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やっぱり人気。冬に食べたいカレーうどん

1910年頃、この世に誕生したとされるカレーうどん。100年以上の歴史を誇るからこそ、愛され方、食べ方、具材の組み合わせなども多岐に渡ります。老若男女誰からも愛され、寒い季節にこそ人気を博すこの魅惑の食べ物の魅力はどこにあるのか? 今回は、「カレーうどん」が人気メニューとなっている都内4店舗を取材。各店のこだわりをお聞きします。
  • 細打ちうどん 竹や
  • 手打ちうどん でら打ち
  • めんこや 幡ヶ谷本店
  • 慶屋

細打ちうどん 竹や

東京・神田明神のすぐそばに店を構える「細打ちうどん 竹や」。豚肉が入った「カレーうどん」、揚げたての海老天が5尾のった「海老天カレーうどん」の2種類のカレーうどんを看板メニューに、いつも客足が絶えない人気店です。

細打ちうどん 竹や
住所:東京都文京区湯島1-9-15
電話番号:03-5684-0159
営業時間:11:00~15:00/17:00~22:30
(※土曜は21:00ラストオーダー)
定休日:日曜・祝日

牛乳をたっぷり加えた、まろやかなカレーうどん

「当店のカレーうどんは辛さを抑えてまろやかに仕上げています。だから、子どもから年配の方まで、幅広くご支持いただけているのではないでしょうか。先日も80歳のおばあちゃんが完食されていました」。

答えてくれたのは「細打ちうどん 竹や」の店主、大竹勝也さんです。現在58歳の大竹さんの出発点は、渋谷にある釜あげうどんの名店「澤乃井」。この店で修行したあと、30歳のときに独立し、浅草橋で席数30程のうどん専門店を立ち上げます。その後、文京区湯島に移転。座席数が65ある今の店では、昼はうどん専門、夜はさまざまな料理をお酒とともにお楽しみいただき、最後にうどんで締めるといったかたちが定着しています。

「季節限定うどんなどもいろいろと取り揃えていますが、やっぱり2つのカレーうどんがよく出ます。特に『海老天カレーうどん』が一番人気ですね」。

全部飲み干す人も多いというカレースープは、まろやかでありつつ、しっかりコクがあるのも特徴です。

「ベースとなる汁は釜あげうどんにも使っているもの。昆布と削り節と干し椎茸、この3つで出汁をとっています。カレー粉は2種類をブレンド。そこに玉ねぎ、人参、にんにく、ショウガをペースト状にしたものを加え、オリーブオイルで炒めることでコクが出てきます。さらに、牛乳をたっぷり加えることでまろやかに仕上げています」。

お客様に茹でたてのうどんを召し上がっていただく

こだわりのカレーうどんを求め、昼時は行列も珍しくない「細打ちうどん 竹や」。その店名が示す通り、お店の特徴であり、こだわりは、その細い麺にも表れています。

「さぬきうどんと比べたら4分の1くらいの太さ。うどんとしては細い部類に入ると思います。一番大事なことは、お客様に茹でたてのうどんを召し上がっていただくこと。太いうどんだと茹で時間がどうしてもかかってしまいます。茹でたてで美味しいうどんを、できるだけお待たせしないように。そこを突き詰めた結果、今の麺に行き着きました。細くても最後のところでコシは残していますので、ご支持いただけているのだと思います」。

毎日300食は出るという麺は、すべて大竹さんが手打ちしたもの。粉は喉ごしがいいという「麺祭」に、弾力が生まれるというもう一種類の粉をブレンドして製麺しています。

「製麺で心がけているのはしっかりと足踏みすること。粉を練ってから足で踏み、それから製麺機にかけています。足踏みすることで飽きのこない麺になります。機械だけだとコシの強いうどんはできるんですが、なぜか途中で飽きる味になってしまうんです。均一しすぎなのかもしれないですね」。

茹でたての麺を提供すること以外にも、熱いメニューは熱々で、冷たいメニューは冷たく、天ぷらは揚げたてを、というこだわりがあるといいます。

「何事も中途半端はよくありません。天ぷらもすべて、注文いただいてから揚げています。揚げ置きは絶対にしません。その違いは、お客様にしっかりと伝わりますから。これからも、質の高いものを毎日しっかり提供し続けることを大事にしていきたいと思います」。

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手打ちうどん でら打ち

東京都品川区旗の台に店を構える「手打ちうどん でら打ち」は、都内ではまだまだ珍しい「名古屋カレーうどん」が食べられる店として人気です。名古屋出身の店主が作る本場の味わいを求め、昼時は行列も珍しくありません。

手打ちうどん でら打ち
住所:東京都品川区旗の台2-7-3
電話番号:03-3787-0591
営業時間:11:00~14:30/17:30~21:30
(※日曜・祝日は21:00ラストオーダー)
定休日:火曜

鶏ガラベースの名古屋カレーうどん

「あまり知られていないかもしれませんが、名古屋の人ってカレーうどんが大好きなんです。だから初めて上京したとき、カレーうどんの違いに驚きました」。

名古屋出身の神野真行さんが営むうどんの店「でら打ち」は、カレー粉をはじめ味噌、醤油などの調味料の多くを名古屋から取り寄せる「本格名古屋カレーうどん」の店として人気を博しています。店を始めたキッカケは、かつて抱いた「カレーうどんの違い」でした。

