


- 平岩
- 商品の構成や展開について、これから、どんな方向でやっていきたいと思われますか?
- 菅又
- 今、生菓子6:焼き菓子4くらいの売り上げ比率なんです。今後、新しく出した缶入りクッキーなどのように、詰め合わせギフトも少しずつ増やしていきたいと思っています。友人の菓子職人のお嬢さんで中学生ながらアーティストとして活躍している「あーちん」にイラストを描いてもらったボックスがあって、それに詰め合わせたギフトも人気です。
- 平岩
- 「あーちん」イラストのギフトボックスは、本当に素敵!私も大ファンです。
- 菅又
- 以前からやりたかった「ブランデーケーキ」も、今年発売できました。「洋菓子」というよりも、「菅又の菓子」にできたらなと。ショーケースの上に並べる焼きっぱなしのタルトや、ヴィエノワズリーも、オープンから1-2年は焦って手をつけないでおこうと決めていましたが、今後はやっていきたいです。
- 平岩
- 「ブランデーケーキ」に新たに取り組むフランス菓子店、最近、増えていますよね。「Ryoura」では冷蔵ギフトとして販売していますね。フランス菓子のケーク生地ともまた違いますから、配合なども色々と研究されたのではないでしょうか?
- 菅又
- 自分はもともと、「お菓子屋さんのメインはバターの香りだ」と思っていて、バターやバニラの香りをしっかり立たせたいのですが、最近、粉の勉強をし始めて、生地が劇的に変わったんですよ。メーカーさんのアドバイスをもらいながら、色々試して、ベストな物を選んでいます。
- 平岩
- 日清製粉さんの「エンジェライト」も、使ってみたそうですね。
- 菅又
- 「エンジェライト」を、マドレーヌやケークシトロン、それから「プティ・シトロン」という新作の焼き菓子にも使っています。この粉は、水分を含んでもダマになりにくく、グルテンも出にくいので、生地の歯切れが良くなりました。
- 平岩
- 「Ryoura」流の「レモンケーキ」とも言えそうな「プティ・シトロン」は、最近の菅又シェフらしい、軽やかな生地感ですね。バターが少なめで生クリームが多い配合と伺っていましたが、粉を変えたことも大きかったのですね。
- 菅又
- フランス産小麦100%使用の薄力粉「エクリチュール」も、フィナンシェに使い始めました。プレーンのものは、これまで使っていた小麦粉との半々で、メープル味の「フィナンシェ・エラブル」は100%置き換えましたが、生地の締まり方が変わりましたね。型離れがよくなったのと、焼き色がよりよくなったと思いました。

- 平岩
- これからのお菓子業界が、こうあってほしいと思うことや、ご自身がやっていきたいと思うことはありますか?
- 菅又
- まず、自分がやりたいこととして、5年や10年先には、近くでもう1店舗、パン屋をやりたいんですよね。ヴィエノワズリーだけでなく、ハード系も含めて。パティシエが監修するパン屋さんって、面白くないですか?
- 平岩
- いいですね!菅又シェフがどんなパンを提案されるのか、気になります。
- 菅又
- それから、パティスリー業界全体で、やっぱり給料が増えていってほしいと思います。社会保険にもしっかり入れるようになって。自分は、スタッフの皆が個人事業主になるというのが理想形なんです。もちろん独立してからも、つかず離れず、お互いに卸売りをするなど、いい関係を続けていけたらと思います。 そのために何をしていけばいいのか、まだまだ方法が見えていないんですが。効率的に売り上げを上げていくために、利幅の大きいお菓子教室を店で開催していく、といったこともありかもしれませんね。
- 平岩
- スタッフの方も個人事業主であってほしいとは、これまで、あまりイメージしたことのない考え方ですが、これからの時代、そういう働き方も出てくるかもしれませんし、そこから新しい可能性が生まれるかもしれませんね。 お店も3年目に入られ、オープニングからさらに、少しずつ着実に先に進んでいらっしゃることが伝わってきました。これからも「Ryoura」の進化を楽しみにしています。今日はどうもありがとうございました。


菅又亮輔シェフ プロフィール
新潟県・佐渡島生まれ。26歳で渡仏し、ノルマンディ、ローヌアルプ、アルザス、パリと各地で3年に渡り修業。帰国後、「ピエール・エルメ・パリ・サロン・ド・テ」でスーシェフを務め、エルメ氏の技術や芸術性、創造性、感性などを学ぶ。2007年12月「ドゥーパティスリーカフェ」(現在は閉店)オープニングからシェフに就任。看板商品のマカロンやケークをはじめ、本格的なフランス菓子が多くのファンから支持される。2015年10月、自店「Ryoura(リョウラ)」をオープン。


Ryoura
東京都世田谷区用賀4-29-5
グリーンヒルズ用賀ST 1階
TEL:03-6447-9406
営業時間:11:00~19:00
定休日:火曜、水曜不定休(祝日の場合、変更あり)
田園都市線用賀駅から、商店街を抜けて徒歩5分程で現れる、明るいブルーの外観が印象的なお店です。ファンの多いマカロンは、クリームだけでなく凝ったガルニチュールが入るなど個性的。エクレールやサヴァランといった王道のフランス菓子も、素材の組み合わせや見せ方でオリジナリティーを発揮。季節ごとの果物のタルトや新作ガトーも続々と登場し、飽きさせません。ロールケーキやプリン、ミルフィーユ、テリーヌショコラなど、一見飾り気のないシンプルな品にも、試行錯誤を重ねた理論が反映されています。
平岩
取材後に、小麦粉を変えられたという焼き菓子をいただいてみました。フィナンシェ類は、わずかな差ながら、以前よりも生地に弾力が出たように思われ、食欲をそそる美しい焼き色も印象的。マドレーヌは、よりしっとりと口どけよくいただけました。ベーシックな商品も基本素材を見直し、ブラッシュアップを続ける菅又シェフの気概が感じられます。
そしてまた、10月に開催された「ジャパンケーキショー2017」で、グランガトー部門の金賞に「Ryoura」スタッフの方が入賞されているのを拝見し、私も嬉しくなりました。スタッフを育てたいという菅又シェフの思いや、そのための実践が、少しずつ具体的な形になって表れているように思われます。これからも目が離せませんね!
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年9月)のものです。
最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。

菅又シェフ
平岩さんには、前の店のシェフ時代から何度か取材を受けていますが、お菓子の取材ではなく、こういうふうに、店の経営とかスタッフとの接し方とかについてしっかり話せたのは、初めてだったかもしれませんね。なんかちょっと照れますが嬉しいです。自分もこの10年で、子どもが生まれて家族が増えたりと環境も変わってきた中で、働き方とか生き方について、考え方が変化してきたと思います。様々な人と関わって一緒に何かをしたり、国内だけでなく海外でのお仕事などもいただいたりする中で、たくさん刺激も受けますし、オーナーとして成長していけているのかな?いきたいですね。やりたいこともまだまだありますし、これからも頑張らなくっちゃ!平岩さん、お互い頑張りましょうね~。