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エスプーマ(泡)スープのラーメン

関西ラーメン界の新風、エスプーマ(泡)スープのラーメン。エスプーマとはスペイン語で“泡”という意味です。泡がぶくぶくと立った斬新なスープのラーメンは大阪・京都・兵庫で注目を集めており、行列ができる店も少なくありません。スープの泡立て方、合わせる麺の工夫などについて各店にお聞きしました。ぜひ商品開発の参考にしてみてください。
  • 麺や 一帆
  • かしや
  • 京都 龍旗信
  • ラーメン工房 あ 宝塚店

麺や 一帆

昼はラーメン店[麺や 一帆(いっぽ)]、夜は居酒屋[炭ぜん]という“二毛作”経営。もとは焼鳥が主体の居酒屋でしたが、提供していた鶏ラーメンが評判となり、昼は[麺や 一帆]という別の屋号でスタートしました。ラーメン店・居酒屋、どちらも手を抜かない本格的なメニューを展開しています。場所は、地下鉄谷町線出戸駅から徒歩3分。商業でも観光のエリアでもない住宅地・平野に、全国のラーメン好きがわざわざ足を運ぶ理由は、エスプーマスープのラーメンでした。

麺や 一帆
住所:大阪府大阪市平野区長吉長原西1-3-13
電話番号:06-6777-8108
営業時間:11:30~14:30、17:30~23:00
※祝日は11:30~14:30のみ営業
定休日:日曜

ブレンダーで泡立ててクリーミーに

昼に提供しているラーメンは全5種類。そのうち、エスプーマスープのラーメンは「白湯鶏そば」の<芳醇旨み醤油仕立て>と<天然塩仕立て>の2種類です。「白湯鶏そば」は、モミジやごく少量の野菜を約6時間かけて炊いたスープがベース。醤油バージョンは、四国・小豆島の醤油2種を合わせて寝かせたものを使用。塩バージョンは、岩塩・海塩・くんせい塩を3種混ぜて使っており、トッピングには柚子とメンマを採用。同じベースのスープなのに全く異なる味わいで、材料選びにも味の工夫にもオリジナリティを感じます。

どちらのラーメンにも、78℃前後の油で2~3時間茹で揚げた豚肩ロースのチャーシューと、65℃で30~40分茹でた鶏胸のチャーシューの2種が付きます。豚肉も鶏肉も、低温でゆっくり火を通すことで、ジューシーさを実現しています。麺は中細ストレート。もちもちとした麺に、クリーミーなエスプーマスープがからみます。

「すべて独学で探り当てた味です。スープをハンドブレンダーで泡立てる方法は自分で考えました。麺とのからみがいいことと、見た目のインパクトが強いことが理由です。他店でもエスプーマスープを使用しているというのは、後から知ったんですよ」(オーナー・原田智文さん)

飲んだ後のシメにもぴったり

夜の居酒屋営業ではこれらの2種類の他、混ぜそばなどのラーメン、限定メニューの計4種類の麺を提供しています。週2回も変わる限定メニューは、鶏白湯スープをあごだしや煮干しなど魚介系のダシで割ったラーメンを中心に開発しています。常連さんは「お酒を飲んだ後のシメはラーメン」と目的を持って来店しており、2人で1杯をシェアするカップルやサラリーマンも多いようです。また、ラーメンとお酒だけを注文するお客さまもいます。

「近隣サラリーマンの昼食にも、お酒の後にもさらりと食べられるようにも、昼夜ともに満足いただけるよう日々進化させています。開発当初よりも、使用するモミジの量は倍近くに増やしました」と、原田さん。

とがりすぎないのにグッと印象に残る味わいのラーメンは、地元民だけでなく遠方から足を運ぶラーメン好きも虜にしています。

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かしや

ラーメン好きの店主が研究を重ね、2012年にオープンした[かしや]。東京で出会った師に教えを請い、研究を重ねてたどりついたのは優しい風味の豚骨スープでした。大阪市内でも下町情緒が色濃く残る玉出商店街すぐの場所にある小さな店で、客席はカウンター8席のみ。平日でも行列ができるほどの人気店を、夫婦2人で切り盛りしています。

かしや
住所:大阪府大阪市西成区玉出中2-4-21
電話番号:070-5661-8757
営業時間:11:30~14:00、18:00~20:00
定休日:月曜、土曜・日曜夜

