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専門店の焼きそば

B級グルメの代表選手「焼きそば」。すっかりおなじみになったご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」でも毎年多くのメニューが登場するなど、幅広い支持を集めています。そんな「ご当地焼きそばブーム」に加えて、ソースの香り、シズル感、手軽さと、人気を集める要素はたくさんあるはずの焼きそばですが、専門店はそれほど多くありません。そんな中、麺や提供方法にこだわって根強いファンを獲得する焼きそば専門店をご紹介します。
  • やきそば専門「みかさ」
  • ブラッカウズ
  • BROZERS’人形町店
  • SUNNY DINER 本店

やきそば専門「みかさ」

11時の開店とともに9つあるカウンター席が一気に埋まり、行列も珍しくない人気店。それがやきそば専門「みかさ」です。B級グルメがひしめき合う激戦区・神田神保町にあって確かな存在感を放ち、ファンを拡大中です。

やきそば専門「みかさ」
住所:東京都千代田区神田神保町2-24-3
電話番号:03-3239-5110
営業時間:11:00〜22:00
定休日:日曜

メニューは「やきそば」のみ。ソースor塩だけを選ぶシンプルスタイル

学生や会社員が多く、「グルメの街」「ランチ激戦区」として知られる東京・神田神保町。この地に、やきそば専門店「みかさ」がオープンしたのが2013年12月のこと。ところが、お店の暖簾には「自家製生めん」「やきそば専門」の文字とともに、「創業昭和五十九年」と記されています。

「もともとは、熊本でずっとお店を営んでいました。向こうではやきそば以外にもお好み焼きを提供していましたが、東京進出を機に、座席数や回転率を考え、やきそばに絞って始めたのがこの『みかさ』です」
東京で開店するまでの経緯を教えてくれたのは代表の福島三郎さんです。

「東京のお店では品質管理と使い勝手を考慮し、麺に使う小麦粉の種類を変えました。あと、熊本時代と変えていることといえば、ソースの味付けですね。熊本をはじめ九州地方は甘みの強い味付けが特徴です。ただ、そのままでは東京では支持を集めにくいと考え、ソースの調合を変えて提供しています」

「みかさ」で提供するメニューはドリンクをのぞけば「やきそば」のみ。麺の量、ソース味か塩味か、イカエビ入りかどうかだけを選ぶ、極めてシンプルなスタイルです。シンプルだからこそ、麺に自信と誇りを持っていることがうかがえます。そのこだわり麺は北海道産小麦粉100%で作る自家製生麺。夏場は一晩、冬は2日程度熟成させてからお店で提供しています。

熟成と手もみで鍛えた麺だからできる、油を使わない調理方法


「熟成させることで、生地がしっかりして食感がグッと強くなります」と語る福島さん。その言葉どおり、コシのある平打ち麺は噛むほどに味わい深く、口の中で確かな存在感を放ちます。そして熟成以外でもうひとつ特徴的な行程が、製麺したあとに、さらに手で揉むこと。こうすることで麺がより一層鍛えられて、油をひかなくても麺が鉄板にこびりつかなくなると言います。

「油を使うと確かに焼きやすいんですけど、その油の分、全体の温度も上がってしまって、野菜などの具材から煮汁が出てしまいます。煮汁が出ると一緒に旨味も逃げてしまうし、鉄板で“焼く”というよりも“炒める”感覚に近くなってしまいます。鉄板で焼くのは、ソースをあえて焦がすことで風味・香りを強くしたいから。そのためにも、油をひかずに焼くことができる麺が欠かせません」

芳ばしいソースの香りに引き込まれるように、来店客が途切れない「みかさ」。ただ、人気があるからといってすぐに多店舗展開することは考えていない、と福島さんは語ります。

「麺を焼く行為に経験と感覚が必要ということもあるため、チェーン展開は簡単にはできません。それよりも今はまだ、このお店をしっかり経営することで、『みかさ』の味を知ってもらうことが第一だと考えています」

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東京焼きそば

東京のランドマークタワー「東京スカイツリー(R)」。その足元にある「東京ソラマチ(R)」に店を構え、地元客や観光客が訪れる焼きそば専門店が「東京焼きそば」です。焼いた麺をつけ麺スタイルで食べるオリジナリティが、確かな支持を集めています。

東京焼きそば
住所:東京都墨田区押上1-1-2東京スカイツリータウン・ソラマチ4F
電話番号:03-5637-8177
営業時間:10:00〜22:00
定休日:不定休

特製ダブルスープでつけ麺風に食べる “新感覚焼きそば”

「東京の新しい下町」として、日々、観光客で賑わいを見せる東京ソラマチ。そんな人気スポットに店を構えるのが「東京焼きそば」です。

この店のオリジナリティは、なんといっても独自の「つけ麺」スタイル。黒、白、赤の3種類から好みのソースを選び、その麺を牛だしと和だしの特製ダブルスープでつけ麺風に食べるという“新感覚焼きそば”が好評を博しています。その狙いを、店長の渥美公博さんは次のように語ります。

