


- 平岩
- サントスシェフは、フランスでもパティシエとして働いていらして、来日された訳ですが、フランスと日本の素材の違いを感じられることはありましたか?
- サントス
- 生クリームは、大きく違いを感じました。フランスの方が個性が強い。日本は、なめらかで実に種類が多くて、凄いですね。チョコレートについては、個性が強い方が面白いのですが・・。
- 平岩
- よく、フランスでは基本的に発酵バターを使っていると、特に焼き菓子に発酵バターを使う方もいらっしゃいますね。
- サントス
- 発酵バターの焼き菓子は、焼き立ては美味しいんだけれど、酸化しやすくて、そうなるととても美味しくなくなるので、私は使っていません。材料は、全ていい物を使えば美味しくなる訳ではなく、出したい味を出す時に使うのがいいと思います。
- 平岩
- もともと、チョコレートのメーカーにいらしたサントスシェフですが、最近のチョコレートについてはどう思われますか?
- サントス
- 新しいものが沢山出ていますね。色々と試してみますよ。
- 平岩
- 粉についてはいかがですか?
- サントス
- 最近、北海道産の小麦粉なども使っています。ふわっとしっとり焼けて、一日の終わりに食べても美味しいかどうか、ということを見ていますね。味や香りだけではなく、食感は、さらに大切です。
- 平岩
- 仰るとおり、サントスシェフのつくられるものは、食感に特徴や変化があって、それが楽しさを増してくれるんですよね。
この頃は、フルーツの産地を見に行かれたりもしていますね。私も、ご一緒させていただいたこともありました。 - 愛
- うちはもともと、産直のフルーツを使う、というのはあまり得意ではなかったのですが、最近は、農家さんを見学にいって、産地から直接取るということを始めています。
- サントス
- 夏にはフレッシュのブルーベリーが届くので、ピューレにして、来年の5月頃から、生の果実が無い時期にもアイスに使えるようにしたいです。
- 愛
- 山梨県産の桃も使いますよ。朝、フルーツを切ったりして仕上げる手間がかかりますが、その分、下の土台をシンプルにしてフルーツを活かすタルトのようなお菓子にしたりしています。そんなふうに、季節感を出せるようにしていきたいです。

- 平岩
- 進化を続けていらした「クリオロ」さんですが、これから、さらにやっていきたいことはありますか?
- サントス
- 外から色々とよさそうな話の声掛けがあっても、流されないというのが大切かなと思っています。これからは、「お客様のために」ということを、もっとやっていきたいですね。
- 愛
- 昔はがむしゃらに働きすぎて長時間労働で問題になっていましたが、最近は早く終わる為にお客様のことよりも自分達が早く終わるよう閉店ギリギリに入店されたお客様のことを考えず片付けをしてしまうことがあったり。効率よくすることは大切ですが、そのあたりはバランスが難しいです。
- 平岩
- 5年、10年先のイメージはいかがですか?
- サントス
- 店を増やすというよりも、スタッフの生活をよくする、ということを実現したい。
- 愛
- ネットでの販売も、より伸ばしたいですね。配送のやり方も、大きく変えていく必要があるかと思っています。ストック場所がなくて、実は、仙台に倉庫を借りたりしているのですが・・。外商部門も伸ばしていきたいです。
- サントス
- 商品も、もっと色々とつくっていきたいです。生ケーキやアイスもそうですが、お客様は、うちがチョコレート商品が得意ということもわかっていてくれて、人気が高いので、そういった品も増やしていきたい。
- 平岩
- 商品開発は、サントスシェフがお1人で全てなさるのですか?
- サントス
- スーシェフに、ある程度任せているところもあります。私が考えたものを試作してもらったりもします。
- 愛
- 商品開発力を上げる、という意味でも以前やっていたのですが、夏に、社内でケーキコンテストをやってもいいかもね、なんて話しているんですよ。
- 平岩
- 2016年のジャパンケーキショー「トップ・オブ・パティシエ」部門で、スーシェフでいらっしゃる眞砂翔平さんが優勝されましたが、その時のケーキ「Jack ジャック」も商品化されて、ショーケースに並びましたね。最近、「クリオロ」のスタッフの方がコンクールでも活躍されているのが目立ちます。
- サントス
- うちは、コンクールに出たい、という子が入社してきますね。でも1年くらいは、日常の製造に集中してもらう。それで頑張っていたら、お店のディスプレイを想定して作品をつくってもらう。よいものが出来たら飾ります。
- 平岩
- 店内に、飴細工やチョコレート細工のディスプレイが、スタッフの方のお名前入りで飾ってありますね。日々の仕事をきちんとしながら、コンクールにも挑戦して結果を出す、という流れが出来たら理想的ですね。
これからの製菓業界に対して思うこと、伝えたいことはありますか? - サントス
- この業界全体が、昔から、仕事が長すぎるという問題があって、シェフ達が、自分のやりたいこと、難しいことをやって自己満足してしまう。スタッフのことを考えないと、この仕事をやりたいという人がいなくなって、さらに人手不足になってしまいます。給料もすごく安かったりしたら、入りたいという人もいないですよね。入社したくなるような店にしたいと思います。
- 平岩
- いつも新しいアイディアをお持ちのサントスシェフと、一緒にお店を支える愛さん。お二人の名コンビと、多くのスタッフの方々との連携で、「クリオロ」は、これからもますます素敵なお店になっていかれることでしょうね!今日はどうもありがとうございました。




