2015年3月に東京・四谷三丁目で開業。同年夏の「うどん天下一決定戦2015」で初出場ながら5位を獲得し、一躍人気店となったのが「肉つけうどん うつけ」です。牛、豚、鶏と3つの特徴ある肉うどんでファンを獲得しています。
「肉うどん」と聞くと、関西では牛肉を、関東では豚肉を連想する人が多い、と言われます。ところが、ここ「肉つけうどん うつけ」では牛肉、豚肉はもちろんのこと、鶏肉でもこだわりの肉うどんが食べられるのが大きな特徴です。
「看板メニューは牛肉のつけうどんですが、豚肉、鶏肉にもそれぞれ固定のファンがいらっしゃいます」。
答えてくれたのは店長の門倉孝典さん。看板メニューである『牛肉辛つけうどん』は、たっぷりの牛肉と海苔、ネギが乗ったうどんを、甘辛いラー油つけ汁で食べるスタイル。トッピングで卵を加えると、すき焼きのような感覚を味わえるのも特徴です。
「ラー油つけ汁は、うどんとよく絡むように2種類のラー油をブレンド。またベースの出汁も“うどん×牛肉×ラー油”の組み合わせが引き立つよう、4種類の出汁をブレンドして作っています。オススメはテーブルに常設している“揚げ玉”をたっぷり混ぜて召し上がっていただくこと。いわゆる“天かす”とは違い、粉にも油にもこだわって、うどん専用に調理した揚げ玉です。『この揚げ玉、美味しい!』と、ひと瓶丸ごと使ってしまったお客様もいらっしゃいました」。
牛肉と並ぶ人気メニューが『豚肉熱汁つけうどん』。豚肉とネギ、油揚げの旨味が凝縮された熱々のつけ汁にうどんをつけて食します。
「今では牛肉と同じくらいの注文数をいただいています。意外だったのが、女性客に豚肉が好まれる、ということですね。これから寒くなってきますので、ますますご支持いただけるのではないかと期待しています」。
そしてもうひとつ、『鶏肉天つけうどん』は、いわゆる「鶏天」とはまた違う、フリッターに近い鶏肉の天ぷらが特徴の逸品です。
「特に、常連のお客様からご支持を受けています。サクサク感にこだわるため注文を受けてから揚げているのが特徴で、鶏肉天だけを単品で注文され、お酒のおつまみとして召し上がる方も多いですね。塩で食べても美味しいし、ブラックペッパーや柚胡椒で召し上がる方も。実はショウガも合うんです。いろんな楽しみ方ができるよう、さまざまな薬味をテーブルに常備しています」。
牛肉、豚肉、鶏肉にそれぞれのこだわりがある「肉つけうどん うつけ」の肉うどん。ただ、もっとも心血を注いでいるのは、うどんへのこだわり、と門倉店長は語ります。
「北海道産小麦100%使用、という素材の追求はもちろんのこと、当店では店内に製麺室を設け、打ちたて・茹でたてにこだわっているのが特徴です」。
茹でたてを提供するといっても、太くてコシの強いうつけのうどんは茹であがるまでに約15分かかります。それでは、お客様にとってストレスになるだけでなく、回転率も悪くなるばかり。そこで採用したのが、常にうどんを茹で続ける、という斬新な方法でした。
「お客様からご注文を受けてすぐに一番いい状態のうどんをご提供できるよう、当店ではうどんを常時茹で続けています。そのため、注文間隔ができた場合は、茹であがったうどんを捨て、また新たなうどんを茹で始めます。もったいないんですが、美味しいうどんをすぐに提供するための、これが最善の方法でした」。
注文から提供までの時間があまりに早いため、「茹で置きしたものを出したんだろう」と誤解されることも多かったとか。その都度、丁寧に説明するとともに、「食べていただければわかるはず」という絶対の自信があったからこそお店のファンも生まれ、また、「うどん天下一決定戦2015」での初出場5位という結果にもつながったのではないか、と門倉店長は振り返ります。
「当店のうどんは、つゆに絡みやすいよう、平打ちタイプを採用しています。つるつると喉ごし良く食べることができるので、並盛り(300g)をご注文したお客様が『これなら大盛り(450g)にすれば良かった』と言っていただくことも。実際、次にご来店いただくときは皆さんだいたい大盛りですね(笑)」。
