)。いいでしょ、赤ちゃん連れでも入れるラーメン屋って」
笑顔で語る、店主の仲田一途さん。目黒雅叙園に15年近く在籍し、洋食調理長まで務めた人物です。そんな「洋食のプロ」仲田さんがラーメン店を開こうと思った理由とは?

「4年前に妻が亡くなり、この後の人生をどうやって過ごそうかなぁと考えていました。昨年50歳になったこともあって何か新しいこと、まわりもビックリするようなことをしたいと思って、直感で選んだのがラーメン店でした。フレンチやイタリアンじゃ、誰も驚かないと思ったんですよね」(仲田さん)

店内

また、以前はよく食べていたとんこつラーメンや、ガッツリ系のラーメンが食べられなくなったことも理由のひとつと語ります。

「コッテリ系やガッツリ系は今では、香りを嗅いだだけで十分という感じになってしまうんですよ。じゃあ、自分でも食べられるような食欲をそそるラーメンにしよう。それなら牛骨、その中でも臭みのない子牛の骨を使おう! と。洋食時代からずっと、ソースの土台としても子牛は使っていましたからね。そこに、鶏も加え、それだけじゃもの足りなかったので、魚介系スープとのWスープに行き着きました」(仲田さん)

信頼して任せた方がいいものができる

子牛の骨をベースにしたスープ作りにおいても、長年培ってきたフレンチの技法が生きていると仲田は語ります。

ホテルカレーをアレンジした「麺・利」(800円)

「長年のフランス料理の経験から言えば、骨がくだけるまで煮込むとえぐ味や臭みも出てしまいます。クリアなスープにしたいと思い、当店のスープはあまり煮込んでいません。そして、作ったスープはその日には出しません。1日寝かせないと味がまわりませんから。冷めるときに味がしみこむんです。おでんでもカレーでもそうでしょ?」(仲田さん)

そんな仲田さんのポリシーは、プロがやることは信頼して任せること。店の味に関しても、ともに「麺や一途」を開いた2人のお弟子さんを信頼し、任せているといいます。

「どんな仕事でもそうだと思うんですが、信頼して任せた方がいいものができる! 麺に関しても、製麺所が何種類もうちのスープとの相性を試して、『コレだ!』とオススメしてくれた麺を使っています。製麺のプロがうちのスープにあわせて選んでくれた麺なんだから相性は最高ですよ。どこにも負けないものになっています」(仲田さん)。

「麺や一途」では、箸で食べられるフレンチコースを昼から味わえるのも特徴です。ラーメンに限定するのではなく、今後も新しい業態へのチャレンジを検討しています。

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ドゥエ イタリアン

テレビや雑誌などでも取り上げられることが多い「ドゥエ イタリアン」。イタリアンシェフ出身、石塚和生さんの「丼一杯のフルコース」、「素材を生かした優しいらぁ麺」を作りたいという思いから、常に新しいメニューが生まれています。

ドゥエ イタリアン
住所:東京都千代田区九段南4-5-11 富士ビル1F
電話:03-3221-6970
営業時間:[平日]11:00~16:00、17:00~22:00/
[土曜]11:00~22:00/[日曜・祝日]11:00~21:00
(※ラストオーダーは上記閉店時刻の15分前 ※スープがなくなり次第終了)
定休日:無休
東京・市ヶ谷駅そばにある「ドゥエ イタリアン」

ラーメンってこんなに奥が深い世界なんだ

「実は、ラーメンには全く興味がありませんでした」。

店主の石塚和生さん

いまや人気ラーメン店として全国的な知名度を誇る「ドゥエ イタリアン」。その店主、石塚和生さんは隠すこともなく、過去の自分を振り返ります。

17歳で料理の世界に飛び込み、イタリアンシェフとして経験と実績を積んでいた石塚さんがラーメンの世界に入るキッカケはテレビ番組の出演でした。そこで、「ラーメンの鬼」と称された故・佐野実さんのラーメンに打ち込む姿勢に出逢い、大きな影響を受けます。「始めてみたら、ラーメンってこんなに奥が深い世界なんだ、とビックリしましたね。そして、こだわりをもってラーメンに取り組む親父(佐野さん)の影響を受けて、ラーメンにのめり込んでいきました」(石塚さん)


店内

石塚さんが特に奥深いと感じたのがラーメンのスープでした。それまでも、イタリアンでブイヨンやデミグラスソースを手がけてきた石塚さんでも、ラーメンのスープ作りには驚かされたといいます。

「スープに手間ひまをかけると、こんなにも味って変わるんだと発見の連続でした。パスタソースなら作り直しがきくんですけど、スープはその場で作り直しができない。だからこそ、できあがったときの感動が楽しかったですね」(石塚さん)

パスタとラーメンには明確な境目がある

ラーメンの世界に飛び込んで十数年、スープの作り方も、当時とはだいぶ変化があるといいます。

「スープの具材は、以前は40種くらい使っていたんですけど、今はだいぶ減らしました。臭み消しとしての香味野菜もほぼ使っていません。下処理さえしっかりすれば、臭み消しなんて必要ないんですよ」(石塚さん)。

