大田区南蒲田の人気店「麺場ながれぼし」から、貝原光(かいばらひかる)店長が鮮魚系スープに特化した姉妹店として、2012年にオープン。
2階まである、ベイサイドのバー風の店内。「ながれぼし」からさらにブラッシュアップされた、磯の香りたっぷりのスープを含めば、口いっぱいに北海の大海原が広がります。
「麺場ながれぼし」では、「動物×キノコ」のスープをベースに、独創的なラーメン作りが人気を博しました。そもそも、ラーメンではめずらしい「キノコ」を採用した理由は何だったのでしょう?
「やはりシイタケの“旨味”に尽きますね。シイタケなどキノコ類には『グアニル酸』と呼ばれる旨味成分がふんだんに含まれています。当店オリジナルの、干しシイタケと生シイタケ、それにマイタケやシメジを合わせた“キノコフレーク”は、おかげさまで多くのお客様に愛されています」(貝原さん)
他店にはないキノコベースのスープで、「ながれぼし」を軌道に乗せた貝原さん。2号店の「麺場Voyage」を出店するにあたり、スープにさらなる挑戦を試みます。
貝原さんが「Voyage」の目玉として採用したのは、「ながれぼし」の限定麺として好評を博した、「鮮魚×キノコ」の組み合わせ。貝原さんは、キノコのベストパートナー探しにこだわりを見せます。
「キノコ出汁は単独でも旨味たっぷりですが、肉や魚などと合わせると“旨味の相乗効果”が起きるんです。鮮魚で何が合うか試行錯誤したところ、たどり着いたのが『殻付き生ホタテ』でした。12~13cmあるもので、乾物とは異なるジューシーな“海っぽさ”にあふれています」(貝原さん)
タレはシンプルにヒマラヤ岩塩を使用。こうしてできあがった「Voyage」の看板メニューが「ホタテとキノコの潮ラーメン」をはじめとする“潮シリーズ”です。
ホタテから取れた香味油、岩海苔など海のエキスを贅沢に投入した一杯。“山”“海”がバランスよく調和したスープを旗印に、「Voyage」丸の航海は続きます。
2014年、銀座の中心に現れた、「ハマグリスープ」が目玉のニューフェイスが「むぎとオリーブ」です。
店名にもあるように、イタリアンのテイストを漂わせる、ハマグリ使いのラーメン店。新時代のラーメンの到来を感じさせます。
もともと、岩田圭介店長の父であるオーナーがイタリアン出身のため、オリーブオイルへのこだわりがあり、それが店名にも由来しているとのこと。
「オリーブオイルに含まれるオレイン酸が、健康・美容にたいへん効果があると、注目されていますよね。でも、ラーメン店では取り入れているところが少ない。当店では、香味油にオリーブオイルを使用していますので、ラーメンとのマッチングを楽しんでいただけます」(岩田さん)
店名のもう一つにある「むぎ」。こちらは京都にある老舗製麺所「麺屋ていがく」と共同開発したオリジナル麺。北海道産の小麦粉を、スープや具材との相性を考えてベストに配合。ラーメンの主役でありながら、主張しすぎることなくスープや具材の持ち味を十二分に引き出しています。
今回紹介する、その名もずばり「蛤SOBA」。出汁に使える貝を求めて、アサリやシジミなどさまざまな貝を試した結果、落ち着いたのが三重県桑名産のハマグリだったそう。
「桑名の専門業者から毎日15kgほど、新鮮なハマグリを取り寄せています。特徴は、身がしっかりしていて、出汁が出やすいこと。『蛤SOBA』は100%ハマグリスープですので、その旨味を存分に味わっていただけます」(岩田さん)
ハマグリ100%の透き通ったスープを含むと、混じりっけなしの貝のエキスがジュワーッと口の中に広がります。食事にはもちろん、お酒を飲んだあとにも喉越しが良さそうです。