「東京のカレーうどんの多くは、やっぱり蕎麦屋さんのカレー。醤油ベースの味なんです。でも、名古屋のカレーうどんは鶏ガラベース。この違いは大きいですね。あと、油揚げが入っていたりと具材の違いもありますが、濃厚なとろみがあるのも名古屋カレーうどんの特徴だと思います」。

いつか東京で名古屋カレーうどんの店を開きたいと考え、名古屋市にあるカレーうどんの名店「若旦那21」で修行したのち、1999年に今の場所で店を構えました。ただ、「名古屋カレーうどん」が浸透するまでは大変な道のりだったことを振り返ります。

「名古屋の人は、カレーうどんを食べるためにうどん屋に行くんです。でも、東京の人はさまざまなメニューの中から『今日はカレーうどんにしようかな』という選び方をします。味や具材どうこう以前に、その『文化の違い』の壁は大きかったですね」。
開店当時、カレーうどんの注文は多くても2割程度だったといいます。

納得のいく麺を求めて、ゴールのない日々

カレーうどんで勝負をしたいのに、そもそも需要が少ない……そんな状況から、いかにして常連客を掴み、人気店になったのでしょうか?

「地道に、愚直にやり続けるしかないですね。メニューに『オススメ』と入れたり、手書きのビラを貼ったり。とにかく一度食べてもらう。それでも注文の割合は4割か5割程度でした」。

そこで始めたのが、名古屋流のぶっかけうどんである「ころうどん」とのセット売り。カレーうどんは単品で800円、ころうどんは単品で600円。その2つをセット(2玉分)で1100円。ハーフセット(1玉分)で900円という価格で提供しています(※価格は現在のもの)。

「カレースープは名古屋の味そのままですが、麺に関しては東京に出て半年ぐらいした頃に大きく変えました。東京で、本当に美味しいうどんに出会ってしまったんです。それからは塩、水、粉の配合、気候や季節ごとの違い、足踏みの仕方や時間、寝かせ方など、自己流で麺の研究を重ねています。以前よりはだいぶ良くなったと思いますが、本当に納得のいく麺ができるのは年に数回あるかないかですね」。

地道な努力が結び、今では約8割がカレーうどんを注文するまでに浸透。それでも「本当はカレーうどん一本で勝負したいんですよ」と神野さんは語ります。

「麺もずっと理想を追い求めている状況ですし、カレーうどん1本勝負も究極の理想。ゴールのない食べ物に手を出してしまったんだなぁって、最近はつくづく思いますね(笑)」。

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めんこや 幡ヶ谷本店

各メディアの「うどんランキング」で上位に名を連ねることも多い「めんこや」。さまざまな創作うどんがメニューに並ぶなか、安定した人気を誇るのがカレーうどんです。ランチはもちろん、飲んだあとの締めの一杯としても支持を集めています。

めんこや 幡ヶ谷本店
住所:東京都渋谷区幡ヶ谷1-2-7
電話番号:03-3320-4455
営業時間:11:30~14:00/18:00~26:00
定休日:日曜

親子三代で楽しめる、こだわりの手打ちうどん

東京都渋谷区幡ヶ谷に店を構える「めんこや」。その代表である小林正治さんは「元競輪選手」、そしてスタッフの多くが元アスリートという異色の経歴です。

「競輪選手として全国を転戦し、各地の美味しいものをいただく機会がありました。その中で、子どもから年配の方まで、親子三代で楽しめるものは何だろう? と考えたときに、『うどんだ!』と思ったんです。それで、セカンドキャリアとしてうどん店を始めることにしました」。

めんこやのうどんは、東京多摩地域と埼玉県西部で親しまれている「武蔵野うどん」の流れをくむ、コシが強く食べ応えのある麺が特徴です。

「所沢市に西武園競輪場がありまして、その近くでよく食べたのが武蔵野うどんでした。その影響は多分にありますが、ほかにも全国でいろんなうどんを食べてきましたので、それぞれのいい部分を活かせるように工夫を重ねた、自己流創作麺といった方がいいかもしれません」。

金すずらん」をメインに使いつつ、いくつかの粉をブレンドして作るうどんは、コシが強いだけでなく、ムチムチ感があるのが特徴です。

「打ちたて、茹でたてが当店のこだわりです。スタッフ全員が元アスリートだけあって腕っぷしはいいんです。でも、力があれば美味しいうどんが打てるかといえばそんな単純じゃありません。本当に難しい世界だと思います」。

料理だけじゃなく、スタッフ力でも感動してもらう


さまざまな創作うどんがメニューに名を連ねるなか、高い人気を維持しているのが「カレーうどん」です。「つけカレーうどん」と、ゆで卵と鶏の挽肉がたっぷり入った「親子カレーうどん」が選べます。