「通常の『焼きそば』というものから進化した形で提供するためにはどうすればいいのか? そこを突き詰めて生まれたのが3種類のソースであり、麺をつけ麺スタイルで食べるとより美味しくて面白いんじゃないか、という発想でした」

「黒焼きそば」は、じっくり煮込んだ牛すじと熟成たまりソースで焼き上げた、いわゆるソース焼きそば。「白焼きそば」は鶏あばらと天然塩であっさりと焼き上げ、さらに醤油でさっぱりと仕上げたもの。「赤焼きそば」は、カプサイシンを多く含む自家製の韓国風辛味噌・ヤンニンジャンを絡めて濃厚な味に仕上げたひと品です。それぞれに付いてくるつけダレも、麺と同様に黒・白・赤の色分けが施され、見た目の鮮やかさとともに、味の差別化を生み出します。“焼きそば”でも“つけ麺”でも、そしてどのソースでも美味しく食べられるようにとこだわった平打ち生麺との相性も抜群です。

焼きそば・つけ麺・替え焼き玉と多様な楽しみ方ができる「東京焼きそば」




つけダレの味と色の違いについて、渥美さんが解説してくれました。
「基本となるダブルスープはどれも一緒です。そのスープに、『黒』であれば岩海苔を入れることで風味UP。『白』は柚子を入れてさっぱりと。『赤』のスープには辛味噌が入っています。それぞれ、焼きそばのソースの邪魔をせず、出汁との相性をみながら、色分けと味付けをしていきました」

「東京焼きそば」でオススメする食べ方は、まずは「焼きそば」として食べて麺とソースの味を堪能し、次に「つけ麺」スタイルに移行。麺もソースも表情をガラリと変えます。さらに特徴的なのが替え玉ならぬ「替え焼き玉」。黒・白・赤のどのソースを選んでいても、替え焼き玉では岩海苔が乗った麺が運ばれてきます。

「一度の来店でたくさんの味わいを楽しんでいただきたいということで、替え焼き玉では別な味を提供するアイデアが生まれました。常連のお客様になるほど、毎回頼んでいただけますね」

東京スカイツリーの足元に位置するだけあって、来店するのはサラリーマンや地元客以外にも観光客や外国人など、多岐に渡ります。ターゲットが広いからこそ、ソースの味が3種類から選べること、そして焼きそば・つけ麺・替え焼き玉と多様な楽しみ方ができるオリジナリティを強く打ち出していくことが「東京焼きそば」の目下の目標です。

「今現在、つけ麺スタイルの焼きそばはまだまだ認知されていないと思います。でも、電波塔として情報を発信し続ける東京スカイツリーの足元に店を構えているメリットも生かして、『東京焼きそば=つけ麺の焼きそば』という新スタイルをしっかり発信していきたいですね」

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焼きそバー KINOKOYA

ご当地焼きそばブームの火付け役ともいえる「富士宮やきそば」を東京で味わえると人気なのが、東京・西葛西に店を構える「焼きそバー KINOKOYA」です。移動店舗「よこちゃん号」とともに、本場の味を求めるファンから根強い支持を集めています。

焼きそバー KINOKOYA
住所:東京都江戸川区西葛西6-23-3秀合ビル1F
電話番号:03-3686-1317
営業時間:[昼]11:30~14:00/[夜]17:00~23:00
定休日:日曜

「富士宮やきそば学会」の認定を受けた専門店

全国のご当地グルメが集まる「B-1グランプリ」の第1回大会(2006年)と第2回大会(2007年)で連覇を達成し、「ご当地焼きそばブーム」を牽引した富士宮やきそば。そんなブームになる以前から「富士宮やきそば学会」の認定を受け、東京で地道な営業活動をしてきたのが、西葛西にある焼きそば専門店「よこちゃん」です。2013年秋の店舗リニューアルに伴い、店名を「焼きそバー KINOKOYA」に一新した後も、富士宮やきそばを味わえる店として人気を博しています。

「オーナーの横田哲典は、B級グルメブームが起きる前から富士宮やきそばの大ファン。好きが高じて現地・富士宮で修行をして『富士宮やきそば学会』の認定を受け、この店を始めたと聞いています」

2年前のリニューアルとともに店長になった組澤成海さんが、開店に至った経緯を語ります。組澤さんはオーナーから富士宮やきそばの製法を受け継ぎ、肉かすとイワシの削り粉が効いた本場と同じ富士宮やきそばを提供しています。

「『富士宮やきそば』を名乗れるのは、富士宮市内にある4つの製麺会社の麺を使っているお店だけ。当店ではその中の「曽我めん」さんから麺を仕入れて使っています。一般的な麺よりも太くて歯ごたえがあり、その麺だけを焼いたり揚げたりして食べても美味しい! それくらい旨味がある麺を使っています」

店舗型の「焼きそバー」、移動店舗の「焼きそばカー」



富士宮やきそばとしての定義を守りながら、この店ならではの特徴としてこだわっているのが麺の焼き方だと組澤さんは語ります。
「当店の焼き方は『半飛ばし』。ソースと麺をしっかりと絡める焼き方で、焦げ過ぎず、水分でベチャベチャになり過ぎない、微妙なさじ加減にこだわる焼き方です」

