葉山の老舗「ボンジュール」から独立した橋本宗茂さんが、この地に店を構えて20年。週末には駐車場がすぐに満車になるほどの人気店です。店長を務める息子さんの茂樹さんが毎日夕方から翌朝にかけてパンを仕込み、焼いているため、平日7時30分、週末7時のオープン時には焼き立てのパンがズラリと揃い、早朝から活気があふれています。併設されたカフェでは、人気の角食エシレ等、焼きたてパンがいただけるモーニング(スープかサラダ・ドリンクつき)1300円(税込)を提供。平日8時には満席になり、休日は早朝6時から行列ができるほど評判です。
ブレドールの看板商品のひとつが、クリームを乳酸発酵させてから作るエシレバターをふんだんに使った「角食エシレ」です。たんぱく量の多い最高級の強力粉、水、生クリームを配合し、イースト菌の量を減らして酒種酵母で丁寧に作った逸品です。橋本さんがボンジュールでパンを焼いていたころに出会い、その味に惚れ込み、以来作り続けているとか。「ドイツ製のガス窯で、外側の焼き色を何度も確かめながら丁寧に焼き上げています」(橋本さん)。
食べて見ると、ふんわりとはかなげな内側と、しっかりと硬い外側(みみ)とのコントラストに驚きます。「食感を堪能していただきたいので、最初の1枚はぜひ、何もつけずにトーストもせずに食べてみてください」(橋本さん)。
ブレドールでは、常時120~130種のパンが店頭に並びますが、売上の65~70%を占めるのが7種類の食パン※、フランスパンなどの食事系のパン。
「材料にこだわっています。卵は横須賀産や葉山産の地卵、牛乳は三浦半島にある関口牧場のものを使っています。ものによってはエシレバター、ジャージー生クリーム、和三盆、木で完熟させたレーズンなど、通常より3~5割増しになる原料を使いますが、材料にこだわることに価値があると思ってずっと使っています」(橋本さん)。
※食パン、角食、全粒粉食パン、セサミブレッド、エシレ食パン(角食、食パン)、レザン
橋本さんは新作パンを考案するときに、「自分の舌を信じて、食べておいしいと感じること」を第一に考えるそう。そうして生まれたのが明太フォカッチャ、和三盆かけクロワッサンなどの人気パン。巷で人気のベーグルも「かみごたえがありすぎるのもね…。もう少し食感のソフトなほうがおいしい」と改良を重ね、弾力がありつつ、しっとりとやわらかいベーグルを考案し、人気を集めています。 ブレドールはホームページを持ちませんが、フェイスブックで旬の食材を使ったサンドイッチや菓子パンなどの季節のパンをまめに告知しています。また、デパートなどの催事などもお知らせもフェイスブックで行い、常に最新の情報を発信しています。
根津にあった人気ビストロ「マヌビッシュ」(現在は閉店)で出していたパンが好評だったために文京区西方にベーカリーを出店したのが1999年。以来、パンの美味しさにはまった地元の人やタクシーの運転手などの口コミで、さまざまなお客様が引っきりなしに訪れます。「パンはあくまでも料理と一緒に楽しむもの。毎日食べても飽きないように、素朴で気取ることのない味を追求しています」(山本さん)。
「しっかり焼きあげられていて、みみまでおいしい!」と定評があるのが、マヌビッシュのパン・ド・ミです。「パン・ド・ミは外側の四隅に白さが残る程度に焼くと、みみまでやわらかいパンに焼き上がります。でも、マヌビッシュのパン・ド・ミは四隅がカリッとするまで火を入れるため、外側(みみ)はカリッとしっかりとした食感で中身はふんわりやさしい食感になるんです」(山本さん)。食べて見ると、中身と外側の食感の違いがかめばかむほどに満足感をもたらしてくれます。「中身はほんのりとした甘さがあります。毎日食べても飽きないように、ギリギリの甘さに仕上げています」(山本さん)。確かにこの味は、虜になる味と言えるでしょう。
文京区西方は下町の雰囲気を色濃く残しながら、昔から住んでいる熟年層や新しく移り住む若い世代が入り混じる地域。アトリエ・ド・マヌビッシュはこの地で15年になります。店に入ると目の前に遠赤外線効果のある石を用いた大きなパン釜があり、休む間もなく、パンを焼き続けています。パン・ド・ミは、1時間ごとに12本ずつ焼き上がりますが、週末はほぼ予約でいっぱい! 平日も店を訪れる前に予約しておいたほうが安心の人気商品です。