具材は鶏チャーシューのほか、三つ葉、素揚げした長イモやナルトなど。スープとの相性で考えられた、他店にはないオリジナルな具材が、イタリアンのような華やかさと、日本料理のような繊細さを丼に与えています。
高級店がひしめく銀座の一角から、静かなるラーメンルネッサンスが幕を開ける、そんな予感に満ちています。
北海道・札幌での開店以来、エビの濃厚な風味で評判を巻き起こしたえびそばの専門店が2013年冬、東京に本格出店。
とことんエビにこだわったラーメン作りで、リピーターも急増中の同店。須藤敬悟店長に“エビ愛”を語っていただきました。
「今まで食べたことのない、新しいラーメンを作りたい!」との思いから、「えびそば一幻」の札幌店はスタートしました。海の幸が豊富な北海道。その中から主役として白羽の矢が立ったのが“エビ”でした。
「シジミやカニ等いろいろ候補はありましたが、一番しっくりきたのがエビでした。エビの中でも車エビ、ボタンエビなど試して、最もいい出汁が出やすかったのが甘エビだったんです。北海道産のものをメインに、1日約45kgほど使っています」(須藤さん)
シンプルなメニューの中でも、店長の思い入れひとしおなのが「えびそば しお」。エビ独特の風味が最も引き立つのが、塩味だということです。具材も味付け卵、チャーシュー、万能ネギとオーソドックスなもの。余分な味が加わることなく、一杯丸ごと「えびそば」のコクを堪能できます。
エビ一本で勝負する「一幻」は、もちろんスープの作り方にも同店ならではのこだわりが。エビのみでありながら、その用途は“出汁”のみではありません。
「甘エビは頭だけを使って、約4時間かけて出汁を取ります。ほか、スープにとろみを加える「エビ油」も、一度揚げたエビから4時間かけて作ります。さらに、香ばしさを加える「エビ粉」、こちらも出汁に使ったエビを4時間ローストして粉末状にしたものです」(須藤さん)
具材の「天かす」にもエビが混ぜてあるとのこと。煮て、揚げて、焼いて…さまざまな手法で、エビが持つ深い味わいを120%引き出した「えびそば」。北の海から生まれたニューウェーブが、東京も席巻しています。
東京都内で3店舗を構える「五ノ神製作所」グループが、2013年冬、新たに「鮮魚系ラーメン専門店」を神田に出店。
乾物ではない「生魚」をスープに投入するという、独自のスープ作りが話題を呼び、魚介好きのリピーターが絶えることがありません。
エビのラーメン、つけ麺で評判の高い「五ノ神製作所」グループ。神田に4店舗目を出店するにあたり、竹内俊店長は「他でやっていないスタイル」を考えた結果、生魚をスープに使うことを決めました。
「グループのオーナーが水産業者さんとご縁があって、生魚の安定供給が可能になりました。その中から『銀ダラ』『サケ』『ウニ』を通年メニューとして使っています」(竹内さん)
看板メニューの「銀ダラの搾りらーめん」。見た目はトンコツにも似ていますが、味はまったく別物。深い磯の香りと、濃厚なとろみが特徴です。
「もともと、本店の限定メニューだった銀ダラを起用しました。淡白な白身魚の中で、とりわけ銀ダラは脂たっぷり。2日分、90kgの銀ダラを5~6時間煮込んだスープの、ガツンと来るインパクトを味わってください」(竹内さん)
こってりした銀ダラの風味を引き立てる塩ダレと、スープがよく絡む自家製麺。そして白ネギ、三角メンマ、鶏チャーシューと、スープに合う具材をバランスよく配置。濃厚にもかかわらず、しつこくない舌ざわりが特徴です。
銀ダラ、サケ、ウニなど通年メニューのほか、カニやホタテなど、旬の限定メニューも続々登場。ラーメン好きにとって、新たな発見の尽きない店です。
※店舗情報及び商品価格は2014年12月現在のものです