豚骨と和ダシをブレンド

こってりと濃厚でまろやかなスープ。[かしや]の豚骨ラーメンは、豚骨好きも、そうでなかった人も、一度食べるとやみつきになる優しい味です。 

創業当初は、パンチが強くなかなか受け入れてもらえなかったという豚骨スープですが、2年半をかけて味を改良し、2014年夏からはスープを泡立てる現在のスタイルに。その結果、平日でも行列ができる人気店になりました。昼過ぎに売り切れてしまうこともしばしばだそうです。

「スープを泡立てる手法は、TVでパティシエが生クリームを泡立てているのを観て思いついたんです。最初はスープを注いだ丼の中で泡立てていたのですが、それではスープの温度がどんどんぬるくなってしまう。そこで、火を入れる前のスープをハンドミキサーで泡立てる方法に変えました」(店主・柏原匡さん)

エスプーマスープのメニューは、名物の和風とんこつラーメン。濃厚な豚骨スープと、メジカや本カツオ、干しシイタケなどで取った和ダシを合わせたスープに、ニボシやサンマで作った魚介オイルを合わせて使っています。スープは、泡立てることで柔らかく軽い口当たりに変化し、固めに茹でた中太ちぢれ麺に程よくからみます。

ラーメンイベントに積極的に参加

一躍、人気店の仲間入りをした[かしや]さんですが、「店の規模を広げようとは思っていません」と、柏原さん。その理由は、自家製麺の製造量に限界があるからです。「このエスプーマスープに合う麺を追求した結果、自家製の中太ちぢれ麺にたどりつきました。僕が毎朝作っていますが、低かん水で扱いが難しく、量産ができないのです」(柏原さん)。

もちもちした独特な食感の自家製麺を使用しているのは、和風とんこつラーメンのみ。メニューに並ぶ、濃厚な豚骨ラーメンと魚ダシのラーメンの2種類には、製麺屋さんで作ってもらっている細ストレートの麺を使っています。
柏原さんは、店舗の規模はそのままにする代わり、大阪のラーメン店をめぐるスタンプラリーなどのイベントや、他ラーメン店とコラボレーション企画に参加するなど、ラーメン好きの輪を広げる試みには積極的に参加されています。

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京都 龍旗信

大阪府堺市発の塩ラーメン店[龍旗信]。堺市に総本店と本店、そして大阪府下、京都の6店舗があり、イギリスにも和食店と合同で経営をする店が1店舗あります。京都のお店があるのは、繁華街・河原町とビジネス街・烏丸の中間。主な客層は、買い物途中の若い男女や、20代~年配のビジネスマンです。

京都 龍旗信
住所:京都府京都市中京区蛸薬師通麩屋町東入蛸屋町157-11
電話番号:075-256-2279
営業時間:11:30~15:00、17:30~0:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)

泡立ちよりも乳化を重視

透明感とコクを両立させた塩そば(ラーメン)で有名な[龍旗信]ですが、「もう一品、看板メニューを作りたい」と、「鶏たいたん」というラーメンを開発。“たいたん”とは、京都の言葉で炊いたものという意味。“大根の炊いたん”などのおばんざいのネーミングからヒントを得て付けられました。「鶏たいたん」を提供しているのは、こちらの京都のお店と大阪なんば店の2店舗のみです。

「鶏たいたん」のスープは、全部飲み干しても喉が渇かない、胃もたれしないヘルシーさを目指して作られています。鶏ガラやミンチ、河内鴨のガラ、さらに玉ネギや自家製の干しゴボウを入れて炊いたスープに、天然の岩塩や伊勢のムール貝を使った塩ダレを合わせ、玉ネギとニンニクを煮揚げした香味油で香りづけをして複雑な味わいを実現。油分と水分が分離しやすいため、スープブレンダーでかき混ぜて提供していますが、「厳密にいうと、ウチの『鶏たいたん』はエスプーマではありません」と、店長代理の山本裕基さん。確かに、ブレンダーを使う目的はスープを乳化させるためなので、泡立ちはほとんどありません。

老舗の製麺所「棣鄂(ていがく)」で作ってもらっている国産小麦のストレート麺は歯切れの良さを重視。チャーシューは、みりんで甘めに味付けした豚バラと、ショウガできりっと仕上げた肩ロースの2種類。かき揚げのような白ネギ揚げやトッピングの人参葉、さっとかけられた七味で、ふくよかな香りをさまざまに楽しめるのも特徴です。