美味しい肉うどんを食べたい、というファンの期待に応えるため、これからも「肉つけうどん うつけ」は麺を茹で続けます。
発祥は北九州の小倉市。その後、福岡県を中心に熱狂的なファンを獲得したのが「博多名物 元祖 肉肉うどん」です。そんな福岡の有名店が2015年5月、遂に関東初出店。東京・池袋にオープンした関東1号店は、早くも賑わいをみせています。
軒先の暖簾に踊るのは「博多名物」の文字。といっても、いわゆる「博多うどん」の特徴とされるあっさり目のスープや柔らかいうどんと、「博多名物 元祖 肉肉うどん」で提供する商品とは、全く趣が異なります。店長の角さんがそのオリジナリティを解説します。
「黒いスープ、ゴロゴロとした角切りの牛肉、コシのあるうどん、その中央にはたっぷりの生姜。これが『肉肉うどん』の定番スタイルです。もともとは40年以上前、北九州の小倉市で食されていたうどんを進化させたのが当店の味です。長い時間をかけ、食の激戦区・博多でも知名度が上がってきたことを受け、今年ようやく東京にも出店する運びとなりました」。
黒いスープは見た目の印象とは違い、実にスッキリした味わいなのが特徴です。その味の秘密は、いりこや昆布など数種類ブレンドして作り上げた「和風魚介黄金だし」と、アクを徹底的に取り除いた「牛黄金だし」のWスープ。あっさりしつつも深いコクを生み出します。
そして店名にある「肉肉うどん」の文字が示す通り、最大の特徴は何といっても麺の上に乗った角切りの牛肉。その横には山盛りの生姜が彩りを加えます。
「当店で使う牛肉は焼肉として食べても美味しい中落ちカルビを角切りにして使っています。仕込みの煮込み作業でとことん味をしみ込ませていますので、この牛肉だけ食べたい、という方もいらっしゃいます。そしてたっぷりの生姜が口の中をさっぱりさせるとともに、生姜の発汗効果で体の芯から温まることができます。飲んだ後の“締め”として食べる方も多いですし、飲んだ次の日の朝食としても福岡では支持を集めました。東京でもそんな風にご愛顧いただきたいですね」。
福岡で人気と知名度を獲得してきた「博多名物 元祖 肉肉うどん」。ただ、東京進出にあたっては、従来の味を打ち出すことはもちろん、さまざまな工夫と新しい取り組みも鍵を握る、と角店長は語ります。
「東京は水の硬度が福岡よりも高いため、福岡と同じ味になるよう、出汁の配分などの調整には苦労しました。また、東京店ならではの付加価値をご提供できるよう、新メニューなどにも取り組んでいます」。
そのひとつが、蕎麦も頼めるという「肉肉うどん」の特徴を活かした「両方盛り」です。
「当店では、うどんと蕎麦、どちらでもご注文いただけますので、最初はうどんを、替え玉で蕎麦を、といったオーダーをいただくことがよくあります。そこで東京店で初めて、最初からうどんも蕎麦も楽しめる『両方盛り』をメニューに加えたところ、うどん単体・蕎麦単体よりも注文が多い、という現象が生まれました。これには私たちも驚いています。また、東京店限定で「[豚]肉肉うどん」という豚肉メニューの提供も開始しました」。
この他、一番人気の『肉ごぼう天うどん』を改良した「大判ごぼう天うどん」を11月末から提供スタート。ごぼうを丸々揚げる従来のスタイルも残しつつ、かき揚げタイプを加えることで、食べやすさを訴求しています。さらに、この秋からは全店でうどんの太さを従来よりも太いものに変更。よりコシや喉ごしが楽しめるように、という狙いがあるといいます。
「もっとうどんのコシを楽しみたい、というお客様の声を受け、改良を重ねました。博多うどん特有の柔らかい麺との差別化も図れますし、当店のスープとの相性もさらに良くなったと思います。これからもお客様の声に耳を傾け、東京でもどんどん支店を増やしていきたいですね」。
東京と神奈川県の県境に店を構える「肉汁うどんの南哲」。最寄り駅までは約15分と距離がありながら、近隣住民だけでなく、遠方から車で来店するファンも多数。休日には店の前に人の列だけでなく車の列もできる人気店です。