世田谷線松陰神社前の駅から徒歩1分。パン屋が競合する世田谷で2009年のオープン以来、第一線で活躍し続けるブーランジェリー。黒とダークな木目を基調としたおしゃれな店内には、50~60種類のパン、10数種類の焼き菓子、惣菜パンが8~10種類、季節のプリン2~3種類が並びます。「だれが食べてもおいしいパンを目指しています」と語るオーナーシェフの須藤さん。棚には確かな技術でつくられたことが伝わる、さまざまな美しいフォルムのパンがディスプレイされています。
ブーランジェリー・スドウの自信作が、自家製ホップ種を用いた「世田谷パン」(角食)と「世田山パン」(山食)。1日2回、9時30分と16時40分ごろにそれぞれ40個ずつ焼き上がりますが、それらはほぼ予約済みというからすごい! 通常のパンよりも水分が多い生地を使用し、ホップ種独特の香ばしい香りとなめらかな口どけを醸し出しています。「2種類のパンは生地の配合は同じですが、発酵加減、焼き方が違うため、まったく違う味、違う食感に仕上がります」(須藤さん)。
ブーランジェリー・スドウは、「ペルティエ」「ジョエル・ロブション」「マリアージュ ドゥ ファリーヌ」といった数々の名店でシェフを務め、さまざまなコンクールの受賞歴を持つ須藤秀男さんと、以前の店で共に修業していた奥さまの枝里子さんがふたりで作るパンとお菓子のお店。「味はもちろん、それぞれのパンの表情がよく見えるように、パンの向き、並べ方、照明の当て方にもこだわります」(須藤さん)。こういったパンへ想いを込めた演出がお客様のパンを選ぶときのワクワク感をさらに上げてくれるのです。
世田谷パン・世田山パンと同じ自家製ホップ種を使ったパンも人気です。まずはコッペパンに北海道十勝産契約栽培の小豆あんと北海道産発酵無塩バターをはさんだあん発酵バター。塊のまま挟まれたバターの塩けがアクセントです。コロンとしたフォルムのチョコロールには、ベルギー産チョコレートがたっぷり。ココアパウダーのほろ苦さがチョコの甘さを引き立てます。そして、売り切れ必須なのが世田谷パン・世田山パンで作ったハニートースト。レンゲハチミツと北海道産の無塩バターをたっぷり染み込ませています。表面をカリッとキャラメリゼしたハードな食感が大人好み!
「メゾンカイザー」など有名ブーランジェリーで経験を重ねてきた金井孝幸シェフが、地元である西日暮里に2006年にオープンしたお店。売り場5坪、厨房10坪の小さなベーカリーですが、棚にはハード系、デニッシュ系、食パン系、惣菜パン類など約80種類のパンが並びます。トレンドを意識したハードなパンが人気ですが、「小さいお子さんからお年寄りまで、地域の皆さんが気軽に立ち寄れるように、幅広い種類のパンを用意しています」(金井さん)。2014年4月には、上野にコッペパン専門店「イアコッペ」をオープン。イアナック特製のコッペパンに様々な具材をはさんで提供しています。
イアナックの食パンは角食、パンドミ、雑穀の食パン、ぶどうパンの4種類。「イアナックのパンに使う酵母は、ルヴァンリキッド、酒種、イチジク酵母の3種類の酵母とイーストを併用しています」(金井さん)。パンドミとぶどうパンは酒種を使い、角食と雑穀の食パンはルヴァンリキッドで使った生地で作っているとか。粉は日清製粉の「セイヴァリー」や「レジャンデール」など、小麦の風味を最大限に生かすことができる上級のものを使用。人気があるのは角食で、みみまでやわらかで、やさしい甘さが感じられる味。「食べやすくて、毎日食べても飽きないことが大事だと思っています」(金井さん)。角食の焼き上がり時間は9時ごろ、12時ごろの1日2回。予約も受けつけています。
スタッフの意見やお客さんのリクエストを取り入れたり、旬食材を使って季節感を意識した新作パンを「フェア」と銘打って月替わりで登場させるなどして、毎日食べても飽きないラインナップがイアナックの自慢です。夏はかき氷も登場。果汁たっぷりの自家製シロップがかかり、小さなラスクを3つ添えた変わり種です。
今、流行りのキューブ型パンの「パンドラ」は、パン・ド・ミに使われている酒種を使ったもの。酒種生地にカスタードを練り込み、ねっとりと甘いチョコレートをたっぷり巻き込んでいます。表面のナッツの香ばしい食感でおいしさを相乗効果。ごく薄のパン生地にたっぷりのあんこを詰め込んだ酒種あんパンも人気です。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2014年10月)のものです