「らぁ麺フロマージュ」生ハムトッピング(980円+200円)

もちろん、麺にもこだわりが。メニューによってイタリアのデュラム粉を使う場合もあるものの、基本的には北海道産小麦「春よ来い」でできたオリジナルの麺を使用しています。

「よく、外国の粉の方があうんじゃないかと聞かれることもあります。でも、それじゃ『ラーメン』にならない。口で説明するのは難しくてあくまでも感覚的な違いなんですが、パスタとラーメンには明確な境目があるんです。イタリアンを長く経験したからこそ、イタリアンを感じさせつつラーメンとして成り立つものが作り出せるんだと思います」(石塚さん)

店一番の人気商品は「らぁ麺フロマージュ」。ゴルゴンゾーラも入ったクリームチーズが少しずつスープに溶け出し、食べるたびに味が変わると評判です。締めに玄米ご飯(無料)を加えると、チーズリゾットとしても楽しむことができます。

「ラーメンにご飯、なんて頼むのが恥ずかしいかもしれませんが、『リゾット』とうたうことで女性にも気兼ねなく楽しんでもらえるんだと思います。他にも、竹の割り箸を使っているのは、スープの香りと竹の香りの相性を考えてのこと。これも演出のひとつですね」(石塚さん)  
細かい気配りや演出も、この店が愛される理由です。

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麺巧 潮

仙台での20年間に亘る飲食店経営の実績を活かし、東京でラーメン店「麺巧 潮」を開店した土屋幸男さん。「白」(鶏白湯そば)と「黒」(にほんいち醤油そば)の2種類のラーメンには様々なこだわりが込められています。

麺巧 潮
住所:東京都千代田区神田淡路町2-4-4 B1
電話:03-6206-9322
営業時間:11:00~19:00
(※スープがなくなり次第終了)
定休日:日曜
東京・淡路町駅そばにある「麺巧 潮」

イタリアンの経験から「生クリームがあうはず!」と閃いた

店主の土屋幸男さん

体に優しく、無化調にこだわったスープに生クリームをあわせた「白」(鶏白湯そば)、香り豊かな「にほんいち醤油」を生かした「黒」(にほんいち醤油そば)の2つのラーメンで人気店となった「麺巧 潮」。東京・淡路町駅近くの店舗には、女性客も含め客足が途絶えません。

「仙台で20年、エスニックやイタリアン居酒屋など、様々な飲食店を経営してきました。仙台ではやりつくした感があり、次は何をしようかと考えていたとき、2011年3月11日の東日本大震災に襲われました。あの震災で生き長らえた命、本当にやりたいことをやろうと、前から興味があったラーメンを、いつか挑戦したかった東京でやってみようと決意したんです」。


店内

そう語るのは、店主の土屋幸男さん。メニュー開発や店舗設計には、これまでの20年に渡る飲食店経営の経験が生きているといいます。

「動物の強さではなく野菜の甘さを生かした上質なスープを作りたいと思って生まれたのが、白湯スープの『白』です。自分のイメージに近いスープができたときに、イタリアンの経験から「生クリームがあうはず!」と閃いたんです。実際、返しに生クリームを使ったところ舌触りもまろやかになって、今の『白』ができあがりました」(土屋さん)。

スープに乗った肉巻きアスパラのインパクトも人気の理由のひとつです。

他ではやっていないことをやりたい

一方、常連客からの支持が高いというのが、岡直三郎商店のにほんいち醤油を使った「黒」(にほんいち醤油そば)です。

一番人気の「白」(鶏白湯そば)(870円)

「『黒』は、日本に昔からある素材で、乾物系の良さが全面に出るものを作ろうと思って開発しました。基本的には、うまい醤油とうまいダシの組み合わせ。火入れのコツなどはありますが、あまり余計なことはしません。火入れと生の醤油とのバランス、そして魚のダシとのバランスに気をつけるだけです。もちろん、化学調味料は使いません」(土屋さん)

「今後は、店の特徴である『白』をより強調した白湯専門店なんかができたら面白いですね」と語る土屋さん。一貫しているのは、他ではやっていないことをやりたいというポリシーです。

「『これ、ラーメンなの?』と思ってもらえるようなことをしていきたいですね。白湯であれば、豚の白湯を作って鶏とブレンドしたり。つけ麺でも、たとえばタレと油を茶器に入れて茶せんと一緒に提供する。お客様の好きな撹拌バランスで召し上がっていただくんです。そういうことができれば面白いんじゃないかなぁと思います」(土屋さん)

今回取材をした4店舗の店主は、いずれも異業種からラーメンの世界に飛び込んだ人たちです。共通するのは、常に前に進もうという姿勢、そして他ではやっていないことをやろうという「挑戦者」としての気概にあふれていることです。
一方で、洋風テイストを加えるだけではラーメン店として弱い、という声も複数の店舗で聞くことができました。ラーメンらしさ、と、洋風テイストを組み込んだオリジナリティの両立。そのために、工夫と研究を重ねる探究心こそが重要なのかもしれません。

※店舗情報及び商品価格は2014年12月現在のものです

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