立地に合わせた味付け


看板メニューを、「塩そば」と「鶏たいたん」の2つにしたことで、お客さまの数は激増したそうです。

「今までは、外に置いているメニュー看板を見たお客さまが“「塩そば」しかないのなら、この店はやめよう”と、帰ってしまうことがありました。しかし、「鶏たいたん」をメニューに取り入れてからは、カップルやグループ客がすっと来店されるようになりました」(山本さん)

「鶏たいたん」を提供しているのは、こちらの京都のお店と大阪なんば店の2店舗のみです。しかし、大阪のなんば店では京都よりも濃度の高いマニアックなスープで、トッピングも全く異なります。立地や客層に合わせ、柔軟な姿勢でメニュー開発を行う[龍旗信]の戦略は、学ぶべき点が多くありそうです。

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ラーメン工房 あ 宝塚店

1979年創業の「赤い屋根」という喫茶店が前身。1997年より業態を変更し、ラーメン専門店として宝塚店の他に兵庫県三田市、大阪府豊中市の計3店舗を展開しています。武庫川が目の前に見えるテラス席は20席あり、空には伊丹空港発着の飛行機が飛んでいるのが見えます。

ラーメン工房 あ 宝塚店
住所:兵庫県宝塚市湯本町9-10
電話番号:0797-84-3330
営業時間:11:00~23:00
定休日:年末年始のみ

テラス席のあるおしゃれな店

「一杯のラーメンで、究極の癒しを」と、味だけでなくサービスも充実させている[ラーメン工房 あ 宝塚店]。フロアはすべてバリアフリーで、ウェイティングスペースのソファには子ども向けの絵本や折り紙を用意。小さなお子さまからファミリー、年配客まですべての層がゆっくりとくつろげる工夫をしています。

「当店の強みは、味だけでなく接客にもあります。地元のお客さまが多いので、なるべく顔を覚えることと、相手に合わせた丁寧な対応を心がけています」(店長・近藤崇功さん)

沸騰だけで泡立ちを実現


ラーメンは、豚骨ベースのラーメン3種、しょうゆ×鶏ガラ1種、トマト豚骨1種、スープなしの油そばが1種。スープが泡立ったエスプーマのラーメンは、豚骨の「『あ』ラー麺」「背脂とんこつ」「味噌」の3種類です。 スープは豚骨を12時間以上煮込み、濾した後に冷蔵庫で1日寝かせて作っています。材料には、国産豚骨、野菜、フルーツ、国産モミジ、豚皮、さらに昆布ダシを使用。驚くのは、ブレンダーなどを使っていないのに泡立ちがあること。

「スープを沸騰させているだけです。豚骨の脂分と水分など、8つ以上の組み合わせで乳化状態を作り、さらに熱を加えることで、自然と脂泡ができるのです。開発当初は、お客さまから“石けんでは?” “気持ちが悪い”という苦情がありましたが、この泡こそが美味しさの秘密ですとアピールした結果、ようやくエスプーマラーメンが認知されるようになりました。今ではお客さまの約5割が注文されますね」(統括マネージャー・松坂奉成さん)

チャーシューは九州産の豚バラ冷蔵肉に鹿児島の麦味噌とマッコリで下味を付け、20年継ぎ足して使っているタレで48時間熟成させてから作る焼き豚。麺はスープとのからみ具合を重視し、低加水の細麺を使っています。 スープはまろやかな口当たりで、ふんわりと華やかな香りが鼻をくすぐります。
ラーメンは日々研究を重ねているそうですが、舌の感覚だけに頼らず、さまざまな数値を出して分析しているそうです。

「現在の豚骨スープに行き着くまで3~4年かかりました。現在の豚骨スープのブリックス値(糖度を表す濃度値)は8.5以上。普段から、脂、旨み、乳化のパーセンテージなどを測定し、科学的な分析をしながら改良していっています。お客さまの層が幅広いので、目指しているのはシンプルながら最上級の味。研究に終わりはありませんね」(開発担当・松坂美和さん)

今回取材したお店でお話しを伺って分かったのは、同じスープでも泡立てることで驚くほど風味が変わるということです。どのお店も、「マイルドな味わいを目指してたどり着いたのが、エスプーマ(泡)スープだった」とおっしゃっていました。クリーミーに泡立ったエスプーマスープは、味が柔らかくなることと、麺とからみやすいことが特徴です。泡立ちばかりが目に行きがちですが、ヒットの理由は「珍しいから」ではなく、「誰もが親しみを持てる」「優しい味わい」だからだと言えます。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年6月)のものです

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