6月末、「GARDEN HOUSE CRAFTS(ガーデンハウス クラフツ)」がオープン。本格的な料理とパンが楽しめるデリ&ベーカリーカフェとしてスタートした。運営母体はログロード代官山の基本計画に携った「(株)THINK GREEN PRODUCE」である。
ここは鎌倉のレストラン「GARDEN HOUSE」の姉妹店ということである。“CRAFTS”と複数形にしたのは、手づくり集団を表しているという。コンセプトはローカル&クラフト。地域の生産者や作り手の顔が見える素材を使い、日常の暮らしにちょっと上質な食の提案をしたいという。
敷地の緑の散策路を進むと、一番奥に「ガーデンハウス クラフツ」がある。中に入ると右奥には食事パンを中心に十数種のパンとスイーツが、そして正面にはデリとドリンクコーナーが並ぶ。
ヘッドベーカーの村口絵里さんによると、カンパーニュなど、これまで日本にはあまりない食事パンを中心に品揃えしたという。
国産小麦粉と自家製酵母を使ったこだわりのパンは、全粒粉で作るカントリータイプと、クロワッサンなどのペイストリー、フランスパンの3カテゴリーで、約15アイテムが揃う。中でも看板商品のカンパーニュ(1300円、1/2 650円、1/4 350円)は、強い香りと酸味のバランスが抜群で、そのしっとりともちもちした味わいに驚く。オーガニックのホクシン品種の小麦粉「スムレラ」を約5割、石臼挽き粉の「ミナミノカオリ」、全粒粉「キタノカオリ」、それに「ゆめちから」をブレンドし、自家製酵母を使って丁寧に焼き上げたカンパーニュは、その個性的な味わいに圧倒される。
「オリーブカンパーニュ」(1400円、1/2 700円)はカンパーニュ生地にブラックとグリーンのオリーブと5種類のハーブ、そしてレモン果汁とレモンゼスト(果皮)を入れたもので、その爽やかな味わいが絶品。サンドイッチやタルティーヌによく合う。
一番人気というクロワッサン(320円)はザクザクとした食感としっかりした味わいが特長。イーストはポーリッシュ種とルヴァン種を使用し、小麦粉は「ゆきちから」と石臼挽きの「スムレラ」を使用。生地量が多く、そのボリューム、存在感は大きい。「春よ恋」の全粒粉を使った全粒粉食パン(700円、1/2 350円)は、奥深い香りともっちりとした味わいに、何度でもリピートしたくなる。
菓子類も充実しており、専門の菓子職人を抱えている。ショーケースには各種ケーキ、クッキー、マフィンなど大ぶりのスイーツが並び、目を惹く。
特徴的なのは、デリ&ベーカリーカフェの名の通り、デリ専門の料理人がいて、カフェメニューやオーダーサンドイッチを充実させていることだ。「パンに合わせた料理を開発することができるし、逆に料理に合わせたパンもできる。ここが強み」と村口さん。
新鮮な素材を使ったデリは、どれもが本格的でその完成度の高さに驚かされる。ランチタイムのデリセットでは本格的な料理をお得に味わうことができると評判だ。8月のこの日のデリセットは、ディルポテトサラダ、キヌアのタブレ、冷たいコーンとポテトのスープ、ストラータのハーフにバゲットなどパンがついて1250円。一つひとつの料理がヘルシーで優しい味わいに感動する。
店内のカフェスペースは16席だが、テラス48席、ルーフトップ32席という広いスペースで、自慢の料理とパンをゆったり楽しむことができる。
近隣に住む人々に、散歩がてらパンを買いにきていただきたいと語る村口さん。広いスペースを生かし、食と文化のイベントも実施していきたいと語る。日常を上質なものにしてくれる心地よいカフェとして、ガーデンハウス クラフツは今、その存在価値がジワジワ高まっているようだ。
敷地の中ほど2号棟にオープンしたのが「CAMDEN’S BLUE STAR ☆ DONUTS(カムデンズ ブルー スター ドーナツ)」である。このドーナツ店は、米国オレゴン州ポートランドで大人気の店で、日本初出店として話題となった。
ここは米国西海岸の人気のライフスタイル複合セレクトショップ「Fred Segal」の日本1号店が経営しており、オシャレなフードマーケット「THE NART AT FRED SEGAL」の中に、ドーナツショップがあるというスタイルになっている。フレッド シーガルとカムデンズ ブルー スター ドーナツ、両社揃っての日本初出店が実現した。
白を貴重としたスタイリッシュなTHE NART AT FRED SEGALは、カジュアルフードの食マーケットとなっており、オーガニックフードや、ドリンク類、生活雑貨が整然と並び、見ているだけで米国西海岸のテイストが感じられる。
それに相応しく、ドーナツコーナーも清潔でオシャレ。12種類のドーナツは基本商品と季節限定商品があり、季節限定商品等はシーズンで入れ替わる。
米国での人気商品はコアントローシロップのピペットが斬新な「コアントロークリームブリュレ」380円(税抜)。アップル、レーズン、ブランデーを練りこんだ生地にシナモンとコリアンダーで風味づけした「アップルフリッター」380円(税抜)、「ブルーベリーバーボンバジルリング」380円(税抜)など。
そしてここ代官山店では日本限定の「宇治抹茶ラテ」380円(税抜)が人気という。抹茶の味わいとラテグレーズのぜいたくな味わいはまさにケーキそのものだ。中でも印象的なのはスクエアカットの日本限定「きな粉ベニエ」210円(税抜)である。
どの商品もサイズは大ぶりで、ボリュームたっぷり。こだわりの素材の味がしっかり生きており、一口食べればその完成された味わいに納得する。まさに贅沢な大人のドーナツといえる。さすがにドーナツ大国、アメリカならではのドーナツ専門店の提案と感動する。
日本でドーナツ店をオープンするに当たって、ドーナツの製造・販売は一切、プロに委託したという。
雑貨店が飲食を手がけるのは、スタッフ獲得も含め、難しい場面が多い。従ってプロに委託という決断は、懸命な選択といえる。店内から厨房が見えるが、これもあえて見せることにより、手作り感を打ち出している。実際ここでは生地づくりから最終仕上げまで、店内の厨房で作られている。本国のオリジナルレシピや原材料を限りなく忠実に使用し、その味を再現しており、プロの職人により毎日フレッシュなドーナツがつくられている。
雑貨を真ん中に、ドーナツ売り場の反対側には飲食スペースも完備している。居心地の良いカフェで、フレッド シーガルオリジナルのエイジングコーヒーと共に大人のドーナツを味わうのは最高だ。カフェに続く、西海岸のベニスビーチをイメージした広いテラス席は、心地よいスペースで、東京の真ん中にいることを忘れさせてくれる。明るくスタイリッシュな店舗と厳選素材の完成された大人のドーナツのコラボは、これまでにない新しい業態として、ファンが増殖しそうである。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年10月)のものです