東京でも本場・富士宮の味が味わえる店として、さらなる認知UPを図りたいという「焼きそバー」。その一環としてオーナーの横田哲典さんが手がけているのが、もともとの屋号「よこちゃん」を冠した「焼きそばカーよこちゃん号」の運営です。月曜から金曜まで、日替わりで決まった場所に調理場付き専用車で出店。さらに、土日は各種イベント会場でも営業し、「富士宮やきそば」と「オムそば」の2品を提供しています。

「都内の大学キャンパスや東京国際フォーラムなど、曜日ごとに決まった場所で営業をしているんですが、それぞれの場所で常連さんがいらっしゃいます。そこで当店の存在を知った方が『じゃあ、お店でも食べてみよう』と、わざわざ西葛西に来ていただくこともよくあります。反対に、当店に来たお客様に『平日なら都内のここでも食べられますよ』と移動店舗をオススメすることもあります。『やきそば』という親しみのある料理だからこそ、味や製法にはこだわりつつも、いろんな場所で手軽に富士宮やきそばが食べられるお店として広まっていければ嬉しいですね」

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焼きそばのまるしょう

自家製の生麺にこだわり、パスタ店で培った味のバリエーションを最大限に活かした、幅広いメニュー構成が支持を集める「焼きそばのまるしょう」。日本一の焼きそばチェーン店を目指し、千葉県を中心に勢力を拡大中です。

焼きそばのまるしょう
住所:千葉県柏市豊四季167-34
電話番号:04-7189-7018
営業時間:[昼]11:00~16:00/[夜]17:00~23:00
定休日:年中無休(年末年始臨時休業あり)

生麺にこだわった焼きそばを味わってもらいたい

千葉県松戸市、流山市でチェーン展開する焼きそば専門店「焼きそばのまるしょう」。オーナーの関口雄一さんは、大手パスタ専門店で働いた経験をもとに、「生麺にこだわった焼きそばを味わってもらいたい」というお店のモットーを語ります。

こだわりの麺は、豊四季本店にある製麺室で作る「自家製生麺」。中華麺用粉や全粒粉など3種類の小麦粉をバランスよく配合することで、モチモチした食感と、小麦の風味豊かな味わいを実現しています。

そして、まるしょうのもうひとつのこだわりが、バリエーション豊かなメニュー構成です。定番のソース味はもちろん、醤油味、塩味、ナポリタン味、カレー風味、韓流タイプなど、メニューは常時10種類以上。期間限定メニューもラインナップに彩りを加えます。

「パスタ店の場合、トマト系があれば和風味ありと、味のバリエーションの豊富さが人気のひとつだと思います。それを焼きそばでできれば面白いんじゃないか、というのがこの店を始めたキッカケのひとつでもあります」

一番人気の「まるしょう特製ソース焼きそば」には、大正12年創業の老舗メーカー「トキハソース」のソースを数種類ブレンドして作ったまるしょうオリジナルのソースを使用。メニュー数は多くても、ひとつひとつの素材にこだわりが徹底されています。

焼きそばはもっともっと懐の深い料理


取材を通して関口さんが何度も口にしたのが「焼きそばにはもっとできることがあるはず」という可能性についてでした。

「『焼きそば』と聞くと、屋台やバーベキューのソース焼きそば、もしくは家で作る三食入りの焼きそばを連想する人がほとんど。でも、焼きそばはもっともっと懐の深い料理だと思っています。生麺にこだわるのもそうですし、定番のソース味にしても店の麺にあうのはどのソースか、具材やトッピングは今のままでいいのか、常に研究を続けています。その積み重ねを鉄板の上で表現したいと思っています」

B級グルメとして各地で認知度・普及度が高まっている今だからこそ、麺や具材、そして味付けにもこだわりのある焼きそばを提供する……その先に掲げるのが生麺文化の普及であり、日本一の焼きそばチェーン店という目標です。

「『つけ麺』というジャンルを大勝軒の山岸一雄さんが広めていったように、『生麺で味わう焼きそば』というジャンルを確立して、その元祖として当店が位置づけできれば面白いですよね。焼きそばのチェーン店といえば、アペタイトさんや想夫恋さんが有名ですが、ラーメンやパスタの世界と比べると、まだまだチェーン展開がされていない分野です。それだけ難しい挑戦と言えるかもしれませんが、『生麺で味わう焼きそば』というジャンルを確立して、まるしょうの〈笑〉マークを世の中に増やしていきたいと思います」

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全国的に「ご当地焼きそば」がブームになっても、まだまだ数は少ない「焼きそば専門店」。その中にあって、今回取材した4店舗は、メニューのバリエーションにこだわる店もあれば、あえてメニューを絞る店、食べ方に工夫する店と差別化の手段はさまざま。一方で共通していたのは麺に対するこだわりと飽くなき向上心です。「ブーム」のままではすぐに飽きられ、忘れ去られてしまう恐れもありますが、こだわりと向上心があれば、ブームを超えた「文化」として定着するはず。今後、「焼きそば専門店」は、もっと増えてくるのではないでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年8月)のものです

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