サントス・アントワーヌシェフ プロフィール
1969年、南仏マルセイユ生まれ。フランスのMOF店などでシェフを務め、1993年に来日。「ヴァローナ・ジャポン」での技術指導を担当。様々な技術提供やコンサルティングを経て、2000年、菓子学校「エコール・クリオロ」を設立。2003年には千川にパティスリーもオープンし、その後、中目黒や神戸にも支店を出す。2016年5月、ブランドを「クリオロ」として、本店を小竹向原に移転リニューアルオープン。「世界パティスリー2009」ではフランスチームとして準優勝、最優秀味覚賞を受賞。


クリオロ 小竹向原本店
東京都板橋区向原3-9-2
TEL:03-3958-7058
営業時間:10:00~20:00
定休日:火曜(祝日の場合営業)
東京メトロ有楽町線の小竹向原駅から徒歩5分程。住宅街の中に現れる「クリオロ」は、ラボと一体化したことで、これまで以上に、出来立てのお菓子やパンを提供することにこだわった店舗です。クロワッサンなどのヴィエノワズリー類やショコラ商品、焼き菓子も種類豊富に揃います。箱入りチーズケーキなどの冷凍販売品も、手土産用に人気です。店内は、ブラウンの木目調の内装で、ゆったりとできる落ち着いた雰囲気。テラス席もあるカフェでは、カレーやパニーニなどランチもいただくことができ、近隣の方々の憩いの場となっています。
平岩
私も昔、サントスシェフのお菓子学校の単発クラスに参加したことがありました。辛口のジンジャーエールを使ったジュレを習い、当時はまだ今ほどメジャーではなかった、アガーを使ってぷるぷるの食感になるものでした。「時代に合ったおいしいもので幸せに」というお店のコンセプトのとおり、新しい素材もいち早く研究して採り入れ、時代のニーズを踏まえながら、オリジナルの提案をされていらっしゃるなと思います。立派な厨房設備はもちろん、スタッフの方が働きやすいよう様々な配慮をされたオフィススペースもあわせて、見学される同業者の方も、皆さん感心されますね。サントスシェフも愛さんも本当に勉強家でいらして、専門家のアドバイスやサポート制度も上手に活用しながら、働きやすい環境を整えていらっしゃるのだなと、大いに納得しました。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年5月)のものです。
最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。

サントスシェフ
24歳で日本に来た当時、30歳になる頃にはお菓子学校の先生をやりたいとは思っていましたが、お店をやるつもりはありませんでした。教室の新作を考えるために試作するので、勿体ないからご近所の方に販売しよう、ということになって。ヴァローナの頃は、試作品が残っても問題ありませんでしたが、自分でやるとなると、無駄にできませんからね。でも1日20万円分も売れてしまったりしたこともあって、結局、お店もやることになりました。お菓子学校は2013年3月に閉校しましたが、今はその分、スタッフにしっかりと技術を伝えたいですし、お店の経営に集中してやっています。12年間、学校で教えていたものだけでも、商品化していないストックが沢山ありますから、まだまだ、色々とつくっていきたいです!