「うどんのコシは好みに応じて、つけうどんは『冷盛』『熱盛』『釜揚げ』を選べるようにしています。そのほか、ご要望があれば茹で時間も変えますし、注文された方の年齢を見ながら微妙に長めに茹でたりすることも。チェーン店ではないからこそ、心配りのある商品提供を心がけています」。

うどんの味わいはもちろん、それぞれのメニューで意識しているのは「バランス」だと小林さんは語ります。

「お店を始めた当初は、コストがかかってもいい材料を揃えれば美味しいものができるだろう、と思っていました。でも、個々ではいい素材であっても、全体ではぼやけた味になってしまうこともあります。素材にこだわるのは前提として、いかに全体で味のバランスを作り出せるか。そして、それを毎日ブレずに安定して提供できるか、という部分に気を配っています」。

そして、元アスリートならではのこだわりが「いかに感動を生み出すか」という視点です。

「自分のパフォーマンス次第でお客様からの反応が違う、というのはスポーツも店舗経営も一緒です。だからこそ、ファンサービスじゃないですが『エンターテイメント性』も重視したい。スタッフによく言っているのは『自分自身が商品である』ということです。料理だけじゃなく、スタッフ力でも感動してもらう。感動の連鎖=幸せの連鎖。うちの店がもっとも得意にしなきゃいけない部分だと思います」。

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慶屋

手頃な価格で本格的な手打ちうどんが食べられると、有楽町界隈のサラリーマンからいつも変わらぬ支持を集めているのが「慶屋」です。店主・菊池勇夫さんが毎日14時間近くひとりで切り盛りする店は、いつもたくさんの客で賑わいを見せています。

慶屋
住所:東京都千代田区有楽町2-4-11
電話番号:03-5222-8262
営業時間:11:00頃~23:30頃
定休日:なし(年末年始、ゴールデンウィークに休む場合も)

毎日、毎年、いつも変わらない味

「風邪引いたでしょ。ダメだよ、あったかくしなくちゃ」
「今日はもうあがり? いいねぇ。奥さんにもよろしく!」

常連客との快活なやり取りが心地いい空間。それが東京・有楽町の線路高架下に店を構える「慶屋」です。昼は銀座や有楽町界隈の忙しいビジネスマンのお腹を満し、夜はお酒のあとの「締めの一杯」として利用されるなど、客足は途切れません。店主の菊池勇夫さんは朝10時頃に開店準備を始め、夜23時30分頃の閉店まで、毎日たったひとりで店を切り盛りしています。

「もともとは、この近くのビルで天丼やカツ丼などの丼ものなどを中心に提供する店を営んでいました。2003年頃、この高架下でも店を構えたんですが、50歳も過ぎて体力的に厳しくなってきたため、今のお店だけに絞って営業しています」。

かつて丼ものが並んだメニューも今はうどんと蕎麦だけ。そのなかにあって、来店客の9割がカレーうどんを注文するといいます。

「ひとりでやっていますし、厨房が小さくてコンロが2つしかないので、ある程度絞り込まないと切り盛りができません。それがたまたま、カレーうどんだっただけのことです。味についても12年間、特に変えている部分はありません」。
遠慮がちに語る菊池さんですが、12年間、体調不良での休業はゼロ。毎日、毎年、いつも変わらない味がそこで味わえるからこそ、有名店が軒を連ねるこの場所で人気を維持できているのではないでしょうか。

注文を受けてから茹で始める手打ちうどんへのこだわり

店内を見渡すと、「当店は手打うどん・そば店です。立喰店ではありません。時間のない方は、ご遠慮願います」という札が目に留まります。

「何だか偉そうですみません。こんな店構えですから、立ち食いのお店と勘違いして入ってくるお客様が多いんですよ。それなのにお待たせしたら申し訳ないじゃないですか。うちの麺は細麺ですけど、それでも5分は茹で時間がかかりますから」。

それでも手打ちの麺にこだわり、注文を受けてから茹でることにこだわるのは、「温かくて美味しいうどんをできるだけ低価格で味わって欲しい」という思いからです。

「夏は『冷やしカレーうどん』なんかもメニューに加えますが、それでもほとんどのお客様は温かいカレーうどんを頼まれます。やっぱり、カレーは熱くて辛くないとね。うちの麺は細くて柔らかいから、カレーともよく絡んで食べていただけると思います」。

最後に、これからの目標は? とたずねると笑顔を浮かべながらこんな答えを返してくれました。
「ずっとこの辺で営業していたからバブルの頃の羽振りの良かった時代も知っています。そして、2000年頃は不況でどこも大変でした。栄枯盛衰の飲食業界、どんな時代にも通じる秘訣は、地道にコツコツやること。これからも毎日ここで、変わらずうどんを茹でるだけです」。

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今回の取材で、どのお店からも共通して出てきた言葉が「地道にがんばるだけ」「地道に続けてきました」「毎日、同じことをいかに繰り返せるか」といった、続けていくことの難しさと大切さでした。カレーうどんは誰からも広く愛される反面、他店との差別化が難しいメニューでもあります。そのなかにあって、「カレーうどんの名店」として愛されるには、まさに地道な努力が必要不可欠なようです。「継続は力なり」の重要性を改めて実感することができました。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2016年1月)のものです

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