太くてコシのあるうどんを、鰹節と日高昆布から抽出したつけ汁につけて食べる「肉汁うどん」。冷やしたうどんを熱い肉汁の中に浸して食べる「ひや肉うどん」。このふたつが「肉汁うどんの南哲」の看板メニューです。その味を支えるのは存在感ある自家製麺。店長の三七海太輔さんが、そのこだわりを教えてくれました。
「麺に使う小麦粉は九州や三重など日本各地の小麦粉4種類をブレンドして使っています。ひとつの粉だけだと、ツルツルしていてもコシがなかったり、コシはあっても表面がザラついたりとバランスが悪く、数十種類のさまざまな配合を試した末に今の4種類に辿り着きました。また、熱い汁につけても、そのつけ時間によって麺の固さや味の染み込み具合が変わるうどんを追求したら、今の太さになりました」。
その麺を美味しく食べられるよう、メニュー表には「麺の食べ方」も記載するこだわりようです。まずは麺をそのまま1本食べて小麦の風味を味わい、次は肉汁にサッとつけてうどんのコシとスープの絡みを楽しむ。そして最後はしっかりと肉汁につけることで、出汁の旨味も吸った麺を味わうことができます。このほか、無数にあるトッピングによって、味は多岐に広がりをみせます。
「店を始めるときに決めたのが、シンプルな『かけうどん』以外のメニューを『肉汁うどん』と『ひや肉うどん』の2つに絞り込むことでした。自分の性格は、ひとつのことを突き詰めるタイプ。メニューを増やすことでクオリティを下げたくなかったんです。違うメニューを求めるお客様にはトッピングの種類を増やすことで、いろんな味わいを楽しんでいただこうと思っています」。
また、トッピングメニューの豊富さとともに目を引くのが「本日の糧」という、200円で一皿分盛り放題のサイドコーナー。季節の野菜を使った漬け物や総菜、揚げ物などが日替わりで並びます。仕入れ状況によってはその日しか出会えない品が並ぶとあって、人気商品のひとつになっています。
人気店になった理由はどこにあると思いますか? そんな質問を三七海店長に投げかけたところ、意外な答えが返ってきました。
「当店が目指しているのは『日本一元気なうどん屋』。美味しいうどんを食べて元気になる、という意味はもちろんのこと、スタッフの元気の良さ、接客にこだわっています。四角四面な“いらっしゃいませ”“ありがとうございます”に終わるのではなく、お客様の顔をしっかり覚えて、人間対人間の接客ができるようスタッフには求めています」。
この回答は、味よりも接客、という意味ではなく、美味しいうどんを提供するのはあたり前のこと、という矜持の表れでもあります。
「今、外食のお店はどこも美味しいじゃないですか。だから、『南哲』に来てくださって“うどんがうまい”“肉汁うどんが美味しい”というのはもう大前提。そこをゼロベースとして、他の部分をどう積み上げていくかを重視しています。2015年11月で開店から丸3年。おかげ様で多くの支持をいただけているのは、 “スタッフの人間力”のおかげじゃないかと思っています」。
また、お客様との接点が多いことが、結果としてメニューにも反映されることは多い、と三七海店長は語ります。
「当店で特徴的なのが、うどんに黒胡椒をかけること。これは、お客様に教えていただきました。うどんに胡椒、は連想しにくいかもしれませんが、実はトウガラシが日本に入ってくる以前から胡椒はあったらしく、大昔は黒胡椒をかけてうどんを食べる習慣があったそうです。それは面白い、と黒胡椒を置き始めたところ、少しずつ黒胡椒ファンが増え、今では当店のオリジナリティのひとつになっています」。
今後はうどんというカテゴリーにとどまらず、外食店での地域ナンバーワンを目指したいという「肉汁うどんの南哲」。それはつまり、南哲で元気になる人がさらに増えることを意味しています。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年12月)のものです